
課題
- 勉強会を積極的に開催している中で、人的リソースに限界あり
- 資料管理や共有のフローが属人的であり、社内外問わず管理工数が課題に
- 売上以外のKPI設定が出来ておらず、パートナービジネスの改善施策が手探りに
導入理由
- トレーニングをデジタルコンテンツ化して、工数を削減できるツールを検討
- その中でパートナービジネスに関するデータを集約できるPRMに興味を持ち、使いやすさを魅力に感じたPartnerPropを導入
- 「育成→稼働→受注」の仕組化に共感し、パートナーマーケティングに沿った企画設計支援があることも評価した
導入効果
- ポータルが導入されたことで、パートナーから「どこを見ればよいか分かりやすい」という声
- いつでも受講できるeラーニングが整備でき、業務工数が削減
- 売上だけの管理から、パートナーの育成に関するKPI管理が可能に
「日本を代表するデジタルインフラ」を目指すさくらインターネット様は、2023年にガバメントクラウドサービス提供事業者に選定され、2025年までに政府共通のクラウドサービスの利用環境を提供することを目指されています。今回は、パートナーリレーショングループのマネージャー 和久井様に「PartnerProp」の導入を決めた背景と今後の展望について伺いました。
体制づくりの第一歩——少数精鋭で始めたパートナービジネス
ー御社のパートナービジネスについて教えて下さい。
さくらインターネットでは、直販組織を中心に成長してきた一方で、セールスパートナー制度の先駆けとなるような、パートナー企業をサポートするための取り組みも行っていました。そうした取り組みを改めて制度として再設計しようという流れで、正式なセールスパートナー制度として立ちあげたのが2024年度になります。
セールスパートナー制度を推進しているのが、「パートナーリレーショングループ」という部署です。この部署では、パートナー企業様の自走を支援したり、パートナー企業様と共同で販促活動を行ったり、パートナー企業様に提供する見込み案件を創出したりと、幅広い取り組みを行っています。
ー昨年から始められたのですね、パートナーは何社ほどいらっしゃるのでしょうか。
HP上で公開している認定セールスパートナー企業様は全部で54社です(2025年6月時点)。
ガバメントクラウドに条件付きで認定されたことなど、注目が集まるニュースが続いたことで、ありがたいことにお問い合わせをいただく機会が増えた結果です。
ー すごいですね。良ければ、より詳しい御社のパートナープログラムについて教えてください。
条件に応じてランクを設けており、ランクに応じたパートナー価格でさくらのクラウドをご提供します。
また、エンドユーザー様へのご提案にご活用いただくための提案資料や他のクラウドとの比較資料、システムの構成図を作っていただくためのアイコンセット、サービスのロゴの提供、弊社のプリセールスの担当による技術的な支援やご相談への対応、弊社ホームページのパートナーリストへの掲載、営業向け、エンジニア向けの勉強会などをご提供させていただいています。
こうしたリソースはかつてから蓄積したものがあったので、短期間で構築することができました。
“いつでも誰でも学べる”支援へ。テックタッチへの移行
ー パートナーの数が急速に増える中で、最初はどのようにパートナーとのやり取りや支援を行っていたのでしょうか?
当初、パートナー企業様の支援は、担当者が一人当たり何十社も持ちながら行っていました。パートナー契約の締結から資料提供までの一連の対応は、直販と同じ方法で実施し、資料提供は、オンラインストレージの共有フォルダを使って行っていました。
また、パートナー企業の営業担当者様向けの勉強会やウェビナーは、日時指定をしたうえで参加をいただいてオンラインで開催し、その録画を送付するなどしていました。
技術面に関しては、パートナー企業様がさくらのクラウドについて基本的な基盤の構築ができるレベルまで到達いただけるよう、勉強会をしっかりと回数を重ねて行っていました。これらの勉強会は日時を指定して講習会形式でオンラインにて開催していました。
そのため、営業および技術者向けの勉強会は、日時を指定する必要があったり、人数制限をかける必要があったので、全てのパートナー企業様が勉強会を自由に受講できない、という課題がありました。
また、当然ながら、勉強会を行うための弊社メンバーの工数が毎月かかっていました。これからもパートナー企業様数は増加する前提で考えていた中で、こうしたトレーニングの一部はテックタッチで進める必要を感じており、育成マテリアルのデジタル化を行おうと考えました。
パートナーの使いやすさを重視。現場目線で選んだPRMとは
ー パートナーのトレーニングをデジタルコンテンツ化するには様々なツールがあったと思いますが、その中でPRMに興味を持っていただいたのは、どのような背景だったのでしょうか?
パートナー制度を始めるにあたって、パートナー企業様を管理する適切なツールや手段があったほうが良いと感じていました。その中で、弊社のメンバーが外部の交流会でパートナープロップ代表の井上様と接点を持ち、PRMという良いサービスがあると共有していただきました。急務ではなくとも、PRMの導入を検討する必要性を感じ、パートナープロップ含め複数社の説明を聞いて、パートナー制度の整備を進めながらPRM導入に向けて進めていきました。
ー PRMを選ぶにあたって、何を重視されましたか?
PRM自体に対するイメージが湧いていなかったので、そもそもPRMで何ができるかという情報を取り入れるところから始め、最終的には金額感と使いやすさを重視しました。弊社メンバーだけでなく、パートナー企業の皆さまが使いやすいものでないと、導入しても活用されないのではないかという懸念があったので、できるだけ使いやすいものを導入したいと感じていました。
プロダクトのUI・UX部分はパートナープロップさんの魅力的な点だと思っていました。
ー ありがとうございます。他に選定基準になった点はありますか。
セールスフォースとの連携ができるかという点は必須要件でした。セールスフォースに直販を含めた商談情報を集約しているので、そこと連携できることは必須でしたね。
また、ビジネスサイドの企画設計支援も魅力的に感じました。
パートナービジネスを仕組み化して、再現性を持って伸ばしていくには、パートナービジネスに適した指標や数値の管理、データの可視化を行うことがマストであると感じていました。
従来はパートナー企業様ごとの月の売上しか見ることができず、どの指標を重視するべきかについてもよくわからない状況にありました。そうした中で、KPIの設計などの設計支援も含まれているという点に魅力的を感じました。
ポータルの情報集約と、eラーニングが変えたパートナー育成フロー
ー PartnerPropを導入いただいて率直にいかがでしょうか?
まずはやはり、ポータル機能によって、これまで分散していた資料が一箇所に集約されたことが大きいですね。これまではパートナー企業の窓口担当様の方を通して情報を共有していたので、手間がかかっていました。ですがポータルを用いて情報の共有をすることで、そのような手間がなくなったのがありがたい、どこを見ればよいか分かりやすくなった、との声をパートナー様からも聞いています。
これからもパートナー企業様に定期的な情報発信を行い、PartnerPropを習慣的に確認いただくように呼びかける必要があると感じています。
また、e-ラーニングでパートナー企業様のトレーニングをデジタルコンテンツ化できたのも良い点です。
トレーニングコンテンツは多くの方に取り組んでいただいております。ログイン率から見ても、比較的多くの方に受講していただいていると感じています。ただ、まだ全員に受講いただくことはできていないので、トレーニング受講を促進する施策を打っていく必要はあります。このあたりは今後もパートナープロップ様のCSチームの方々に知見をお借りしていきたいですね。ゆくゆくは全てのパートナー企業様にeラーニングをご活用いただきたいと考えています。
ーありがとうございます。これからWEBテストの活用もされるとか。
そうですね、今期の大きなテーマとしては、パートナー企業数を増やすことと、オンボーディング率を上げることを中心に考えています。
オンボーディングの判断基準として定めているのは、ウェブテストの合否が大きいです。例えば、弊社が定める特定の条件に当てはまる案件を受注した場合に、金銭的なインセンティブやキックバックというキャンペーンを考えています。このキャンペーンを適応するための条件として、ウェブテストの合格率や人数を満たす必要がある、というように、施策の条件に絡めていくことが一つの手段かと思っています。
ーさくらインターネット様はこうしたパートナーに稼働いただく施策を緻密に設計されている点が素晴らしいと思っています。
私自身、井上さんが書いているnoteなどは拝見しておりまして、そこでも解説されている「パートナーマーケティング」を進めていきたいと考えています。
パートナー企業様の育成をした上で、パートナープログラムに沿って稼働してもらうという「パートナーマーケティング」の考え方に沿ってKPIを設計し、それぞれの指標を高める施策を進めていきたいと考えています。
(パートナービジネスのKPI例)
PRMにデータを蓄積することで、パートナー制度のさらなるアップデートを目指す
ー PartnerPropの中で、これから活用されようとしている機能についても教えてください。
これから案件管理についても、徐々にPartnerProp上で実現していきたいと考えています。
懸念としては、案件の入力をパートナー企業様が早期かつコンスタントに行ってくださるようなパートナープログラムの仕組み作りや動機づけを行えるかという点です。例えば、さくらのクラウドのウェブテストを絡めてオンボーディング率の上昇を図りたいと考えていますが、ただ公開するだけでは受講してもらえません。自発的にテストを受けたくなったり、案件を入力したくなったりするような仕組みを制度に取り入れることで、そうした行動を促す動機づけのキャンペーンを考えて打ち出していくことが大変になりそうだと感じています。
また、弊社からの案件のご紹介や共同のウェビナー施策などを優先的にさせていただくための指標として、パートナープロップ上での数値で判断させていただくということをパートナー企業様にメッセージングしていきたいと考えています。
-なるほど、案件を登録するための動機付けもしっかりと設計されていくということですね。
そうですね。その他にも、パートナー価格の適用や、技術的なお問い合わせをいただく際には、該当の案件を登録してもらわないといけないというルールを検討しているので、おのずとパートナー企業の皆さまが案件を登録していただけるようになり、積極的にご活用いただけるようになるのではと思っています。
ただ、それだけでは足りないので、登録していただいた案件に、弊社の営業担当から適宜フォローをしたり、過去案件の参考情報や資料を展開することで、「案件を登録したらリアクションが返ってくる」という認識をパートナー企業の皆さまの中に築いていくことも必要ではないかと思っています。
パートナーマーケティングの設計をしっかりと構築した上で、最終的にはPartnerProp上にパートナービジネスに関するデータを溜め、そのデータをもとに今後のパートナー制度の改善や施策の考案につなげたいと考えています。