課題

  • 認定アドバイザー制度というパートナープログラムに登録するパートナーは多いが、その稼働状況が見えなかった
  • ハイタッチでの支援が可能なパートナーが一部に限られており、事業拡大に向けてテックタッチ化を進める必要があった

導入理由

  • パートナー単位ではなく、個人単位でKPIをモニタリング出来る点を評価
  • ダッシュボードの自由度が高く、モニタリングが簡易に出来た
  • Eラーニングやポータルなど案件以外の情報も紐づけて分析できた

導入効果

  • 個人単位のKPI管理の結果、パートナーの個人に対する支援活動が手厚くなった
  • 手厚い支援が功を奏し、2か月で1,500件の商談を創出。直販では難しい非連続的な定量的成果を実現
  • 支援対象の優先度設計も可能となり、上記の成果を2名のみで実現。テックタッチ化も進行した

「スモールビジネスを、世界の主役に。」というミッションを掲げ、だれもが自由に経営できる統合型経営プラットフォームの創造を目指して、2012年に設立されたfreee。今回はパートナー事業本部 アカウントマネジメント部のマネージャーを務める八島さんと、同じくアカウントマネジメント部でパートナーマーケターとして活躍する宮下さんに「PartnerProp」の導入を決めた背景と今後の展望について伺いました。

10年以上続くパートナービジネスで、15万社が顧客に

ー御社のパートナービジネスについて教えてください。

八島:freeeでは2012年の創業期頃からパートナービジネスに取り組んでおります。

というのもユーザーが会計ソフトを選ぶ際には、いつもお付き合いのある会計士の推薦で意思決定するケースが非常に多いです。一方で会計士の立場に立つと、財務会計という絶対に失敗できない領域において、推薦できる会計ソフトは、馴染みがあって信頼しているサービスのみ。そうした業界特性を踏まえて、会計士の方々と連携を深めていくという取り組みが早くから求められていました。

ーなるほど、ありがとうございます。八島さんのいらっしゃる部はどのような役割ですか。

八島:このアカウントマネジメント部では、特に会計事務所の皆様にfreeeを勧めてもらうための施策としてパートナーマーケティングに取り組んでいます。

特に自分のチームは、会計事務所の方々とともに、彼らの顧問先であるスモールビジネスの方々に対する経営支援サービスを推進していくチームです。

会計事務所の方々をしっかりと支援していくために、認定アドバイザー制度や認定資格者といった独自の仕組みを活用しながらサポートさせていただいています。

ー認定アドバイザー制度とは何でしょうか?

八島:5年ほど前にリニューアルをした弊社の制度になります。認定アドバイザー制度とは、会計事務所にfreeeを使いこなしていただきつつ、スモールビジネスの方々に対する経営アドバイスや業務効率化などを提案できるような支援をしていく制度になります。

成果としては、これまで15万社の顧客(全体の25%)を間接チャネル・アドバイザーチャネルから獲得しており、制度をリニューアルをしてからさらに伸びていますね

“見えない”ことが大きな課題

ー非常に素晴らしい制度と成果かと思いますが、是非感じておられた自社のパートナープログラムの課題について教えてください。

八島:アカウントマネジメントチームでは、データドリブンにパートナーの活動状況を把握すること、そしてそれに応じてパートナーの支援をしていくことを目指していました。

一方で、認定アドバイザーになっていただいた事務所の方でさえ、活動状況を把握し、可視化することは非常に難しい状況が続いていました。

例えば、一部の認定アドバイザーとは、ミーティングやチャットなどで頻繁にコミュニケーションを取っていましたし、こうした方のさらに一部からは定期的にスプレッドシートで案件の状況を伺うことできていました。

ただ、こうして共有いただいた案件はリアルタイムで更新されるわけではない点に加え、事務所単位での案件数しか見えず、その中で誰がどの案件を担当しているのかという個人単位での追跡はできていませんでした。

当然ながら担当者の工数にも限りがあり、全ての事務所に対してハイタッチの支援をしながら案件状況を共有していただくことはほぼ不可能です。

結果として、全体の中のごく限られた案件の状況しか見ることができず、なかなかもどかしい状況が続いていました。

一方で、弊社はパートナービジネスを拡大する方針を取っています。

こうした方針のもとで、アドバイザー向けのキャンペーンを打っていくなどの取り組みも決まり、本格的に認定アドバイザーとの案件状況モニタリングを行う環境整備が必要になってきていました。

ーまさにパートナーの活動状況が”見えない”ことに悩まれていたということですね

八島:そうですね。パートナーの活動状況が見えないとボトルネックが分からず、誰を支援するべきかが分かりません。支援チームの生産性を上げるためにもここが急務でした。

こうした課題を解決するため、パートナービジネスの進め方を調べていたところ、パートナープロップさん、そしてパートナーマーケティングという考え方に出会いました。

そこでは、パートナーの現場の個人に対してしっかりと支援を進めること、そしてその手段として中間指標をしっかりと管理してパートナービジネスを進めていくKPIモニタリングに力点を置いたアプローチが紹介されており、非常に感銘を受けたのを覚えています。

パートナープロップさんとパートナービジネスの進め方を相談させていただく中で、実際にこのPRMというツール、そしてパートナーマーケティングの運用を回すことができれば、ハイタッチでのパートナー支援に頼った現状を突破できるのではないかと考えるようになりました。

何より弊社としても、パートナーマーケティングの「オンボーリング→アクティベーション→リテンション」というサイクルをしっかりと回していきたいと考え、PRMの導入を決めました。

個人に対するデータドリブンな支援でパートナーが活性化

ー実際にPartnerPropを使ってみた感想を教えてください。

八島:まさに、freeeが理想とするようなデータドリブンなパートナービジネスを実現できるようになりました。

PartnerPropを導入する前は、パートナーの事務所単位での売上は分かっても、各所員さまの活動状況まで管理することは出来ませんでした。

しかし、パートナーさんにアカウントを発行し、彼らが持っている顧問先の案件情報やその進捗ステータスを登録していただいたことで、その案件の進捗を確認できるようになりました。これによりパートナービジネスの情報がリアルタイムで共有されるようになり、最大の課題として感じていた部分が解決できました。

それに加えて、パートナーさんの案件のボトルネックをバイネームで見られるようになったため、案件の進捗が止まっているパートナーさんから優先的にアプローチするなど、個人に対するフォローアップが以前より簡単に行えるようになりました。現在では、少ない人数でも着実にパートナーさんのアクティベーションを進められています。

ー非常に素晴らしいですね。ちなみに、なぜパートナー様が情報を入力してくれるのでしょうか。

八島:その点は弊社としてもかなり不安な点でした。しかし、杞憂でしたね。

パートナーにとってPartnerPropは案件管理のためのツールではなく、ベンダーから様々な情報を提供してもらう支援ポータルであると考えています。

そのため、PartnerPropを紹介する際は、「活動のための資料はここのポータルにあるので、活用してください」という案内の仕方に拘っています。これにより多くのパートナーさんにログインしていただいております。

さらに、ログインが進んでいくと、同時にポータルをどの程度見ているのかといった情報も蓄積されるようになっています。こうして集まった情報を確認してみると、例えば提案の実施率が低い方は配信している資料を見ていないということが多々あります。これらの情報を踏まえた上で、各パートナーには発言力の高いキーマンがいますので、そういった方々を狙って社内に実施の後押しをしていただくようにしています。

このような個人単位のフォローアップが出来るようになったことで、商談数や受注数が相当引きあがっていきました。ボトルネックをバイネームで見ることの出来る効果を実感しています。

5つのファネルに分けてダッシュボードを構築

ーありがとうございます。是非、運用をする上でのKPI設計についても教えていただけないでしょうか。

宮下:現在、5つのファネルに分けたKPIを管理しています。

まずは継続合意数、いわゆる受注数から始まります。そしてその一段階前が、提案合意数、すなわち担当者や決裁者が導入に対して合意した案件の数です。

さらに、提案合意を得るためには提案をしなくてはいけないため、提案数を3つ目のKPIとして追っています。

加えて、提案を実施するためのアポ打診・アポ設定中といった活動をアプローチ数として追いながら、一番最初のファネルとしてはアプローチをいつするか、という予定日まで聞いて、アプローチ予定数を集計する運用を行っています。

ーなんと、予定日まで聞いているんですね

宮下:そうですね。PartnerPropでは案件とパートナーの現場の所員さんまで紐づいていますので、その担当の方に対していつアプロ-チをするのかという予定まで聞いておくことで、パイプラインを前々から管理することができるようになりました。

加えて、ここまでアドバイザーさんと決めていくことで、確実に案件が進捗するようになりました。そうすると、当然ながら受注も増えていくので、アドバイザーとしてもこの取り組みを好意的に捉えていただけるようになったと思います。

ーありがとうございます。実際使われているダッシュボードはどのような形でしょうか。

宮下:今回のプロジェクトの第一フェーズとしてはしっかりとパートナーを通じた提案数、すなわち商談数を増やしていくことを目的としていました。

そのため、事業部で決めた目標値と、現在の実績のGAPをしっかりと可視化するダッシュボードを作り、日々のレポーティングに活用していました。

他にも、先ほどの5つのKPIをパートナー別・個人別に分析する表や、パートナーや案件の属性情報に応じたKPIの変化や傾向を分析するグラフなど、非常に多くのパターンのダッシュボードを作っています。

一般的なCRMと異なって非常に自由度の高い設定ができる上、特にBIツールに詳しいわけでもない私でもカスタマイズしながら見たい指標やグラフを構築できて、非常に使いやすかったですね。

ポータルの充実で、パートナーの個人の活動量が大幅改善

ーありがとうございます。こちらのダッシュボードはどのように運用しているのでしょうか。

当然ながらパートナービジネスを進めていくと、商談が進まない時期が出てきます。

実際、freeeでも思うように提案数が増えていかない時期がありました。

この時、事務所別に商談数を見るだけではなく、個人別の表も照らし合わせて見ることで、事務所全体が進んでいないのか、個人が進んでいないのかまで追うことができます。

そうして優先度を決めながら、個人にフォーカスしたご支援を進めています。

ーなるほど。提案の実施率が低い方に対しては、具体的にどのような支援をされているのでしょうか?

提案率が低い原因を探っていくと、「会計士さんがどのように商談創出活動をすればいいのかがわからない」という課題がありました。

当然ながら会計士さんというのは、会計の知識に特化した非常にプロフェッショナルな職種ですので、営業活動をしたことのある方は比較的少ないです。そのため、freeeの提案を依頼しても、その実践方法がわからず止まってしまう方が多くいらっしゃいました。

その解決策として、アポを取る際のトークスクリプトを顧問先の業界や課題別に数十種類用意し提供してみたところ、何をすればいいかよくわかったと非常に好評で、パートナーさんの行動量を増やすことができました。

このトークスクリプトを作成するにあたっても、顧問先の業界の情報や「今、誰がどの程度案件を抱えていて、どこで止まっているのか」がPartnerProp上に可視化されていたので、非常にスムーズに行うことができました。

加えて、資料を見ていることと理解していることは別の問題ですので、理解しているかを可視化するためにオンラインテスト機能を活用しています。これに合格しないと理解したことにはならないということですね。理解度の可視化はスプレッドシートなどではできないため、PartnerPropを使っていてよかったと感じています。

ーなるほどですね。ちなみに、モニタリングしていく中で、注視しているKPIは変わっていますか?

宮下:仰る通りで、進行中のフェーズによって変わっていきます。

PartnerPropの導入時には会計事務所の方々がしっかりツールを使えるようになっているかという点から始まりました。

その後は提案実施率を追っていましたが、なかなかうまく成果が出ず、アプローチ予定を追うようになったことで、一気に提案が進んでいきました。その後は、個人別の合意率を注視するなど、直販の営業活動に近い水準のマネジメントができるようになりましたね。

さらに、ここまでのKPIがある程度達成されてきたら、各事務所の協力できるキーマンを増やしていくという点が稼働率の最大化のために重要になってくると考えています。PartnerPropであればポータルの閲覧ログやトレーニングログからこうした方々を可視化することができますので、一つ一つ進めている状況です。

こうした活動を進める際にwebテストの機能があるのが素晴らしいですね。資料を見ただけでは記憶に残らないところもありますので、理解度をチェックすることが出来るのが非常に助かっています。

たった2名かつ2か月で1,500件超の商談を創出。
快進撃を続けるfreeeのこれから

ーPartnerPropを導入した定量的な成果はいかがでしょうか。

宮下:PartnerPropを導入したことで、実質的なパートナーセールスが2人と少ない中、2ヶ月で1,500件超のパートナー経由の商談を生み出すことができました。これはPartnerProp、そしてデータドリブンによる個人単位のマネジメントができていなければ実現できなかった成果だと考えています。

八島:定量的な成果だけではなく、我々として持っていた仮説を細かく検証しながら、再現性を持ってパートナービジネスに取り組める環境が何よりも良かったです。ポータルなど、パートナーを支援する仕組みを整えるパートナーマーケティングが、こうした個人単位でのKPIを可視化することに繋がっていく。そのインパクトを強く感じましたね。

ー今後の展望や取り組みたいことについて教えてください。

宮下:トークスクリプトや営業の仕方のイネーブルメントが成果に直結することは既にわかっているので、今後はパートナーさんがeラーニングを受講してくれているかどうかを個人単位でモニタリングし、受講率を高めることに注力していきたく思っています。

こうしたイネーブルメントの活動を通して、freeeのことを熟知している会計士さんをさらに増やしたいですし、その実現のためには中間指標のモニタリングができるPartnerPropが不可欠だと考えています。

八島:パートナービジネスは1:nの関係性の中で、少ない人数でも非連続的に事業を成長させられることが一番面白いところだと思っています。

パートナーマーケティングは、その効果をさらに引き出すための重要な武器であり、これからもアドバイザーへの手厚い支援を充実させながら、アドバイザーとともに「スモールビジネスを、世界の主役に。」する挑戦を続けていきたいと考えています。