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渋谷由貴氏(写真右)
日本オラクル株式会社
執行役員 NetSuite事業統括 日本代表 カントリーマネージャー
日本担当役員として、日本におけるビジネスの成長とカスタマー・サクセスの推進をミッションとして、日本における営業戦略とオペレーションの推進を担当。富士通、三井物産でのセールス経験を経て、日本マイクロソフト、日本オラクルでマーケティング、ビジネスディベロップメント、セールスマネジメントを歴任。DomoでのVP、AWSでのエンタープライズクラウドセールス統括経験を経て、2023年7月より現職。
持田卓臣氏(写真左)
株式会社ベンチャーネット 代表取締役
早稲田大学卒業後、ヒューレット・パッカード社にてITコンサルタントとして、基幹システムや業務改革プロジェクトに従事。2005年に株式会社ベンチャーネットを創業。創業以来20年にわたり、「システム導入をゴールにしない」ことを一貫した経営思想とし、クライアントの課題がどの領域であっても、バリューチェーンの中で最もフィットするソリューションを紹介し続けてきた。
現在は、NetSuiteのソリューションプロバイダーとして、中堅・中小企業の経営課題に寄り添い、「見える化・わかる化・儲かる化」によるコーポレートトランスフォーメーションを実現するための伴走型DX支援を推進。さらに、パートナーエコシステムの構築を通じて、「強い中堅企業・中小企業」づくりに取り組んでいる。
世界No.1クラウドERP、NetSuiteの「今」
ーNetSuiteについて教えてください。
渋谷 NetSuiteは25年以上の実績を持つ、世界初かつ世界No.1のクラウドERPです。財務会計、CRM、Eコマースといった主要業務を一つのデータで一元管理しているのが最大の強みです。私自身、NetSuiteは「AIを搭載した経営のバディ」だと考えています。
ーAIの観点で、他のERPとの違いはどこにありますか。
渋谷 AIの精度はデータの質に大きく左右されます。多くのERPではバラバラになっているデータをまず統合するところから始めなければなりませんが、NetSuiteは単一のデータモデルで業務全体が最初から繋がっている設計です。あらゆるデータが常にリアルタイムで統合されている。これは本当に何にも勝る強みだと考えています。
加えて、オラクルのデータベースはアメリカの政府や軍、日本政府にもご利用いただいている世界最高クラスの基盤です。その上で稼働するAIを組み込んだプラットフォームであるという点は、ERPの機能詳細以上に大きな差別化ポイントです。これほどの規模でAIに投資できる企業は、世界の中でもほとんど見当たりません。
実はAIへの取り組みは最近始まった話ではなく、2018年に「インテリジェントスイート」の開発を発表しています。AIと機械学習でソフトウェアの機能を強化するという取り組みで、そこからずっと積み上げてきた結果が今の「AI is Everywhere」です。あらゆる業務領域でAI機能を投資・提供していく方針を掲げています。

ーパートナーにとってのAIのメリットはどのような点ですか。
渋谷 パートナー様にとっても、私たちと組むことによって、AI基盤を一から構築しなくてもAIに投資していることになります。これは非常に大きなメリットだと考えています。
さらに、NetSuiteは拡張可能なプラットフォームでもあります。標準の中で多くのAIのユースケースを提供していますが、その上でパートナーの皆様が独自のAI機能や業界のテンプレートを追加していただくことができます。標準で素早く立ち上げて、拡張でよりお客様のニーズに合ったものを差別化して横展開する。そういったモデルが取りやすいプラットフォームになっています。
ーAI以外に強みはありますでしょうか
渋谷 私たちは「レッドウッドデザイン」と呼んでいるのですが、直感的なUI/UXであることを大事にしています。例えば、iPhoneはマニュアルが必要ないかと思いますが、NetSuiteもマニュアルがなくても直感的に操作できる世界観でデザインされています。その結果として現場の定着が進みますし、SIとしても導入後の活用や価値創出まで含めた提案がしやすくなるのではないかと考えています。
「パートナービジネスは全て」——オラクルが本気で投資する理由
ーパートナービジネスはNetSuite事業の中でどのような位置づけですか。
渋谷 一言で言うと、パートナービジネスは全てです。約3年前にNetSuite事業統括に着任した際、皆さんにお約束したことの一つが、パートナービジネスの成長拡大でした。
ーそこまで言い切る背景を教えてください。
渋谷 まず市場の話をさせてください。アメリカでは成長企業・スタートアップの7割強がNetSuiteユーザーです。「上場するならNetSuite」という認識が、もはやデフォルトとなっています。
一方で、日本の中堅中小企業は400万社あります。ERPをまだ導入していない企業はもちろん、会計ソフトだけ使っていてそれがERPだと思っていらっしゃる企業も含めると、まだまだ巨大なホワイトスペースがあります。
ありがたいことに案件数は増えてきていますし、その規模も拡大しています。ただ、需要の伸びに対して、導入をサポートできる人材リソースと体制がまだ十分とは言えない状況です。だからこそ、パートナー様の支援を通じて導入体制を強化することが、私たちにとって最大の成長戦略です。

ー需要に対して供給が追いついていないということですね。
渋谷 はい。しかもここ最近、「2025年の崖」を過ぎて、検討フェーズの長かった日本の企業がようやく本格導入に動き出しているタイミングです。お客様が「待ったなし」になってきている。長くお付き合いすることが大事だという一方で、このモメンタムは、そこまで長くは続かないと思っています。今がまさにそのタイミングです。
また、日本では大企業が海外拠点やグループ会社にNetSuiteを導入する「Two-Tier ERP」の利用も増えてきています。本社では既存のERPを使いつつ、海外拠点ではNetSuiteを素早く安く導入するモデルです。ターゲットの幅は、皆様が思っている以上に広いと感じています。
試して、良かった、だから扱う
ーベンチャーネットさんにもお伺いします、なぜNetSuiteを選ばれたのでしょうか。
持田 私のスタンスは「面白いと思ったら、まず自分で試す」です。NetSuiteも自社で導入して、実際に経営に使い、その良さを確信してから扱い始めました。
NetSuiteが中堅中小企業に最適だと確信している理由は二つあります。一つは経営のモダナイズ。20年前から使っている古いシステムがそのまま動いている企業がまだまだ多いです。もう一つは「勘から確信への転換」です。日本の多くの中小企業では経営判断が経営者の勘に依存していて、再現性がありません。AIを活用した高度な分析やカスタマイズで、経営判断の質が変わります。
ーお客様の経営をどう変えるのか、具体的に教えてください。
持田 3つのステップです。ステップ1が「見える化」。月次の締めを待たず、経営者も現場も同じダッシュボードで今の数字を見られるようにします。バラバラなエクセルが統合され、全社で一つのデータを共有できるようになります。
ステップ2が「わかる化」。数字が見えるだけでは不十分です。部門ごと、プロジェクトごとの採算が誰でも読める形にする。数字の言語が社内で揃うことが、何よりも大事です。
ステップ3が「儲かる化」。経験や勘ではなく、データに裏付けされた経営判断ができるようになります。AI活用の土台も整い、組織の競争力が持続的に上がっていく仕組みを作ります。
見える化が入り口、わかる化で組織に浸透させ、儲かる化で経営成果につなげる。この一連の流れをNetSuiteの導入から運用まで一気通貫で伴走するのがベンチャーネットです。
「気づいているのに届けられない」——エコシステム構想の出発点
ーベンチャーネットが独自のパートナーエコシステムを構築する背景を教えてください。
持田 よくある話だと思うのですが、こういった場面に心当たりはないでしょうか。
会計士・税理士の方。顧問先のエクセル管理が限界に来ている。月次が毎回遅れている。でも「ERPの提案は自分の領域ではない」と感じて踏み込めずにいる。
経営コンサル・M&Aの方。業務改革は提案した。しかし基幹システムがボトルネックになって改革が止まっている。システムの話になった瞬間、手が動かなくなる。
IT企業の方。基幹刷新の相談が来た。課題も見えている。でも自社にERP体制がない。年に数件のために専門チームは持てない。結局、案件を見送った。
この「気づいているのに届けられない」という経験が、エコシステムを作った出発点です。
ー顧客はERPそのものを探しているわけではないと。
持田 おっしゃる通りです。お客様はERPを探しているわけではありません。経営課題を解決したいだけです。成長して多拠点化した、M&Aで買収後の統合が必要になった、上場準備でJ-SOXや内部統制が求められている、人材不足だけどなんとかDXを進めたい。入り口はさまざまです。
そして、こうした経営課題にいち早く気づけるのは、普段からそのお客様と関係を持っているパートナー企業だけです。私たちは信頼できるメンバーでバリューチェーンをつないでいきたいと思っています。
ーエコシステムの全体像を教えてください。

持田 一番下にNetSuiteがあります。ライセンス契約とR&Dの基盤です。その上にベンチャーネットが一次代理店として、商談支援・導入支援・運用支援を行います。AI活用で導入コスト削減も実現していきます。
その上に紹介パートナーがいます。ライフイベント型として会計士・税理士、M&A・事業承継、経営コンサル。システム課題型としてIT企業。認知拡大型として営業代行。五つの類型です。
そして一番上にお客様。売上30億〜500億の製造・卸・小売・IT企業です。重要なのは、パートナー様は紹介に専念できるということ。技術知識は不要です。体制構築のコストも必要ありません。
技術知識は不要——パートナーの役割は「届ける」こと
ーパートナーの具体的な役割を教えてください。
持田 皆様の役割は「気づくこと」と「届けること」です。お客様の経営課題に日常的に触れている皆様だからこそ、最初に届けられます。技術の話は一切不要です。あなたの言葉で「一緒に取り組める仲間がいます」と顧客に声をかけていただくだけです。そこから先は全て私たちが伴走します。デモ、要件定義、導入、カスタマイズ、運用支援まで全てベンチャーネットが担当いたします。
そして一つはっきりお伝えしたいことがあります。担当者の顔が見えない不安はありません。私が直接お付き合いします。紹介後の商談進捗は都度パートナー様にご報告いたします。
ー紹介から報酬までの流れを教えてください。
持田 五つのステップです。ステップ1、パートナーの皆様から顧客情報を送っていただきます。ステップ2、私たちが一次ヒアリングを行い課題を整理します。NetSuiteがフィットするかどうかをここで判断します。フィットしなければ正直にお伝えします。ステップ3がデモと提案。ここがポイントです。90分のデモでお客様が自社で運用するイメージを描いていただきます。ステップ4、ライセンス見積もり・契約。ここはオラクル営業担当者様のお仕事です。ステップ5、パートナーへの報酬還元です。
いずれも登録費・年間費はゼロ。報酬は初年度ライセンスの25%です。
ーオラクル公式のパートナープログラムとの違いはどこにありますか。
渋谷 オラクルのパートナープログラムは大きく三つあります。ソリューションプロバイダー、アライアンスパートナー、SuiteCloud Developer。ソリューションプロバイダーが一番強力なパターンで、ライセンス販売からプリセールス、実装まで一貫してやっていただくものですが、メンバーシップフィーが数百万円かかります。すぐに元が取れると思ってはいますが、なかなかのハードルです。
ベンチャーネットさんのエコシステムは、紹介だけでOKという手軽さはそのままに、報酬は初年度ライセンスの25%。オラクル公式のリファーラルプログラム(紹介制度)が10%であることを考えると、まさに“いいとこ取り”ですね。

ー課題がNetSuiteに合わない場合はどうされますか。
持田 よりフィットするソリューションをご紹介します。私たちは15年以上、さまざまなソリューションのパートナーとして活動してきました。クライアントの課題を聞いて、それがNetSuiteではなくSFAの領域だと感じたら、そちらを紹介します。
ソリューションを”点”ではなく“バリューチェーン”の中に位置づけて考えています。相手の課題がどの領域であっても、最適な答えに繋げられるようにすることが重要です。NetSuiteだけを売るスタンスを取らないことが、結果的にお客様からの信頼につながっていると感じています。
「三方良し」——全員がうまくいく形だけを目指す
ーパートナーとの関係構築で最も大切にしていることは何ですか。
持田 パートナーの皆様への四つの約束があります。一つ目、フィットしないものは正直にお伝えします。二つ目、紹介パートナーの信頼を絶対に損ないません。三つ目、すぐに売れなくても長く付き合います。四つ目、あなたのビジネスを理解してから一緒に動きます。皆さんの強みが生きる形を一緒に考えます。大手ベンダーとの一番の違いはここだと思っています。

ー「紹介パートナーの信頼を損なわない」という点を詳しく教えてください。
持田 もし紹介先のお客様から「なぜあの会社を紹介されたのですか」と思われてしまったら、紹介してくださったパートナー様の信頼まで損なってしまいます。こうなると、次の紹介は絶対に生まれません。紹介してくださったパートナー様が不安になるような体験を、絶対につくらないこと。これが最も大切にしていることです。
ERPは導入の意思決定が頻繁に起きるものではありません。数年単位で検討されることも多いですし、長期的な関係構築が必要です。無理して営業をしても結果が出ない構造なので、信頼を前提に丁寧に積み上げていくしかないと思っています。
ー「三方良し」の構造について教えてください。

持田 誰かが損をする仕組みは長続きしません。全員がうまくいく形だけを目指します。
パートナーの皆様にとっては、既存顧客との関係がより深くなります。紹介手数料は新たな収益源になります。お客様にとっては、信頼できる相談相手が伴走してくれて、業務理解に基づいた設計・導入が受けられます。経営のモダナイズと可視化が進み、継続的な経営改善支援が受けられます。ベンチャーネットにとっては、パートナー様の目でスクリーニングされた質の高い案件をいただけるようになります。
ーエコシステムに参加すると、パートナー自身にはどのような変化がありますか。
持田 報酬やメリットとは別の話をさせてください。このエコシステムに参加することで、パートナーの皆様は自身の役割を大きく拡大することができます。
今はこういう状態ではないでしょうか。顧客の課題に気づいていても、自社だけでは解決策を提示できない。他者との差別化が難しく、価格競争に巻き込まれやすい。顧客との関係が作業レベルにとどまっていて、経営の相談相手になれていない。
エコシステムに参加した後は、顧客の課題に対して信頼できるチームと一緒に解決策を届けられるようになります。経営基盤の相談もできる専門家として競合と差別化できます。顧客との関係が経営レベルに上がり、長期的な信頼につながります。
ー良いパートナー関係を築くために、パートナー側に求めることはありますか。
持田 良いパートナー様は、売る側のタイミングとビジネスモデルをちゃんと理解してくれて、待っていただくことができます。ERPは全部署と役員サイドで幅広く話が必要になりますし、お客様も1年から1年半かけて導入していきます。まだ関係性が成熟していない中でお尻を叩かれてしまうケースは、正直非常にもったいないと思っています。中長期の時間軸で握りながら、一緒に動けるパートナー様が理想です。
苦戦されるパートナー様には、一緒に資料を作ったり商談に同席させていただいたりすることを積極的にやっております。最初は感覚を掴むまで難しい部分がありますし、一つ一つの商談が非常に重要ですので、準備を丁寧にやっていくことが大切だと考えています。
「強い中堅企業・中小企業」を増やすために
ーパートナーとしてERP市場に参入することへの不安はないでしょうか。
持田 「SaaS is dead」なのか、「SaaS is not dead」なのかよくわからない中で、皆さんも私も含めて不安感がある中でビジネスを進めていると思います。ただ、ERPはITのSaaS製品の中でも一番根幹を支えるものだと考えています。ERPすらもAIでリプレイスされたらIT業界が消滅するのではないでしょうか。ERPは最後の最後まで残るだろうし、これからも発展していくだろうと思っています。
もちろん、いきなり飛び込むのは大変だと思いますので、弊社や今のお客様の事例を勉強しながら、参考になる部分を見つけていただいて、一緒に市場を開拓できればと思っています。

ー最後に、今後の展望を教えてください。
持田 目指しているのは、「強い中堅企業・中小企業がもっと増えていく環境を作る」ことです。各カテゴリのNo.1になる企業を一緒に生み出していきたい。それに挑戦する企業が、必要な時に必要なタイミングでアクセスできるエコシステムをパートナーの仕組みを通じて実現したいと思っています。
そしてもう一つ。AIが進化するほど、皆様の役割はなくなるのではなく、むしろ重要になります。作業はAIに任せて、皆さんは経営者の判断を支える専門家として顧客に向き合えるようになります。これが私がパートナーの皆様と一緒に走りたい理由です。
ー渋谷さんからも、参画を検討されている方にメッセージをいただけますか。
渋谷 オラクルのAI投資は非常に大きく、日本企業が単独で同じ規模を実現するのは、簡単ではありません。AIによる変革の最先端で一緒にビジネスを変える瞬間に立ち会えるということは、非常に大きなメリットだと思っています。
市場が温まっていて案件数も増えている。2025年の崖を過ぎて、日本のお客様がようやく本格導入に動き出しているタイミングです。そしてベンチャーネットさんのエコシステムはメンバーシップフィーがゼロ。これだけ条件が揃っている今、何を躊躇する理由があるかなと思ってしまうほどです。フィーなしがいつまで続くかは正直わかりません。本当に今しかないのではないかと思います。
持田 少しでも中堅・中小企業のコーポレートトランスフォーメーションにご興味がある方は、ぜひ一度お話しさせていただきたいと思っています。すぐに何かを始める前提ではなく、まずは情報交換からでも大歓迎です。お客様の成長を一番に考えるという価値観を共有できる方々と、一緒に走っていきたいと思っています。
ー本日はありがとうございました。
今回のインタビューで印象的だったのは、ベンダーであるオラクルが直接パートナーを募集するのではなく、パートナーであるベンチャーネットが新たなパートナーを募集するという座組の特殊性だ。技術的なハードルをベンチャーネットが吸収し、紹介パートナーは「気づくこと」と「届けること」に専念できる。この構造により、会計士や経営コンサルタントといったIT以外のプレイヤーにもエコシステムの門戸が開かれている。
パートナーがパートナーを育てるモデルは、ベンダー主導のプログラムでは届かない層にリーチできる可能性を秘めている。パートナービジネスの新しい座組を模索している方にとって、一つの参考事例になるのではないだろうか。
ベンチャーネットではパートナー企業を募集中です。 NetSuiteを軸にしたエコシステムにご興味がある方は、お気軽にお問い合わせください。
https://www.venture-net.co.jp/netsuite/lp/netsuite-aliance
こんな方におすすめです
- 顧問先の経営課題に、もう一歩踏み込みたい会計士・税理士などの士業の方
- M&Aや事業承継コンサルティングに携わっている方
- 経営コンサルティングをされている方
- IT企業で、基幹刷新の相談は来るがERP体制を持てていない方