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共催マーケティングとは?パートナーマーケティングにおける協業施策の概要と成功ノウハウ

パートナーマーケティングとは、自社以外の販売代理店や個人(パートナー)が自走する仕組みを作りながら、自社の商品・サービスの販促や顧客獲得を行うマーケティング手法です。
自社単独ではリーチできない新規顧客層にアクセスしたり、自社リソースでは賄いきれない集客・認知拡大を図る上で、パートナーの持つ顧客基盤やノウハウを活用できる点が大きな魅力です。

その中で共催マーケティング(共同マーケティングとも呼ばれる)は、パートナーマーケティングの具体的な施策の一つです。共催マーケティングとは、複数の企業が協力してマーケティング施策を共同で企画・実行する手法を指します。具体的には、セミナーやイベントを共同開催したり、共同でコンテンツを制作したり、互いの顧客リストに対して合同のプロモーションを行ったりする取り組みです。単独では難しい大規模施策も、パートナーとタッグを組むことで費用や労力をシェアし、より大きな成果を目指せる点で注目されています。

共催マーケティングの定義と背景

共催マーケティングの定義: 共催マーケティングとは、2社以上の企業が共同でマーケティング活動を行い、互いの強みやリソースを掛け合わせてリード(見込み顧客)の獲得や育成、商談創出につなげる施策全般を指します。英語では「Co-Marketing(コーマーケティング)」とも呼ばれ、各社が協力してセミナーを共催したり、合同で展示会に出展したり、共同で資料を作成するなどの形態があります。要するに**「お互いの持ち味を持ち寄って一緒にマーケティングを行う」**ことが共催マーケティングです。単なる紹介や販売委託と異なり、企画段階から実行までパートナーと共同で行う点に特徴があります。

背景: 昨今、多くの業界で競合が増え、従来の自社単独のマーケティングだけでは新規リード獲得にも限界が見えてきました。特にBtoBビジネスでは、潜在顧客にリーチするためのアイデアや予算、人員が不足しがちです。その解決策として注目されているのが共催マーケティングです。例えば、スタートアップや新興企業は知名度や予算が限られる中、大手企業や補完関係にある企業との共催により効率的に市場開拓を行っています。共催マーケティングを活用すれば、一社では呼べなかった規模の見込み顧客を集客できたり、各社の専門知見を組み合わせることで魅力的なコンテンツ提供が可能になります。また、各社でコストを折半できるため、展示会出展など高額な施策でも負担を軽減できるのも背景にあるメリットです。

パートナーマーケティングとの違い

共催マーケティングは近年のトレンドであるため、共催マーケティングとパートナーマーケティングを混同して使っている方も多いです。ですが、共催マーケティングとパートナーマーケティングとは明確に異なります。

パートナーマーケティングとは、販売代理店や紹介者が自走できる仕組みを整え、自社単独では届かない新規顧客を獲得していく戦略的フレームワークです。パートナー育成や報酬設計までを含む長期的なエコシステムを構築する点が特徴になります。
一方、共催マーケティングはその具体施策の一つで、複数企業がウェビナーやホワイトペーパーなどを共同企画し、短期間でリードを共有する一施策を指します。
KPIも異なり、前者は商談創出数や売上貢献など長期ROIを重視し、後者は参加登録数や資料ダウンロード数といった短期指標を追います。両者を適切に使い分けることで、認知拡大と売上成長を同時に実現できます。

また、パートナーマーケティングの全体像については以下の記事で解説しています。

共催マーケティングに限らないパートナーマーケティングの全体像を確認し、パートナービジネスの成果拡大に役立ててください。

共催マーケティングの代表的なパターン・形式

共催マーケティングにはいくつかの典型的なパターンが存在します。自社のサービス特性やターゲット顧客に合わせ、パートナー企業と相談して最適な形式を選ぶことが重要です。代表的な施策を以下に紹介します。

  • 共催セミナー / 共催ウェビナー: 最も一般的な形式です。複数社で同じテーマのセミナーやウェビナー(オンラインセミナー)を共同開催します。各社が自社の見込み顧客に集客を呼びかけるため、単独開催より多くの参加登録を獲得できます。例えば「〇〇業界の最新トレンドセミナー」を2〜3社で共催すれば、参加者は各社から多角的な知見を得られ、イベント全体の価値が高まります。参加者リストは共通の財産となるため、各社がセミナー後に新たなリードへフォローアップできる点も魅力です。
  • 共同イベント・展示会への合同出展: 大規模な業界イベントや展示会に、パートナー企業と共同ブースを出展する形式です。一社単独では高額になりがちな出展費用や準備負担も、複数社でシェアすることでコスト削減できます。また、ブースに立つスタッフやプレゼンテーションも役割分担でき、各社の製品・サービスをまとめて訴求することで来場者の関心を引きやすくなります。展示会の場合、会場で獲得した名刺リストは後日各社に分配し、それぞれフォロー営業を行います。対面で直接アプローチできる貴重な機会を共有できる点で、合同出展は効果的です。
  • 共同コンテンツの制作(ホワイトペーパー、eBook、動画など): マーケティング用のコンテンツをパートナーと協働で作成する方法です。例えば、双方の専門知識を活かした共同調査レポートや、対談形式のホワイトペーパー、あるいは合同で製品紹介動画を作成して配信するケースがあります。共同コンテンツを作ることでお互いのブランド露出を拡大でき、双方の見込み客リストにコンテンツ提供・資料請求を促すことでリードを交換・創出できます。特に補完関係にあるサービス同士であれば、「〇〇と△△で実現するソリューションガイド」等と題した資料を共同作成すると両社に関連性の高いリード獲得が期待できます。
  • パートナーリストへの共同プロモーション(メールマーケティング等): パートナー企業が保有する顧客リストやメールマガジン会員に対し、共同で企画した情報発信を行う方法です。例えば、パートナー企業のメールマガジン枠で自社サービス紹介の特集を組んでもらったり、両社連名でセミナー案内メールを配信するといった施策です。これにより、自社ではアプローチできなかったパートナーのハウスリストにリーチでき、効率よく関心層を掘り起こすことが可能です。準備コストも低く比較的手軽に始められる反面、パートナーの大切な顧客基盤を活用させてもらう立場になるため、双方にメリットがある内容設計とすることが重要です。

以上のように、一口に共催マーケティングと言ってもセミナーからコンテンツ制作まで様々な形式があります。自社サービスの特性や目標(新規リード獲得か、既存見込み客の育成か等)に応じて、最適な手法を選びましょう。例えば新規リードの大量獲得が目的なら展示会や大型イベント共催を、特定のリードを商談化させる育成目的なら少人数制の共同セミナーを選ぶ、といった判断軸があります。

共催マーケティングの成功事例(国内企業)

実際に共催マーケティングを活用して成果を上げている国内企業の事例を見てみましょう。事例からは、パートナー選びとテーマ設計の巧みさが成功のポイントであることがわかります。

  • 事例①: 会計ソフト企業「freee」 × IPOコンサル企業「Uniforce」 – クラウド会計ソフトを提供する株式会社freeeと、IPO準備支援を行うUniforce社が協業し、「IPO準備企業向け資金調達セミナー」を共催ウェビナーで開催した例があります。両社は顧客ターゲットが共通(上場準備中のベンチャー企業)であり、かつサービス領域が補完的(会計・財務管理とIPOコンサル)で競合しないため、非常に相性の良い組み合わせでした。ウェビナーには双方の顧客基盤から多くの経営者・財務担当者が集まり、freee社にとっては自社単独では接点を持てなかった企業への認知獲得につながりました。一方のUniforce社も、自社サービスの付加価値としてfreeeの最新情報を提供でき、双方が新規リードと商談機会を獲得する結果となりました。この事例は、ターゲットや課題感を共有するパートナー同士で共催することで、参加者にとっても価値の高い内容となり高集客に成功した好例です。
  • 事例②: マーケティングツール企業「SATORI」 – マーケティングオートメーションツールを提供する国産ベンダーのSATORI株式会社は、年間を通じて30回以上の共同マーケティング施策を実践している企業です。SATORIは自社が中小企業ということもあり、「自社だけでマーケ活動を続けるにはアイデア・予算・人員に限界がある」との認識から積極的にパートナーとの協業を進めています。例えば、他社と共同でセミナーを開催したり、大型展示会に複数社で共同出展するといった取り組みで、マーケティング成果の最大化を図っています。ある展示会では3日間で 9,000件以上の名刺(リード) を獲得するなど、共催によって大規模なリード獲得に成功した実績もあります。SATORIの事例から学べるのは、継続的かつ計画的に共催施策を組み込むことで自社マーケティングの裾野を広げ、費用対効果を高めている点です。共催経験が豊富な企業同士であればノウハウを共有し合い、毎回のイベントの質を高めながらリード獲得効率を飛躍的に向上させることができます。
  • 事例③: 大手IT企業とソリューションパートナー企業の協業 – 大手クラウドプラットフォーム企業と、そのサービス導入を支援するコンサルティングパートナーが共同でセミナーを開催するケースも増えています。例えば、国内大手のITベンダーが自社パートナー各社(コンサル会社やSIer)と連携し、「業種別○○ソリューションセミナー」を共催するといった取り組みがあります。大手ブランドの集客力と、パートナー企業の持つ専門知識や導入事例を組み合わせることで集客数・内容充実度ともに向上し、結果的にセミナー参加者から多くの商談が生まれた例もあります。ポイントは、大手企業側がパートナーに対し**共催のメリット(見込み客への提案機会や販売機会)**を明確に示し、Win-Winの関係で企画している点です。このように企業規模を問わず、お互いの強みを活かした共催によって成果を出している事例が国内でも増えてきています。

以上の事例から、共催マーケティング成功の鍵は「適切なパートナー選定」と「互いに補完し合うテーマ設定」であることがわかります。共催相手の顧客層や提供価値が自社とマッチしていれば、1+1を3にも4にもできる効果が期待できるのです。

共催マーケティング実行のステップと成功のコツ

実務で共催マーケティングを進めるにあたり、どのように企画し実行すればよいのでしょうか。ここでは実行の基本ステップと、各段階での成功のコツを解説します。初めて取り組む場合でも、この手順に沿って準備すればスムーズに進められるでしょう。

1. パートナー候補の選定と関係構築
まずは共催するパートナー候補の企業を探し、関係性を築くことから始めます。既に自社と取引があり相性が良いと感じるパートナーや、過去に案件紹介の実績がある企業がいれば最有力候補です。そうした企業とは日頃から情報交換や人的交流を図り、ある程度の信頼関係を構築しておきましょう。もし適切な候補が見当たらない場合でも、「理想的な共同マーケティングパートナーになり得る企業像」を描き、それに合致する企業に積極的にアプローチしてみることも一つの方法です。候補が見つかったら、まずは非公式な打ち合わせやアイデア交換から始め、互いのマーケティング課題や目標について理解を深めます。

2. 目的・KPIの合意と施策プランの策定
次に、共催マーケティングの目的を明確化し、成功指標(KPI)について合意します。同じ「マーケティング施策」と言っても、例えば新規リード獲得(集客)が主目的なのか、既存リードの育成(商談創出)なのかによって設計が大きく変わります。まず各社で「今回の共催施策で何を達成したいか」を擦り合わせましょう。目的が新規集客であれば「○件の新規リード獲得」がKPIとなり、展示会や大規模イベントへの共同出展が有力な手段となります。一方、既存見込み客の育成が目的なら「○件の商談創出」をKPIに据え、共同セミナーでどれだけ商談につながったかを重視する、といった具合です。KPI設定にあたっては、単なるイベント満足度や登壇回数といった指標ではなく、**具体的なビジネス成果(リード数・商談数・受注数など)を置くことが重要です。また、目標値は双方がコミットできる現実的なものに設定し、認識を共有します。この段階で施策の全体像(セミナー開催かコンテンツ配布か等)**も確定させ、企画書やプランニングシートにまとめて双方で合意しておきましょう。

3. 施策内容の選択と役割分担
目的が固まったら、共催する施策の具体的内容を決定します。前述のようにセミナー、展示会、メール配信、コンテンツ制作など候補は様々ありますが、目的・ターゲットに最も合致する手法を選びます。例えば「自社もパートナーも〇〇業界の経営者層を顧客に持っている。新規開拓が目的なので、大型カンファレンスで共同イベントを開催しよう」「両社サービスに興味を持ちそうな既存リードを育成したいので、ウェビナーを共催しよう」といった判断です。施策を決めたら各社の役割分担も明確化します。共催マーケティングでは「人もコストもリードも折半」が基本の発想ですが、実際には誰かが全体進行をリードする必要があります。プロジェクトマネジメント経験が豊富、あるいは共催企画に慣れている企業が率先し、タスク管理やスケジュール調整など取りまとめ役を担うとスムーズです。具体的には、以下のような分担項目を話し合い決めておきます。

  • 企画リード・全体進行役: どちらか一社がプロジェクト全体を管理(初回は経験豊富な側が担当し、次回以降は交替制にするなど工夫します)。
  • コンテンツ準備: 講演資料や配布物の作成担当(自社サービス紹介は自社で用意しつつ、全体テーマの整合性チェックはリード企業が行う)。
  • 集客(プロモーション)担当: 招待メール送付や告知ページ作成、SNS発信など各社の集客タスクを分担。自社リードへの案内は各社が実施しつつ、申し込みフォームは共通化するなど調整。
  • 当日運営: 司会進行役や受付対応、人員配置。これも各社から適宜スタッフを出し合い、役割を決めます。会場手配やオンライン配信環境の準備はどちらが行うか決めておきます。
  • 費用負担: 広告費や会場費、ツール利用料など発生する費用項目をリストアップし、費用分担ルールを合意(基本折半、あるいはリード企業が一時立替後に精算 等)。
  • リード情報の管理: 獲得した参加者リストや名刺情報の扱いを決めます。例えば「イベント終了後、主催企業が一括管理しデータクレンジングした上で、双方に共有」など明文化しておきます。この際、個人情報の取り扱いについては次項注意点で述べるように、事前に参加者へ通知・同意を取る措置も必要です。

こうした役割分担を明確にしておくことで、「誰が何をするか」の曖昧さを防ぎ、抜け漏れのない準備ができます。特に初めて共催する企業同士の場合は、タスク洗い出しから細かく詰めておくと良いでしょう。

4. プロモーションと集客:パートナー双方の強みを活かす
施策内容が決まったら、本番日に向けて集客プロモーションを行います。共催マーケティングの強みは、各社が自社の持つチャネルを活用できる点です。例えばメールマーケティングが得意な企業は自社のメール会員に告知し、SNSフォロワーが多い企業はSNS拡散を担当するといったように、それぞれの強みで集客に貢献します。お互いの集客状況は逐次共有し合い、「○月○日に双方でリマインドメールを送る」「定員を超えそうなので増席を検討する」といった調整も行います。また、パートナーへの提案時には「メールの平均開封率が○%、クリック率が○%程度なので、貴社リードから▲件の集客が見込めます」など、具体的な見込み数字を示して協力を仰ぐと良いでしょう。これはパートナー側に共催のメリットを実感してもらう工夫でもあります。集客段階では、申し込みフォーム上で「共催企業各社から今後情報提供があること」に対する同意チェックを設けるなど、取得リードを双方で活用できる形にしておくこともポイントです。

5. 実施当日の運営と顧客データ共有
準備を万全に整え、いよいよ施策本番の日を迎えます。当日は事前に決めた役割分担に沿って運営しつつ、想定外の事態にも共同で柔軟に対処します。セミナー共催であれば、司会進行役が冒頭で「本日は○○社と△△社の共催セミナーです」と説明し、各社の存在をしっかりアピールしましょう。イベント中はお互いのサービス紹介ばかりにならないようバランスに注意し、中立的で有益な情報提供に徹することで参加者の信頼を得られます。合同出展の場合も、ブース内で互いのスタッフが自社製品だけでなくパートナー製品についても基本知識を持ち説明できると良いでしょう。イベント終了後、獲得したリスト(参加者アンケートや名刺情報)は予め決めた方法で迅速に双方共有します。リストにはどの企業経由で来たリードか識別できるようタグ付けするなど工夫し、後続のフォロー営業に備えます。

6. フォローアップと効果測定・改善
共催マーケティングはイベント後のフォローまで含めて完了です。獲得したリードに対し、各社が責任を持って速やかにアプローチを開始しましょう。例えばセミナー後であれば、翌営業日中にそれぞれが参加者へお礼メールを送り、自社商材に関する追加情報提供や個別相談の案内を行います。この際、どのリードに対してどちらの企業がアプローチするかを事前に取り決めておくと重複や放置を防げます(例: 「自社経由集客のリードは基本自社が追客し、相手企業の商材に興味を示した場合は紹介する」等)。<br>
一定期間フォロー活動を行った後、共催の効果測定も欠かさず行いましょう。KPIに対する実績値(獲得リード数、商談化件数、受注件数など)を両社で集計し、当初目標に対する達成度を確認します。どの集客チャネルからの流入が多かったか、参加者の反応やアンケート結果はどうだったか、といったデータも共有し合います。その上で「次回はもっと○○を工夫しよう」「△△業界のお客様が多かったので、次は内容をその業界特化にしよう」など改善点を洗い出し、ナレッジを蓄積していきます。こうした振り返りを行うことで、共催マーケティングの精度が回を追うごとに向上し、より高いROIを実現できるようになります。

以上が共催マーケティング実行の主なステップとコツです。要約すれば、(1)適切なパートナーを見つけ、(2)目的・KPIを合意し、(3)手法と役割を決め、(4)各社の強みを活かして集客し、(5)当日は協力して運営し、(6)リードを双方で活用して成果に結びつける――この流れをしっかり回すことが成功への近道となります。

失敗しないための注意点(リスクと対策)

共催マーケティングはうまく活用すれば大きな成果を得られますが、進め方を誤ると失敗やトラブルにつながる可能性もあります。以下に失敗しないための注意点を挙げます。

  • パートナー選定ミスに注意: 最初のパートナー選びが不適切だと成果が出ません。顧客層が全く異なる企業や、自社と価値観・目的が噛み合わない企業との共催は避けましょう。また競合関係にある企業同士の共催は原則NGです(顧客情報を共有する関係上、信頼関係を築けません)。パートナー選定のポイントは後述しますが、「顧客ペルソナが似ている」「提供サービスに補完性がある」「相手企業のブランドイメージに問題がない」などを必ずチェックしましょう。
  • 双方のリソース貢献度の不均衡: 共催では「持ち寄り」が基本ですが、もし提供するリソース(予算・コンテンツ・人員・顧客リストなど)に大きな偏りがあると、一方だけメリットを享受する結果になりがちです。例えば、一方が集客リストを多く提供したのにもう一方の見込み客ばかりが増えるようなケースです。こうした不公平感は次回以降の協力関係に支障をきたします。事前に役割や投資割合を明確に取り決め、成果も両者にバランスよく還元される設計にしましょう(必要に応じて契約書を交わすのも有効です)。
  • 個人情報の取り扱いと顧客対応への配慮: 共催施策では、取得した顧客情報をパートナー間で共有する場面が発生します。これは非常にデリケートな部分です。例えば共催セミナーに集客した見込み客リストは、共催各社が等しく利用できるようになります。この際、参加者の個人情報をどの会社がどう扱うかを適切に開示し、同意を得ておくことが必要です。具体的には、イベント申し込みページや当日の案内資料・司会アナウンス等で「本セミナーは共催につき、ご提供いただいた個人情報は共催各社で利用させていただきます」と明記し、各社のプライバシーポリシーに基づき厳重に管理する旨を伝えます。また取得したリード情報の共有・管理ルールも社内外で明確にし、漏洩や誤用が起きないよう注意しましょう。個人情報対応を疎かにすると信頼失墜や法令違反につながりかねませんので、万全の配慮が必要です。
  • 継続条件・関係性の見極め: 一度共催マーケティングを成功させると「次も一緒にやりましょう!」となるケースが多いですが、必ずしも同じパートナーと永続的に続ける必要はありません。事業環境は変化しますし、製品アップデートや戦略転換、人事異動などでパートナーとの関係性も変わり得ます。無理に義務的な協業を続けるのではなく、その都度メリットが双方にあるかを見極め、必要に応じて新たなパートナー開拓も検討しましょう。関係を深化させられる場合は次の施策に進み、そうでない場合は一度きりの協業として良好な関係のまま終了する柔軟さも大事です。
  • 社内調整と営業連携の不備: 共催マーケティングはマーケティング部門だけでなく、自社内の営業部門や上層部の理解・協力も不可欠です。特に生成したリードを追客する営業チームとの連携が取れていないと、せっかくの共催効果が受注につながりません。また、自社内でパートナーとの協業に対するインセンティブ設計(例えばパートナー経由案件にも営業目標をカウントする等)が無いと、現場が動かず絵に描いた餅になる恐れもあります。事前に関係部署への説明や目標すり合わせを行い、社内体制を整えてから臨みましょう。

以上の点に注意し、リスクを事前に潰しておくことで、共催マーケティングの失敗を防ぎやすくなります。要は「パートナーとも自社内とも充分にコミュニケーションし、ルールを明確化して進める」ことが肝要です。

共催マーケティング推進のための社内体制とパートナー選定ポイント

共催マーケティングを継続的に成功させていくには、社内の推進体制づくりと適切なパートナー選定が重要です。この章では、実務で押さえておきたい社内体制構築のポイントと、パートナー企業を選ぶ際の観点をまとめます。

社内体制の整備とリソース確保

まず社内体制ですが、理想的にはパートナーマーケティング専任の担当者やチームを置くことが望ましいです。海外のIT企業などでは「Partner Marketing Manager」といった役職があり、パートナーとの共同施策に特化した人材を配置するケースも一般的です。もし専任配置が難しい場合でも、マーケティング部内でパートナー施策担当を明確に決めるか、もしくはパートナー営業(アライアンス担当)部門とマーケティング部門の横断プロジェクトチームを作るなどして、共催施策に取り組むリソースを確保しましょう。社内にノウハウがなければ、まずはマーケ担当者が主体となり、小さな施策からトライして経験を積むことも一案です。

また、予算の確保も重要です。パートナーとの共催マーケティング専用の予算枠、いわゆるMDF(マーケティング・デベロップメント・ファンド)を用意できればベストです。MDFとはパートナーと案件創出するための共同マーケ費用で、外資系をはじめとするパートナー戦略が進んだ企業ではあらかじめ年間計画に組み込まれていることが多いです。自社が直販中心でこれまで用意してこなかった場合でも、まずは少額からでも予算申請をし、実績を示しながら増額していくと良いでしょう。競合他社がMDFを積極投入してパートナー支援している中で、自社だけ未整備だとパートナーに選んでもらえないリスクもあります。経営層にパートナー施策の重要性を訴え、社内予算を確保する働きかけもパートナーマーケ担当者の役割と言えます。

さらに、共催マーケティングを円滑に進めるには営業部門や法務部門との連携体制も欠かせません。前述の通り、共催で生まれたリードを追う営業チームとの協力関係はもちろん、パートナー企業と契約書を交わす場合には法務チェックも必要です。社内の関係部署に対し、共催マーケティングの目的やメリットを丁寧に説明し、理解を得ておくことが成功の下地となります。

パートナー選定の観点

次に、どのような企業を共催パートナーに選ぶべきか、その判断基準を整理します。パートナー選びは成果を左右する最重要ポイントですので、以下の観点を検討しましょう。

  • ターゲット顧客の共通性: お互いの顧客ペルソナが似ているかを確認します。狙う市場・業種・規模があまりにも異なる企業同士だとシナジーが生まれにくいためです。理想は「自社がこれまでリーチできなかったが、相手は多く保有している顧客層」にアプローチできる組み合わせです。共通するターゲットが明確であるほど、共催テーマも定めやすくなります。
  • サービス領域の補完関係: 提供する商品・サービス同士が競合せず、むしろ補完し合う関係が望ましいです。組み合わせることでエンドユーザーに一貫した価値提案ができる相手だと、共同企画の説得力が増します(例:会計ソフト+税理士事務所、マーケティングツール+WEB制作会社など)。逆にカニバリ(食い合い)が発生する組み合わせは避け、Win-Winの関係となる提携先を選びましょう。
  • ブランドイメージと信頼性: パートナー企業の社会的信用やブランドイメージにも目を配ります。いくら顧客層が合致していても、一方の評判が悪ければ共催イベント全体の信頼を損ねかねません。また企業文化やコンプライアンス意識など、付き合う上で問題が無いかも確認しましょう。自社のブランドを預ける相手としてふさわしいかどうか、慎重に見極めます。
  • マーケティングへの積極度: 相手企業が日頃から積極的にマーケティング活動を行っているかも重要です。自社ウェブサイトで情報発信を頻繁に行っていたり、セミナー開催実績が豊富な企業であれば、共催の提案にも前向きで、打ち合わせから実行までスピーディーに進む傾向があります。逆にマーケティング未経験の企業が相手だと、準備の段階から温度差が生じる可能性があります。
  • 現場担当者との相性: 最終的には人と人の協力作業です。相手企業に「一緒に成功させたいと思える担当者」がいるかは、実は大きなポイントです。最初の打ち合わせ段階でコミュニケーションが取りやすいか、共催の意義に共感してくれるか、といった点を感じ取りましょう。信頼できるパートナー担当者と二人三脚で進められれば、多少の困難も乗り越えやすくなります。

以上の観点を満たすパートナー候補が見つかったら、ぜひ積極的に声を掛けてみましょう。パートナー側にもメリットが伝わるよう、自社だけでなく**「双方にとって有益な企画」であること**を強調すると良いです。お互いに協力しながら結果を出せれば、その後の関係も深まり、継続的に共催マーケティングを発展させていけるでしょう。

まとめ

共催マーケティングは、パートナーマーケティング戦略の中でも実践的かつ効果が高い施策として注目されています。他社と協業してマーケティング活動を行うことで、一社では得られないスケールメリットを享受し、新たな顧客層へのリーチやリード創出を効率化できます。本記事では、パートナーマーケティング全体の中での共催マーケティングの位置づけから、その具体的な手法、成功事例、実行ステップ、注意点、そして推進するための組織体制やパートナー選定のポイントまで包括的に解説しました。

実務で活かす上で大切なのは、単発の施策に終わらせず継続的な取り組みとして社内外の協力体制を築くことです。初めは小規模な共催セミナーからでも構いません。成功と失敗の両方から学びを得てノウハウを蓄積し、徐々に協業施策の規模や頻度を拡大していきましょう。また常に「パートナーとWin-Winの関係であるか」「互いにメリットが最大化されているか」を意識し、コミュニケーションと調整を丁寧に行うことが、長期的な成功の秘訣です。

競争が激化する市場環境だからこそ、パートナーとの共催マーケティングを味方につけることで自社のマーケティング力を飛躍させるチャンスがあります。ぜひ本記事のノウハウや事例を参考に、自社に適した形で共催マーケティング施策を企画・実践してみてください。

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