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30名体制で“全部持つ”パートナーアライアンス組織
ーまず、御社のサービスについて教えてください。
佐道ー請求書受領、経費精算、債権管理というさまざまな業務で課題を解決する経理AXです。2020年の立ち上げから5年足らずでARR100億を超えたサービスとなっております。請求書事業市場における売上高シェアを昨年度から拡大して49%で、4年連続シェアナンバーワンです。
プロダクトの良さは、99.9%の高精度なデータ化、大量の紙を処理する体制、大手金融機関にも採用されるセキュリティ、専任のカスタマーサクセス体制など、顧客のDXを強力に推進するサービス機能と体制が整っている点が魅力です。

ー御社のパートナービジネスについて教えてください。
佐道ー通常の会社であれば会社対会社でパートナー契約を結ぶところを、私たちは個々のプロダクトが強い会社として、事業部単位でパートナー戦略を展開しています。その中で私はBill One事業部のパートナーアライアンス責任者として、組織を立ち上げ、パートナービジネスを推進しております。
ーパートナーアライアンスのチーム構成はどのようになっていますでしょうか。
パートナーアライアンス部として約30名のメンバーで構成されています。内訳としてはPartner Managmentと言われるパートナー様をアカウント担当としてマネジメントするチーム、インサイドセールスチーム(Partner SDR)、新規顧客案件のクローズを行う部隊、既存顧客のExpansionを担当する営業部隊をまとめたPartner Salesチームを抱えています。
まずPartner Managmentに関しては、パートナービジネスの知見・解像度がないとできないポジションとなっております。戦略を立てていくには、パートナーの中身や構造を理解して解像度高く対応する事が求められます。私がそこに対して知識の共有をしたり育成をしております。
Partner SDRに関しては、パートナーと個別契約を巻いて、インサイドセールスとして架電業務からの案件創出を行っております。
また、パートナーからの紹介案件をクロージングするPartner Sales部隊、既存顧客へのExpasion営業を実施するSales部隊も整備しています。
パートナーからの案件をしっかり理解せずに対応してしまったり、パートナーに対しての理解が浅く、コミュニケーションの齟齬が生じることもよくあるのが実情です。
そのため、部門全体として、戦略立案、案件創出、案件対応に至るまでの過程を一つのサイクルとして部門内で担当し、各チームのコミュニケーションを円滑にし、パートナーからの信頼が損なわれないようにしております。
ー”パートナーの社名を使ったIS”について非常に興味が湧いたのですが、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。
佐道ーパートナーさまの他のプロダクトを売るわけではありません。あくまで私たちのサービスを私たちのリソースを使って、パートナーの顧客の皆様へのISの業務を行うということをしております。私たちはホリゾンタルのSaaSで、顧客が財務や経理が中心となります。このようなプロダクトをパートナーさまに営業していただくのは、リソースや難易度という観点からも一定数ハードルがあります。そのためリソースが豊富な私たちでこの業務を行う体制を取っています。
通常のSaaS企業だと顧客リストを渡すということは難しいと思いますが、私が入社した時に、すでにブランド力が強かったため、この体制を組織することができました。Bill Oneを扱いたいと思っていただけている一定のパートナーシップが前提にあるのが、このやり方に至った背景でもあります。
ーありがとうございます。パートナーアライアンス部での佐道さんのお役周りについても詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。
佐道ーパートナーに対してどういう戦略を立てていくかということと、自分の経験則を踏まえた形でパートナービジネスそのものをデザインできることが強みだと思っています。できる限りオペレーションまで触らないようにしており、若いメンバーがチャレンジできる環境を重視しています。私自身、20年程のパートナービジネスの経験がある中で各企業にてプランニングしてきたことが方法論として生きていると思うので、そうした中で培ったナレッジをメンバーに教えています。
パートナービジネスは”重要”ではなく“当たり前”であるべき
ー過去のご経験からも通ずると思いますが、改めて佐道さんはパートナービジネスの重要性についてどう考えますか。
佐道ーベンダー各社の皆さんがパートナービジネスは取り組んだ方がいいと思っているはずです。数字の面でも、マーケットを見た場合にIT商材の流通経路は7割が、パートナー経由です。むしろ私がパートナービジネスを始めた頃からすると、パートナーの数は増えている状態だと思います。昔に比べ、現在はパートナーの営業ハードルが下がったので、様々な会社が代理店になることができるようになっています。この状況を前提としたときに、パートナービジネスに取り組むことは、本来当たり前でないといけないものだと思っています。 しかし、そこに対する方法論と知見を持ったビジネスパーソンが圧倒的に足りないのが、日本の現状だと思います。
ーなるほど。日本と世界で、その点に差があると。
佐道ー加えて、PRMのようなツールの認知が進まないことで、パートナービジネスそのものの進化のスピードが遅くなってしまっていると感じます。私たちの世代が、新たなプロダクトをパートナービジネスを利用して届けることが当たり前の世界を作りたいと思っています。しかし、この世界を実現するには、知識・環境整備などハードルがまだまだあると考えています。

「正解はない」からこそ、プロダクト起点で柔軟な設計を
ーありがとうございます。各社パートナーマーケティングや様々な取り組みをしている中で佐道さんが考えるパートナービジネスの方法論についてお聞きしてもよろしいでしょうか。
佐道ー最近、「パートナービジネスとは」というような記事を目にする事も増えてきていますが、一筋縄で行かないのもパートナービジネスです。前提として、どれだけ柔軟に、状況に即して対応していけるかが重要だと思っています。
ー柔軟性という意味だと、パートナープログラムのような仕組みについてどう考えておりますでしょうか。
佐道ーパートナープログラムについても同じで、パートナーのラインナップ揃わない状況でプログラムを作成すると、パートナーに満足頂ける形のプログラムはできないと思っています。プログラム自体を否定的に言いたいわけではなく、作るタイミングが重要だと思います。
「とりあえずプログラムを作りましょう」となりがちですが、私はそこに疑問があります。まずは出揃ったパートナーがどういうプレイヤーで、どう性質のパートナーであるのか。その中で、ランク制度なのか、インセンティブ制度なのか、MDFをどう使うのか――こうしたプランはパートナービジネスが拡大した後からついていくものだと思っています。当事者不在のままプログラムを作ることに関しては、絵に描いた餅になりがちです。ただし、プログラムは絶対にいずれ必要になる。そこは間違いないと思っています。
ーなるほど、ありがとうございます。
佐道ー現在はパートナー自体が多様化してきています。そうなると、プログラムという枠にはめるより、一緒にそのプロダクトをどうマーケットに訴求するかの方が、彼らにとっての要求ポイントとして高くなってきます。つまり、「プログラムがあるから儲かる。だから乗る」という単純な合理性だけでは、協業を進めて行く上での合意は得にくくなっています。もちろん、様々な声を前提として集められるのであれば、ある程度まとめた形のプログラムに“抑え込める”のかもしれません。ただ、現実はそんなに簡単ではなくて、これだと思って作っても、中々はまらずに都度作り直しをしていく事が多いです。
結果として何度も修正が入って、そのたびにパートナーが混乱し、より分かりにくく手触りの悪いものになっていきます。だからこそ、結論としては「必要だけど、タイミングが重要」。これに尽きると思っています。
PRMが必要な理由:荒さを“澄ませる”
ーPRMは必要だという話が少し出ていましたが、佐道さんがなぜ「PRMは必要だ」と考えているのか、詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。
佐道ーパートナービジネスを進めて行く際に、どうしても管理の煩雑さや業務のブラックボックス化が、パートナービジネスに常に顕在化している問題です。まず、情報を整理していくという観点で、一番最初に「案件管理」という考え方として出たのがCRMだと思います。そのCRM的な整理を、より“パートナー”に着眼して進めていこうとする取り組みが、PRMだと捉えています。
PRMの普及は時間の問題だと思っています。欧米で進んでいる事実もありますし、パートナービジネスも数年遅れて、欧米の方法論が日本に入ってきています。加えて、日本には前提として卸問屋の文化があります。パートナービジネスの源流のようなものは日本において崩れることなく何十年間続いていますし、これからも続いていくと思います。
ただ、一方で、パートナービジネスは直販に比べて“荒い”部分が多いのが事実です。これからはデータの重要性が上がり、データの管理そのものがビジネスを生む時代に入っていく。そうなると、煩雑化された現場を「何で整理して、何で“澄ましていくのか」という問いが避けられません。私はそこは、有用なツールでしかないと思っています。そして、その一つがPRMだと思っています。
PRMで情報が揃い、案件や活動が見えて、「管理」という行為が“組織のもの”になる。そうすると、二万社規模のパートナーにも新たな可能性が生まれると思います。販路の拡大はITに限らず広がっていきますし、IT流通のパートナー自体も、別のユーザーを開拓できる余地が出てくる。そのきっかけを作るのがPRMだと思っています。
ーなるほど。最後に、PRMがもたらす価値を、もう少し端的に言うとどんな点でしょうか。
佐道ーこれまで「難しい」「ハードルが高い」と思われていた新しいベンダーさんにとって、PRMはパートナービジネスの入口を作りやすくする道具になる。そういう意味でも重要だと思っています。
それと同時に、ユーザー目線というより、パートナー側がビジネスをさらに拡大していくためにも、より使うべきものだと思っています。PRMは、そういった意味でパートナービジネスそのものの未来の一つだと考えています。
ーパートナー視点でも重要なものだということですね。

今後の展望—「ビジネスインフラ」に近づくために、エリアと構造を変える
ー最後に、今後の展望を伺ってもよろしいでしょうか。
佐道ー私は入社した際に、会社が掲げる「ビジネスインフラになる」という言葉に魅力を感じて入社をしました。最初は正直、現実味を感じられない部分がありましたが、その言葉に触れるうちに、逆に刺激を受けました。ビジネスインフラを目指すなら、より多くの企業に“当たり前”として届く状態に近づけなければならない。そのために、パートナービジネスが必要になる。そのように腹落ちしていった感覚があります。
ーパートナービジネスは事業成長に欠かせないということですね。実際に強化したいことはありますでしょうか。
佐道ーはい。直近で強化したいのは、エリア戦略の強化です。今のBill Oneは、エリアへのアプローチがまだ十分ではありません。直販で導入を拡げてきた故に「このくらいで仕方ない」と社内で受け止めてしまいがちなのですが、他社の事例を見ても、地方拠点を起点に成果を出している動きが増えています。エリアを“スルーできない状態”に変えていきたいと思っています。
そして、ここは私のキャリア上の経験則ですが、エリアを本当の意味で広げていくには、パートナービジネスが不可欠です。直販だけで全国を細かく取り切るのは難しいです。エリアの現場に根を張り、顧客との関係性を持つパートナーと一緒に進めることで、初めて浸透していく感覚があります。ビジネスインフラに近づく、という観点でも、ここは避けて通れないテーマです。
ーありがとうございます。最後に、この記事を読んでいる方々へ、メッセージをいただけますか。
佐道ーパートナービジネスは強い営業手法である一方で、どうしても煩雑さやブラックボックス化が起きやすい領域です。だからこそ「整理して、澄ませて、当たり前にしていく」余地があります。プロダクトの性質とマーケットを見て、狙うパートナー像を定めて、プレイヤーと配置を整えていく。その上で、PRMのような仕組みが入ることで、現場が回り始める。そういう順序を意識するだけでも、打ち手の精度は上がると思っています。
また、私たちも、エリアへの浸透を含めて、より多くの企業に価値を届けられる状態に近づけていきたいと思っております。その過程で、これからもパートナーさまのみなさまと一緒に“広がり”を作っていきたいと思います。
ー本日はありがとうございました。
