ぜ今、「AIワーカー」が必要なのか

― ツールは入れた。人は増やせない。だからこそ、仕事そのものを担うAIワーカーを。

なぜ今、「AIワーカー」が必要なのか

「事業を伸ばすなら、人を増やす」。

多くの企業が成長の前提としてきたこの考え方が、いま根本から揺らいでいます。

求人を出しても応募が集まらない。採用できても、定着しない。計画は描けても、それを動かす人が足りない――。いま企業が直面しているのは、一時的な人手不足ではなく、働き手そのものが構造的に減っていく、新しい局面です。

この連載では、その経営課題へのひとつの答えとして広がりつつある「AIワーカー」という考え方を、調査データを交えながら整理していきます。第1回のテーマは、なぜ今、AIワーカーなのか、です。

先に要点をまとめると――人手不足は一時的な現象ではなく構造的な課題へと変わり、営業の現場では本来の仕事に使う時間が日々の作業に奪われています。その解決策として注目されているのが、反復的な作業を引き受けて人を本来の仕事に集中させるAIワーカーです。

1. 人手不足は、もう一時的な話ではありません

帝国データバンクの『人手不足に対する企業の動向調査(2026年4月)』では、正社員が足りないと感じている会社は50.6%。半数を超える状態が、4年連続で続いています。同じ調査によると、人手が足りずに事業を続けられなくなる人手不足倒産も、2025年度は441件と、3年連続で過去最多を更新しました。

そして、これから先がもっと大変です。リクルートワークス研究所が2023年に発表した『未来予測2040 ―― 労働供給制約社会がやってくる』の予測によると、日本では2030年に約341万人、2040年には約1,100万人もの働き手が足りなくなるとされています。これは景気が良い・悪いという波ではなく、働く世代の人口そのものが減っていくために起こる、避けにくい変化です。

営業や販売の現場も、もちろん例外ではありません。同じレポートの職種別予測では、商品の販売に関わる仕事は、2040年におよそ108.9万人が不足し、その割合は24.8%にのぼります。ざっくり言えば、4人に1人分の働き手がいなくなってしまう計算です。だからこそ同研究所は、この危機をやわらげる方法の筆頭に、徹底した機械化・自動化を挙げています。

2. 営業の現場では、売る時間がどんどん減っています

人が足りないと、ただ忙しいだけでは終わりません。残った人に仕事が積み上がり、本当にやるべきことに使う時間が削られていきます。

Salesforceの調査レポート『セールス最新事情(State of Sales)』第5版によると、営業担当者が実際に営業そのものに使えている時間は、全体のたった28%。残りの多くは、顧客データの入力や社内での調整、報告といった、売る前後の作業に消えています。

国内の調査でも、同じ課題が根強く残っています。HubSpot Japanが2024年に発表した『日本の営業に関する意識・実態調査(第5回)』では、営業担当者がムダだと感じる業務の上位に、社内会議と社内向けの報告業務が並びました。これらは調査開始から5回連続のトップで、コロナ禍をはさんでも、営業以外の社内業務に時間を取られる状況は変わっていません。

つまり、本当の問題は営業の腕ではなく、営業以外のことに時間を取られていることなのです。人を増やせない以上、一人ひとりがお客さまと向き合う時間をどう取り戻すかが、成長の分かれ目になっています。

3. パートナービジネスは、とくに属人化(あの人頼み)に陥りやすい

この悩みがいちばん色濃く出るのが、販売代理店やパートナーと一緒に売上をつくるパートナービジネスです。現場では、どの代理店がいま何に動いているのか見えない、毎日の見積もり作成や問い合わせ対応に追われて肝心の支援まで手が回らない、全国であちこち勉強会を繰り返しても手間のわりに効果が見えにくい、といった声がよく聞かれます。

パートナービジネスは、相手の会社の数だけやり取りがあり、情報がバラバラになりがちです。これまでのいきさつも、うまく進めるコツも、担当者一人の頭の中にたまっていきます。その結果、あの人にしか分からない状態――いわゆる属人化が起きてしまいます。担当者が異動・退職すると、せっかくのノウハウがそこで途切れてしまう。人が減っていくこれからは、こうした属人化が、事業を続けるうえでの大きなリスクになっていきます。

4. だから、AIが自分から動くことに意味があります

これまでの解決策は、たいていツールを増やすことでした。けれど、SaaSのようなツールは、結局だれかが入力し、使いこなして初めて力を発揮します。便利になったはずが、その操作や管理がまた新しい作業を生む――そんな経験をした現場も少なくないはずです。

ここで違いを生むのが、AIです。

最近のAIは、質問に答えるだけの存在から、自分で段取りを考えて作業まで進めるAIエージェントへと進化しました。2025年はAIエージェント元年とも呼ばれています。調査会社のガートナーが2025年に示した予測では、2028年までに、日々の業務における意思決定の15%以上がAIにまかされるようになるとされています。こうした動きは、日本に限りません。海外ではすでに、営業の初期工程をまるごと引き受けるAIワーカーが登場し、働き方そのものを変えはじめています(具体的な事例は、次回くわしく取り上げます)。

AIが得意なのは、まさに2章で見た、人の時間を奪っていた作業です。リストづくり、データの整理、見積もりの作成、問い合わせへの返信、こまめなフォロー。くり返しが多く、それでいて手を抜けない作業を、AIは休まず、ムラなくこなしてくれます。これらをまかせられれば、人は信頼を築き、課題を見つけ、提案するという、人にしかできない仕事に立ち返ることができます。

属人化をほどくのも、AIの得意なところです。これまで誰かの経験やカンの中にあった進め方やお客さま情報を、AIを通してデータとしてためていけば、あの人にしか分からない状態が、チームの誰もが使える状態に変わります。失われがちだった再現性を、チームに取り戻せるのです。

5. AIワーカーは、指示待ちの道具ではなく、一緒に動く相棒です

とはいえ、AIを入れさえすればうまくいくという単純な話ではありません。

同じくガートナーが2025年に示した予測では、期待が先走って始まったAIエージェントの取り組みの40%以上が、2027年末までに途中でやめてしまうとされています。何のために使うのかがあいまいなまま、目新しさだけで導入してしまうのが大きな理由です。だからこそガートナーは、最後はかならず人が判断するという進め方を大事にしています。AIは人の代わりになるのではなく、人と一緒に働いてこそ力を発揮するからです。

私たちが「AIワーカー」と呼んでいるのは、まさにこの考え方に立った存在です。AIワーカーとは、ツールのように人が使いこなすものではなく、リスト作成や見積もり、問い合わせ対応といった反復的な作業そのものを自律的にこなし、人を本来の仕事に集中させる、隣で動いてくれる存在のことです。言いかえれば、ソフトを導入して使いこなすのではなく、仕事そのものをAIワーカーに任せる、という発想に近いものです。ただ作業を自動化する道具ではなく、現場のことを理解し、面倒な作業を引き受け、人の判断をそっと支えてくれる。隣で一緒に動いてくれる、信頼できる相棒です。AIが手を動かし、人が決める。 この役割分担こそが、人手不足と属人化という2つの壁を同時に越えていく、いちばん現実的な道だと考えています。

そして、この考え方をパートナービジネスの現場で形にしていくのが、PartnerPropの販売代理店支援AIエージェント、aiboo(アイボー)です。


次回は、AIワーカーは結局なにができるのかを、もっと具体的にお話しします。AIは実際にどこまで仕事をまかせられるのか。海外ではいま何が起きているのか。難しい話ではなく、現場で人と一緒に動く、その姿を、わかりやすくお届けします。