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ELG(Ecosystem-Led Growth)とは

目次

人口減少による採用難、Web広告費の高騰、そして複雑化する購買プロセス。
今、多くのB2B企業が直面している「直販の限界」を突破し、非連続な成長を実現するための新たな鍵、それがELG(Ecosystem-Led Growth:エコシステム主導型成長)です。

この記事ではELGについて解説していきます。

ELG(Ecosystem-Led Growth)とは

ELGとは

ELG(エコシステム主導型成長)とは、企業単体での成長を目指すのではなく、顧客・パートナー・コミュニティといった「外部エコシステム」全体を価値創造の主軸とし、その共創ネットワークを通じて事業成長を加速させる経営思想のことです 。

これまでのビジネスは、自社のリソース(営業人員や広告費)を投下して、顧客を1社ずつ獲得していく「足し算」のモデルが主流でした。しかしELGは違います。周囲のパートナー企業やユーザーを巻き込み、彼らが御社の製品やサービスの価値を広める「仲間」となって共に売上を作っていく、いわば「掛け算」の成長モデルです 。

具体的には、販売パートナー、導入支援パートナー、技術連携パートナー、そして熱狂的な顧客コミュニティなどが連携し合い、自社だけではリーチできない市場へと価値を届ける仕組みを指します 。単なる「代理店販売」の言い換えではなく、エコシステム全体で顧客にシームレスな体験を提供し、持続的な競争優位性を築く戦略こそがELGなのです 。

ELGが注目されている背景

なぜ今、多くの企業がELGに注目し始めているのでしょうか。その背景には、これまでの「直販(Sales-Led Growth)」中心のモデルだけでは解決できない、深刻な構造的課題があります 。

直販モデルの限界とCPAの高騰

多くの企業が直面しているのが「直販の限界」です。競合激化によりWeb広告などの顧客獲得コスト(CAC)は年々増加し、投資対効果(ROI)は低下の一途をたどっています 。また、自社の営業リソースだけでアプローチできる市場には限りがあり、特に市場のマジョリティ層(全体の約76%を占めるパートナーチャネル経由での流通層)には、直販だけではリーチしきれないという現実があります 。

深刻な人材不足と採用難

日本の生産年齢人口は減少の一途をたどっており、優秀な営業人材の確保は年々困難になっています 。人海戦術で売上を作るモデルは、採用コストの高騰や育成の難易度から維持することが難しくなっており、「小労力で高効率」な成長モデルへの転換が急務となっています 。

B2B購買プロセスの変化

顧客の購買行動も変化しています。かつては営業担当者からの説明が主な情報源でしたが、現代のバイヤーは、既存顧客の評価、パートナーからの推奨、コミュニティでの評判など、「第三者からの信頼できる情報」を重視して意思決定を行います 。企業が一方的に発信するメッセージよりも、エコシステム内での評価が購買を左右するようになったのです。

ELG・SLG・PLGの違い

B2Bビジネスの成長モデルとしてよく比較されるのが、SLG(Sales-Led Growth)とPLG(Product-Led Growth)です。ELGはこれらと対立するものではなく、これらを補完し、さらに加速させる第3のエンジンと言えます。それぞれの違いを整理しましょう。

SLG(Sales-Led Growth:セールス主導型成長)

  • 特徴:営業担当者が顧客と対話し、クロージングを行う従来型のモデルです。
  • 成長ドライバー:「人」の力。営業人員の増加やスキルの向上が成長に直結します。
  • 課題:労働集約型であり、採用難や人件費高騰の影響を受けやすく、スケーラビリティに限界があります。

PLG(Product-Led Growth:プロダクト主導型成長)

  • 特徴:製品そのものの力でユーザーを獲得・定着させるモデルです(例:Zoom, Slackなど)。無料プランなどで体験価値を提供し、有料化へ導きます。
  • 成長ドライバー:「製品」の力。使いやすさや機能性が口コミで広がり成長します。
  • 課題:プロダクトが優れていることが大前提であり、複雑なB2B商材やエンタープライズ向け商材では、人の介在なしに導入が進まないケースがあります。

ELG(Ecosystem-Led Growth:エコシステム主導型成長)

  • 特徴:パートナーや顧客コミュニティと連携し、ネットワーク効果で市場を広げるモデルです 。
  • 成長ドライバー:「信頼」と「ネットワーク」の力。パートナーが自発的に製品を推奨・販売してくれる仕組みを作ります 。
  • メリット:自社リソースを最小限に抑えつつ、パートナーの顧客基盤や信頼を活用して、非連続な成長を実現できます。

これまでSLGやPLGで成長してきた企業であっても、さらなる市場拡大(特にマジョリティ層の攻略)を目指すフェーズでは、ELGを取り入れることが成長の突破口となります 。自社の営業力(SLG)や製品力(PLG)に、パートナーという「仲間」の力(ELG)を掛け合わせることで、最強の成長エンジンを構築できるのです。

「ELG」モデルとは?

ELGモデルの全体像

ELG(Ecosystem-Led Growth)という経営思想を、現場で実行可能なプロセスへと落とし込んだ設計図、それが「ELG Model」です。

多くの企業がパートナービジネスで失敗する原因は、契約そのものをゴールとしてしまい、その後の活動設計が「現場任せ」になっている点にあります。ELG Modelでは、パートナーとの関係性を「点」ではなく「循環するプロセス」として捉え、再現性のある成長サイクルを構築します。

このモデルは、戦略の要となる「プランニング」をベースに、以下の4つの実行プロセスを回す5つのステップで構成されています。

  1. プランニング(Planning): 誰と、なぜ、どう組むかという戦略設計。すべての活動の土台となります。
  2. リクルーティング(Recruiting): 適切なパートナーを選定し、ビジョンと事業計画を合意する契約フェーズです。
  3. オンボーディング(Onboarding): パートナーの現場担当者を「売れる状態」へと育成し、アクティブな担当者を増やすフェーズです。
  4. アクティベーション(Activation): 最初の成功体験(ファースト・ウィン)を作り出し、商談から受注へのプロセスを確立します。
  5. リテンション(Retention): 成果をパートナー組織全体へ横展開し、継続的な収益基盤へと進化させます。

このサイクルが一巡すると、得られたデータや知見をもとに再び「プランニング」へと戻り、戦略をアップデートして次のサイクルを回します。つまり、ELG Modelとは「やりっぱなし」を防ぎ、データに基づいてパートナーと共に成長し続けるための「循環型成長エンジン」なのです 。

プランニング

ELG Modelの最初のステップであり、最も重要なのが「プランニング」です。やみくもにパートナーを増やしても成果は出ません。まずは「WHO(誰と)」「WHY(なぜ)」「HOW(どのように)」という 2W1H のフレームワークを用いて、勝てる戦略の仮説を立てる必要があります。

1. WHO:パートナーターゲティング

「誰と組むべきか」を定義します。単に「売ってくれそうな会社」を選ぶのではなく、以下の3つの親和性を軸にターゲットを選定します 。

  • 顧客の親和性: 自社が狙いたい顧客層と、パートナーが保有する顧客層が重なっているか。
  • 本業との親和性: 自社製品を扱うことが、パートナーの本業(メイン商材やサービス)の価値向上につながるか。
  • パートナーの特徴との親和性: 「質(高単価・コンサル型)」を狙うのか、「量(広域・販売店型)」を狙うのか、自社のフェーズに合っているか。

2. WHY:共創ベネフィットの設計

「なぜパートナーは、数ある商材の中から貴社の製品を売るのか?」という問いへの答えです。ここでの最大のポイントは、手数料(インセンティブ)だけを「売る理由」にしないことです

パートナーにとっての真のメリット(共創ベネフィット)とは、「貴社の製品を担ぐことで、彼らの本業の付加価値が高まること」です。例えば、CRMパートナーであれば「顧客のDX支援の幅が広がる」、コンサルティング会社であれば「提案のフック(ドアノックツール)になる」といった、彼らのビジネスを加速させる文脈を設計することが不可欠です 。

3. HOW:共同販売モデルとパートナープログラム

「どのように売るか」という具体的なプロセスと仕組みを整えます。

共同販売モデル

「いつ、どのようなストーリーで顧客に提案するのか」を設計します。ドアノックとして使うのか、メイン商材とセット販売(クロスセル)するのか、あるいはOEMとして組み込むのか。現場の営業担当者が提案イメージを持てるレベルまで具体化します 。

パートナープログラム

これは単なる条件表ではありません。パートナーが成長するための「カリキュラム」です 。ランク制度を設け、売上金額などの結果指標だけでなく、「認定資格の取得」や「リード登録数」といった行動ベースの中間指標を評価基準に組み込みます。

プランニングは一度作って終わりではありません。実行フェーズ(リクルート~リテンション)で得られたデータをもとに、常に「仮説検証」を繰り返し、ブラッシュアップし続けることが成功への近道です。

リクルーティング

ELGモデルにおけるリクルーティングとは、単にパートナー契約書にハンコをもらう業務ではありません。「自社のプログラムに参画し、共に事業成長を目指す『合意』を取り付けるプロセス」です。

多くの企業が陥る失敗は、契約数社数だけを追ってしまい、「契約はしたものの、その後全く稼働しないパートナー」を大量生産してしまうことです。これを防ぐためには、契約締結の前に以下の4つの合意を形成することが不可欠です。

1. 共創ベネフィットへの合意

まず、「なぜ両社が組むべきなのか」という意義に合意します。自社製品の機能説明に終始するのではなく、「この製品を扱うことで、パートナーの既存事業がどう加速するのか」「エンドユーザーにどのような新しい価値を提供できるのか」というビジョンを共有し、パートナーの経営層や責任者をその気にさせることが出発点です 。

2. 事業目標への合意

ビジョンへの共感だけで終わらせず、具体的な数字へのコミットメントを引き出します。「3年後にこの協業で10億円の事業を作る」といった中長期のゴールを描き、そこから逆算して「初年度はこれくらいの売上を目指しましょう」という定量的な事業計画に合意します

3. パートナープログラム参画への合意

これがELGモデルにおける最重要ポイントです。漠然と「売ってください」とお願いするのではなく、「御社にはこのランクからスタートしていただき、まずは『認定資格の取得』と『リード登録10件』を目指しましょう」といった、具体的な行動計画やパートナープログラムへの合意を取り付けます。 プログラム=パートナーへの「宿題」です。契約前にこの宿題に合意してもらうことで、契約後の「放置」を防ぎ、初動のロケットスタートを確実にします 。

4. 契約条件への合意

最後に、マージン率や支払条件、権利義務などの法的な契約内容を詰めます。多くの企業はここばかりに時間を割きますが、前段の3つの合意が抜けたまま契約書だけ締結しても、そのパートナーシップは形骸化します 。

5.リクルーティングのKPI

このフェーズで追うべきKPIは「新規契約社数」だけではありません。**「パートナープログラムへの参画数(=初期の行動目標に合意したパートナー数)」**こそが、将来の稼働を約束する真の先行指標となります

オンボーディング

パートナー契約の締結はゴールではなく、あくまでスタートラインに過ぎません。多くの企業が陥る失敗は、契約締結後に「パートナーが勝手に売ってくれるだろう」と期待し、放置してしまうことです。オンボーディングの目的は、パートナー企業の現場担当者を「売れる状態」かつ「売りたい状態」へと引き上げることにあります。

決裁者から現場担当者への「橋渡し」

リクルーティング(契約交渉)の相手は経営層や事業責任者といった「決裁者」ですが、実際に商品を売るのは「現場の営業担当者」です。決裁者が事業シナジーに合意していても、現場担当者にとっては「忙しいのに新しい商材が増えて面倒だ」と受け止められることが多々あります 。
オンボーディングの第一歩は、決裁者と合意した熱量を現場へ伝え、現場担当者の個人目標に組み込んでもらうなど、組織として動く動機付け(セットアップ)を行うことです。

「パートナーコンタクト」単位での管理

オンボーディングの成否を握る鍵は、パートナーを「会社単位」ではなく「担当者(パートナーコンタクト)単位」で捉えることにあります 。 パートナー企業の中に、自社製品を扱える担当者が何人いるのかを以下のステージで管理し、「アクティブコンタクト数」をKGI(重要目標達成指標)として追跡します。

  • 潜在コンタクト: パートナー企業に在籍する、提案の可能性がある全営業担当者。
  • 有効コンタクト: 勉強会参加や名刺交換などで連絡先を獲得し、アプローチ可能な状態。
  • 育成コンタクト: 製品トレーニングや認定資格を取得し、提案スキルを持った状態。
  • アクティブコンタクト: 実際にリード登録や商談を行い、稼働している状態。

案件獲得のための勉強会(キックオフ)

初期に行う勉強会は、単なる機能説明の場ではありません。「その場で案件(リード)を登録してもらう場」と定義すべきです。 座学で終わらせるのではなく、勉強会の最後に「思い当たる顧客をリストアップしてもらう時間」を設け、その場でリード登録を促します。これにより、知識の定着と同時に最初のアクションを引き出すことができます 。

アクティベーション

オンボーディングで「売れる準備」が整ったら、次は実際の営業活動を通じて「最初の成功体験」を作ります。パートナーが「この製品は売れる」「顧客に喜ばれる」と実感するまでのスピードが勝負であり、最初の5商談がその商材の今後を決定づけると言っても過言ではありません。

質の高いリードで「勝ち癖」をつける

初期段階で最も避けるべきは、見込みの薄いリードにアプローチして失注を繰り返し、「この商品は売れない」というレッテルを貼られることです。
メーカー側は、過去の受注データに基づき「勝ちやすい顧客条件」を提示し、パートナーが保有する顧客リストから受注確度の高いリードを選別(スクリーニング)する支援を行います 。

リード創出の3つのアプローチ

アクティベーション期には、以下の3つのルートで案件を創出します。

  • パートナーによるリード提出:パートナーの既存顧客リストから、ターゲット合致する企業を掘り起こします。
  • メーカーによるリード提供:メーカーがマーケティングで獲得したリードのうち、直販で対応しきれない案件や地方案件などをパートナーに提供し、初期の商談機会を作ります 。
  • 共同マーケティング:共催ウェビナーやコンテンツ制作を行い、パートナーと共同で新規リードを獲得します。

ハイタッチ支援とアプローチの型化

パートナー任せにせず、初回商談への同行や提案書の作成支援といったハイタッチ(手厚い)支援を行います。同時に、メールのテンプレートやトークスクリプトを提供し、アプローチ業務を「型化」することで、パートナー担当者の心理的ハードルを下げ、行動量を最大化させます 。

リテンション

リテンションとは、一度生まれた成果を継続的な収益基盤へと進化させるフェーズです。特定の担当者による単発の受注(点)を、パートナー組織全体での取り組み(面)へと拡大し、最終的にはパートナー企業内で「事業化」されることを目指します。

成果の「型化」と横展開

最初の受注が生まれたら、なぜ売れたのか(Win分析)、どのような提案が刺さったのかを分析し、成功事例としてドキュメント化します。
さらに、実際に売った担当者を「ヒーロー」として称賛し、その成功体験をパートナー社内の他メンバーへ共有することで、組織全体への横展開を図ります。成果を出した担当者にノベルティを送る「ギフティング」なども、口コミを広げる有効な手段です 。

継続成果のための仕組み化

パートナーとの関係性を維持・強化するために、以下の施策を導入します。

  • 上位認定資格:より高度な専門知識を持つ担当者を認定し、パートナーとしてのステータスを高めます。
  • パートナーヘルススコア:パートナーの稼働状況(ポータルログイン率、リード登録数、資格取得数など)を定量的にモニタリングし、離脱の兆候があれば早期にフォローを行います 。

パートナー企業での「事業化」

最終的なゴールは、パートナー企業の中に貴社製品を扱う専門の部署やプロジェクトチームが立ち上がることです。 ここまで到達すると、メーカー主導の支援がなくともパートナーが自律的に目標設定(共同ビジネス計画)を行い、予算(MDF)を活用してマーケティングから販売、カスタマーサクセスまでを一気通貫で行う「自走状態」が実現します 。これこそが、ELGが目指すエコシステムによる持続的な成長の姿です。

ELG実現の重要施策パートナーマーケティング

パートナーマーケティングとは

パートナーマーケティングとは、パートナー企業を単なる「販売代行業者」として管理するのではなく、「第二の顧客」として捉え、彼らのビジネス成功(サクセス)を支援することで自社の売上を最大化するマーケティング手法です。

従来の日本のB2Bにおける「代理店政策」は、多くの場合、属人的な人間関係(いわゆる“飲みニケーション”)や、一律の販売手数料設定に依存してきました。しかし、パートナーマーケティングはこれだけではなく、チャネル活動を「科学」する活動を指します。

具体的には、以下の3つの視点を統合した活動を指します。

  1. To Partner(パートナーへのマーケティング): パートナー企業に対して自社製品の魅力を伝え、「扱いたい」「売りたい」と思わせる動機付けを行います。パートナーのマインドシェアを奪うための活動です。
  2. Through Partner(パートナーを通じたマーケティング): パートナーがエンドユーザーに提案しやすくするためのツール提供、リードの提供、販売スキルの教育(パートナーイネーブルメント)を行い、彼らの販売活動を支援します。
  3. With Partner(パートナーとの共同マーケティング): 互いの強みを活かした共催ウェビナーや、共同ソリューションの開発など、1社では実現できない価値を市場に問いかけます。

つまり、パートナーマーケティングとは「売ってください」とお願いすることではなく、「一緒に売るための仕組み」をメーカーから提供し、パートナーを勝たせる戦略そのものなのです。

パートナーマーケティングの考え方の具体例

では、具体的にどのように思考や行動を変えればよいのでしょうか。従来の代理店営業と比較しながら、ELGを成功させるための実践的な考え方を3つ紹介します。

「御用聞き」から「データドリブンな支援」へ

従来のパートナー営業は、足繁くパートナー先を訪問し、「何か案件ありませんか?」と聞く“御用聞き”になりがちでした。しかし、これは非効率であり、パートナーにとっても負担です。 パートナーマーケティングでは、PRMツールなどを活用し、パートナーの行動データを可視化します。「誰が資料をダウンロードしたか」「誰が認定資格を取ったか」を把握し、興味関心が高まっているタイミングで適切なフォローを行います。勘や経験ではなく、データに基づいて支援の優先順位を決めるのです。

「結果への報酬」から「行動へのインセンティブ」へ

多くの企業は「成約」という結果に対してのみインセンティブ(手数料)を支払います。しかし、まだ実績のないパートナーにとって、成約のハードルは高く、そこに到達する前にモチベーションが枯渇してしまいます。
パートナーマーケティングの考え方では、成約に至るまでの「中間指標」を評価します。
例えば、「勉強会に参加したらギフト券」「リード情報を登録したらボーナス」「認定資格を取得したらランクアップ」といったように、売れるための正しい行動に対してインセンティブを設計することで、パートナーを「小さな成功体験」へと導き、最終的な成約確率を高めます。

販促物のバラ撒き」から「Co-Marketing(共同戦線)」へ

「チラシを作ったので配ってください」と一方的に販促物を送りつけるだけでは、パートナーは動きません。パートナーの顧客層に刺さるメッセージは、パートナー自身が一番よく知っています。
パートナーマーケティングでは、MDF(市場開発資金)と呼ばれる予算を用意し、パートナーが企画するセミナーやキャンペーンに資金を提供したり、メーカー側のマーケティング部隊がパートナーと組んで「共同ウェビナー」を開催したりします。 メーカーが主体となってリードを獲得し、それをパートナーにトスアップしてクロージングしてもらうといった、「案件を創って渡す」レベルまで踏み込むことが、現代のパートナー連携の勝ち筋です。

ELGを実現する事例

ここでは、日本のB2B市場において、ELG(Ecosystem-Led Growth)の概念を体現し、圧倒的な成長を遂げた3つの具体的な事例を紹介します。それぞれの事例が、ELGのどの要素を成功させたのか、その要諦を深掘りします。

LINE WORKS

ビジネスチャット市場で圧倒的なシェアを誇る「LINE WORKS」。その急成長の裏側には、徹底したパートナーエコシステムの構築がありました。

国内SaaS最速でのARR100億円達成

LINE WORKSは、サービスリリースから短期間でARR100億円を突破しました。これは当時、国内SaaSとして最速の記録です 。この驚異的なスピードを実現した最大の要因は、直販部隊の拡大ではなく、パートナービジネスの立ち上げと強化にありました。初期段階からパートナーエコシステムの構築に注力し、ARRゼロ円から130億円規模への成長をパートナーチャネルが牽引しました。

「面」を取るためのエコシステム

LINE WORKSが成功したポイントは、単に「販売代理店」を増やしたことではありません。IT商社、通信キャリア、地域に根差したSIerなど、多様なパートナーと連携することで、直販だけではリーチできない「マジョリティ層」へ一気にアプローチする「面」の展開を実現しました。これは、自社のリソース制約を超えて市場を網羅する、ELGの「レバレッジ効果」を体現した典型例と言えます。

セーフィー

クラウド録画サービスでシェアNo.1を誇る「セーフィー(Safie)」は、スタートアップが大企業とどのように渡り合い、市場を制圧するかという点において、ELGの教科書とも言える戦略を実行しています。

セーフィーの売上高の60%近くは、パートナー企業から生まれています。彼らは1社1社を口説き落とし、自社のファン(パートナー)に変えていくことで市場シェアを拡大しました 。

セーフィーの勝因は、市場の主要プレイヤーを「競合」ではなく「共創パートナー」として定義したことにあります。彼らは、防犯カメラ市場における商流を分析し、「警備会社」「通信キャリア」「デバイスメーカー」「建物設備(ビル管理)」の4つを、市場を面で押さえるための「オセロの四隅(キープレイヤー)」と定義しました 。 これら大資本の企業と真っ向勝負するのではなく、彼らのビジネスにセーフィーのクラウド録画機能を組み込んでもらう(OEMや共同ソリューション化する)ことで、パートナーの顧客基盤をそのまま自社の成長エンジンへと転換させました 。これは、プランニングにおける「WHO(誰と組むか)」と「WHY(共創ベネフィット)」の設計がいかに重要かを証明しています。

パートナープロップ

最後に、ELGの実践を支援する「PartnerProp」自身の事例を紹介します。彼らは、まだ市場にない新しい概念を浸透させるために、強力なパートナーとの「共同マーケティング(Co-Marketing)」を活用しました。具体的には、大手コンサル会社やCRMパートナーと共同で「直販×間接販売」という新たなカテゴリーを提唱し、ホワイトペーパーの共同制作、専用LPの開設、SNS広告の共同運用などを展開しました 。 ベンチャー企業単独では信頼獲得や市場啓蒙に時間がかかりますが、業界のリーダー企業と組むことで、その「信頼」と「ブランド力」を借り、短期間で認知を獲得することに成功しました。これは、単に商品を売ってもらうだけでなく、「市場そのものをパートナーと共に創り出す」という、ELGにおけるマーケティング活動の好例です。

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