最近ビジネスにおいて「アライアンス」という言葉を聞く機会が多くなっています。
そもそもどういう意味で、どんな利点があるのか?
なかなかイメージできない方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、アライアンスとは何か?
アライアンスのメリットとデメリットについて、まとめてみます。
更に、よく耳にする航空業界のアライアンスのメリット・デメリットについても解説します!
そもそもアライアンスとは?
アライアンスとは、複数の企業が業務や資本を提携することです。
その目的は利益や業務、事業の拡大などがあります。
M&Aのように1つの企業に合併するのではなく、それぞれの企業が独立したまま協力関係を築くのがアライアンスの特徴です。
具体例を紹介します。
2020年6月に、東京海上日動火災保険株式会社とタイムズ24株式会社は業務提携を発表しました。
シェアリングやMobility as a Service社会の到来に備え、予約制駐車場サービスのネットワークを拡大するためです。
東京海上日動が持つ営業網や顧客データと、タイムズ24の駐車場サービスをかけ合わせ、事業・販路拡大を目指しています。
参考URL:https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/200623_02.pdf
このように、お互いの持つ強みを活かして企業の成長を目指すのが業務提携、すなわちアライアンスです。
皆さんは「アライアンスビジネス」をご存知ですか。 近年、規模やブランド力の高い企業に対抗するために複数の企業が協業しているケースが増えています。アライアンスビジネスも協業する企業の増加に伴い注目され始めている業務形態のひとつです。 […]
アライアンスのメリット・デメリットとは?
近年、ビジネスにおいてアライアンスは非常に有効な戦略として実施されています。
デメリットよりメリットの方が多そうですが、実際にはどのようなものがあるのでしょうか?
ここからは、アライアンスのメリットとデメリットをまとめていきます!
そして、デメリットを減らすための回避策も一緒に紹介します。
アライアンスのメリット
アライアンスのメリットとして、以下があります。
- 企業競争力の向上
- 低コストでスムーズな事業拡大
- 独立性が維持できる
それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
競争力の向上
アライアンスによって、企業の競争力を高めることができます。
なぜなら、アライアンスパートナーから、自分たちにはない技術やノウハウを得ることができるからです。
例えば、技術力の高い企業が営業力の高い企業とアライアンスを組むとき。
営業を相手企業に任せれば、自分たちは研究開発に専念することができますよね。
あるいは、相手企業の持つ営業ノウハウから学び、自社の営業力向上も可能です。
これを代理店契約によって実現させている企業も多くあります。
代理店というスタイルも、一種のアライアンスだと言えるでしょう。
低コストでスムーズな事業拡大
アライアンスを活用することで、コストをかけず、ハイスピードな事業拡大が可能です。
その理由は、パートナーが持っている資産を活用でき、1から構築する必要がないためです。
同様の例で、技術力の高い企業が営業力の高い企業とアライアンスを組んだとします。
本来であれば、自分たちで販路を見出していくのに費用がかかり、試行錯誤を繰り返していくことになります。
そこを相手企業の持っている営業網を活用することで、スピーディに販路を広げられます。
このように、自社の不足している技術やノウハウを補えるのが、アライアンスを結ぶ目的の1つでもあります。
独立性が維持できる
アライアンスはM&Aとは異なり、経営権に影響を及ぼしません。
お互いが目指す経営方針を変えずに済むので、社員への影響を最小限にして協働することが可能です。
また、不測の事態が起こった際にも、リスクの分散ができている状況になります。
関係解消が容易なので、自社への影響を少なくすることが出来ます。
アライアンスは、Win-Winな関係でお互いの会社を発展させることができる、とても有効なビジネス戦略と言えるでしょう。
アライアンスのデメリット
アライアンスのデメリットとして、以下があります。
- 実効性・成果が保証されていない
- 技術流出・情報漏洩のリスクがある
実効性・成果が保証されていない
アライアンスパートナーは経営が独立しています。
よって、それぞれの働きは各社に委ねられている状態です。
例えば、アライアンス契約を締結したA社とB社。
A社はB社の営業力に期待していましたが、実際にアライアンス契約を締結した後B社が社内方針の変更などから営業活動にコミットしないケースなど少なくありません。かといって、事前に契約書でコミットラインを設定していなければ、A社はB社の営業・教育方針に口を出すこともできません。
結果、新規顧客の獲得ができず、A社はアライアンスの恩恵を受けることができませんでした。
と、このような事例も起こる可能性があるのです。
実効性や成果によって報酬が発生する契約でない場合は、特に注意が必要です。
技術流出・情報漏洩のリスクがある
アライアンスの目的として、技術やノウハウを共有し合うことによるシナジー効果があります。
それは一方で、自社の手の及ばないところに情報の届くリスクが生じることを意味します。
考えられることとして、
- 技術やノウハウの盗用
- 顧客や社員の個人情報の漏洩
などがあります。
例えば、アライアンス契約を締結していたC社とD社が契約期限を満了し、アライアンスを解消したとします。
その後、D社はC社の競合であるX社のアライアンスパートナーとなりました。
つまり、今までC社と協力関係だったD社が、C社の情報を持ったまま敵側(X社)にまわることになるのです。
このように、アライアンスパートナーからライバル会社に自社の情報が伝わるリスクが発生します。
技術やノウハウを共有する=流出リスクがある、ということは押さえておくべきですね。
アライアンスのデメリットへの対策
アライアンスのデメリットに対して、何か対策はできないのでしょうか?
ここでは、デメリットを回避するための対策として、
- 力強いリーダーシップによるリード
- アライアンス契約前の入念な調査
- 機密保持契約の締結
以上の3つをご紹介します。
力強いリーダーシップによるリード
アライアンスの場合、業務の進め方は各会社に委ねられています。
そのため、企業間で齟齬の生じることがあり、成果が出ないことも。
そこで、アライアンスを統括するマネージャーのリーダーシップが重要になります。
マネージャーがアライアンス先と綿密なコミュニケーションを取り、お互いの理解を深めるよう促すこと。
また「アライアンス内で取り組んでいる事業を成功させる!」という目標を共有し、事業全体が順調に進むよう調整すること。
そうしたリードによって、企業文化の異なるアライアンスパートナーであっても、一致団結できるでしょう。
「実効性・成果が保証されていない」というデメリットも、力強いリーダーシップで克服できるはずです!
アライアンス契約前の入念な調査と合意形成
アライアンス選定先を決める段階で、相手企業のリサーチと事前の合意形成が重要です。
相手企業の実績、信頼性、従業員間の雰囲気。
これらを調査することで、期待に応えてくれる企業か?
ともに事業を成功させられるか?判断することができるでしょう。
また、相手企業のセキュリティ面も調査しておきましょう。
サイバー攻撃に対して対策がなされていれば、情報漏洩のリスクを下げられます。
希望の企業とのアライアンス契約獲得の戦略を練るためにも、選定先の調査は重要です。
また、契約時に契約書以外にも念入りな合意形成が重要になります。例えば、お互い人員をどれ位導入するのか?について合意する際は、具体的な担当者名と采配スケジュールまで落とし込むなどより具体的に行うべきです。このようにすることで契約後の齟齬を減らすことができます。
機密保持契約の締結
技術や情報を共有しながら進めていくのがアライアンス業務です。
一方、それらの流出は会社にとって大きな痛手となります。
あらかじめ機密保持契約を締結することで、リスクを排除しておきましょう。
業務提携を結ぶ際に、機密保持契約を入れる、あるいは別に機密保持契約書を交わすことで、情報流出を回避できます。
アライアンスは重要な戦略でメリットも多い反面、デメリットも存在します。
リスクマネジメントを行った上で、上手く活用できると良いですね。
アライアンスのメリット・デメリットの事例紹介
今回はアライアンスのメリットやデメリットについて、航空業界の事例を踏まえ紹介したいと思います。
ほとんどの航空会社はなんらかの航空アライアンスに加盟しています。
やはり、メリットが多いから加盟しているのだと考えられますよね。
では一体、どのようなメリットがあるのでしょうか?
ここからは、航空連合に加盟するメリットとデメリットをまとめていきます!
航空業界のアライアンスとは?
航空業界のアライアンスとは、世界各地の航空会社による連合組織です。
「航空連合」や「国際航空連合」とも呼びます。
共同運航や設備共有によって、サービスの充実やネットワークの拡大を図っています。
3大アライアンスとして、ANAなどが所属する「スターアライアンス」、JALなどが所属する「ワンワールド」、デルタ航空などで構成される「スカイチーム」が存在します。
参考URL(スターアライアンス 公式HPより「スターアライアンスとは」概要):https://www.staralliance.com/ja/about
航空連合では、競合でありながらもアライアンスによって協働しています。
業界の中で生き残りたいのはもちろん、顧客によりよいサービスを提供したい。
そんな共通の願いがあるからこそ、同業種によるアライアンスが設立されているのかもしれません。
航空業界のアライアンスのメリット
航空連合のメリットとして、
- 自社で補えない路線への拡大が可能
- 施設や設備の共有・共同調達によるコスト削減
- 利用者の利便性向上
などがあります。
1つずつ見ていきましょう。
<h4>自社で補えない路線への拡大が可能
自社で全ての空港への新規路線を開設するのは、莫大なコストがかかってしまい、現実的ではありません。
そこで、未開設の路線を運航する他社の飛行機の座席を買い取り、自社で販売をします。
すると空港での業務や運航に関しては他社が行ってくれるので、低コストで新たな路線のチケットを販売することができます。
この仕組みはコードシェア便と呼ばれ、アライアンスに加盟している航空会社間で積極的に運用されています。
施設や設備の共有・共同調達によるコスト削減
チェックインカウンターや空港のラウンジなど、アライアンスに参加している航空会社でさまざまなものを共有しています。
それに伴い、設備の管理費や人件費を削減することができます。
また、燃料を共同で調達したり、飛行機の整備で協働したりすることで、コスト削減や効率化が可能になっています。
利用者の利便性の向上
アライアンス内で協力することで、利用者に幅広いサービスを提供することができます。
例えば、スルーチェックイン。
最終目的地までに乗り継ぎが必要な場合、本来なら経由地で再度チェックインすることになります。
しかし、同じアライアンス加盟会社の便を利用する場合はスルーチェックインが可能になり、最初のチェックインだけで最終目的地に行くことができます。
他の例として、マイレージプログラムの提携。
これは、同じアライアンスの航空会社であれば、どの会社を利用してもマイルを貯めることができるというものです。
具体的には、ANAを利用する場合であっても、ユナイテッド航空のマイレージプログラムでマイルを貯めることが可能です。
この場合、いずれの航空会社もスターアライアンスに加盟しているため、マイルの加算先を選ぶことができるのです。
このように、利用者にとって嬉しいサービスを提供できることで、利用者増加が見込めることもアライアンスの大きなメリットです。
アライアンスに加盟することは航空会社・利用者の双方にメリットがあります。
ほとんどの航空会社がアライアンスに加盟しているのも納得ですね。
航空業界のアライアンスのデメリット
航空連合のデメリットとして
- 自由に路線就航ができない
- 独自のサービス展開が難しい
などがあります。
それぞれ解説していきましょう!
自由に路線就航ができない
路線の拡大が可能になる反面、自由度は下がってしまいます。
その理由は、アライアンス内の他の会社への影響も考えなければならないからです。
例えば、ANAがヨーロッパ行きの路線を1本増やそうとしています。
しかし、増やせばヨーロッパの航空会社の利用客が減ってしまうかも知れません。
影響を受けるのが同じスターアライアンス加盟会社の場合、許可の降りないことが考えられます。
また、競合のアライアンスとの兼ね合いも考慮する必要がありますので、やはり自社だけで就航の舵を取るのは難しくなります。
独自のサービス展開が難しい
アライアンスに加盟することで、自社独自でのサービスやキャンペーンを実施するハードルが高くなります。
理由は路線就航と同様に、アライアンス内の他の会社の影響を考慮する必要があるためです。
他社の利益を損ねてしまったり、非効率化を招いたりする可能性があるサービスは、実施困難だと考えられます。
航空業界のアライアンスのデメリットを一言で表すなら「アライアンス内での制約が加わること」に集約しそうですね。
航空業界のアライアンスのデメリットへの対策
航空連合のアライアンス内では、制約が加わってしまうというデメリットがあります。
解消するためには、どのような方法があるでしょうか?
対策としては以下の2つがあげられます。
- 長期的な目線でアライアンス加盟を考える
- アライアンスに属さずに共同運航を行う
長期的な目線でアライアンス加盟を考える
アライアンスに加盟する前に、どのアライアンスに属することが自社の長期的な発展に繋がるか?検討することが重要です。
他に属している航空会社を調査し、最も適したアライアンス先を探すことで、制約によるデメリットを小さくすることができるでしょう。
アライアンスに属さずに共同運航を行う
イレギュラーですが、そもそもアライアンスに属さずに路線拡大などの利点を手に入れる方法があります。
実は、アライアンスの垣根を越えて提携したり、アライアンス無所属の航空会社と提携しているケースも存在します。
例えば、ハワイアン航空はどのアライアンスにも所属していません。
にもかかわらず、現在JALと独自に提携し、共同運航を行っています。
マイレージプログラムも提携しているので、対象の路線であればハワイアン航空の便でもJALのマイルを貯めることができます。
このように、航空連合に加盟せずに個々の会社と提携するのも、1つのビジネスモデルとして検討できます。
航空業界では、大部分の会社がアライアンスに所属している状態です。
近年ではそれが発展し、一部の航空会社との提携を強化させた「共同事業」を組むこともあるようです。
ビジネスを拡大させたいなら、自らそのスタイルを模索していくことも大切ですね!
今回はアライアンスとは何か、またアライアンスのメリット・デメリットとその対策について解説してきました。
今や、ビジネスにおいてアライアンスは重要な戦略の1つです。
その意味やメリット・デメリットをしっかり押さえ、自社の発展に活かしていきましょう!