パートナーサクセスは、海外ではすでにパートナービジネスにおいて重要な概念になっています。しかし、日本ではまだ主流ではないため、パートナーサクセスを達成するために具体的にどのような施策を行うと良いのか、分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、そんな読者のみなさんに向けて、パートナーサクセス達成のために具体的に何をすればよいのか、次のポイントで解説していきます。
- パートナーサクセスとは何か
- パートナーサクセスの考え方
- 達成のための具体的な施策
- パートナーサクセスの事例
パートナーサクセスとは?どのような施策が有効?
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パートナーサクセスとは、代理店などのビジネスパートナーとともに成功を追求するプロセスです。ビジネスにおける成功というと、利益を上げることをイメージされる方が多いと思いますが、パートナーサクセスの「成功」は、より広い意味での成功を指します。
たとえば、パートナーとの良好な関係を構築・維持することや、顧客に対する認知度やイメージの向上、企業や従業員の成長などがそれにあたります。
このようなビジネススタイルは、日本ではまだあまり主流ではないので、パートナーサクセスを目指そうとしても、そのために何に気をつければ良いのか、具体的に何をすれば良いのか、わからない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、パートナーサクセスのための基本的な考え方と具体的な施策を紹介していきます。
パートナーサクセスについて詳しくは次の記事で解説しています。↓
パートナーサクセス(Partner Success)とは、企業が取引先や協力企業と共に成長を目指す戦略のことです。単に売上を上げるだけではなく、相互の信頼と協力に基づいて、共同で価値を創造し、収益を最大化するプロセスを意味します。 […]
パートナーサクセスの考え方
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まず、パートナーサクセス達成のために心がけるべきポイントを紹介します。成功事例に共通して言えるのは、パートナー企業と長期的に良好な関係を築き、新たな価値を創出していることです。そのためには、次のようなポイントを抑えると良いでしょう。
- 自分の企業にはない知識・技術・顧客をもつパートナー企業を選ぶ
- 共通の目標を持って製品やサービスの開発に取り組めるパートナー企業を選ぶ
- お互いの長所を組み合わせた新たな製品やサービスを創出する
- 長期的な関係を築くための信頼関係を構築する
- 相手企業を深く理解し、協力する
つまり、自社に合ったパートナー企業を選び、選んだパートナーと良好な関係を構築し、その関係を維持することが重要と言えます。ここからは、パートナーの選定、関係構築、関係の維持に分けて、具体的な施策を紹介します。
パートナーサクセスに有効な施策①:パートナー選定編
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パートナーサクセスを達成するためには、自社に合ったパートナーを選定することが非常に大切です。適切なパートナーを選定するために、具体的には次のような施策が有効です。
- 自社の分析をする
- 自社に合うパートナー企業の条件を考える
- お互いに利益を得られる共同事業を考える
①自社の分析をする
自社に合ったパートナー企業を選ぶために、まずは自社についてよく理解することが大切になります。
自社のもつ知識や技術、自社が影響力をもつ市場、人材や資金力などのリソースの有無、商品やサービスなどに関して、長所や短所を分析しましょう。また、自社の事業の目標や目指すものを明確にすることも大切です。
②自社に合うパートナー企業の条件を考える
パートナー候補となる企業を探す前に、パートナー企業に求める条件も明確にしておきましょう。自社の分析をもとに、次のことに注意して条件を考えることで、自社と相性の良いパートナー企業を選ぶことができます。
- 自社の長所を相手企業に価値として提供できるか
- 自社の短所や欠点・不足するリソースなどを補えるか
- 自社と目標が合致しているか
自社の長所を苦手とし、逆に自社の短所を長所として補ってくれるようなパートナー企業であれば、お互いに価値を提供しあうことができます。また、良好なパートナー関係を築くためには、目標が一致していることも大切です。
③お互いに利益を得られる共同事業を考える
上記のパートナー企業の条件をもとに、パートナー候補となる企業のリサーチ、絞り込みを行ったら、その企業に提案する共同事業を考えましょう。
上でも見た通り、パートナーサクセスを達成するためには、お互いの長所をもとに新たな価値を創出することが大切です。自社とパートナー候補の長所を組み合わせることで生じる今までにない価値を、パートナー契約のメリットとしてパートナー候補の企業に提案しましょう。
パートナーサクセスに有効な施策②:パートナーとの関係構築
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適切なパートナーを選択できたとしても、そのパートナーと良好な関係が築けなければ元も子もありません。長期的に良好な関係を築く最初のステップとして、パートナー契約の提案から、最初に関係を構築していくまでのステップも重要になります。
そのためには、次のような施策を行いましょう。
- パートナー契約の目的のすり合わせを行い、目標を明確にする
- パートナー企業を理解する
- パートナーサクセスマネージャーなどの担当者を設置する
①パートナー契約の目的のすり合わせを行い、目標を明確にする
パートナー契約の目的やパートナーとの共同事業案は、パートナー候補に契約の提案を行うまでにあらかじめ考えておくべきことです。
しかし、パートナーサクセスにおけるパートナーとの関係は、元請け・下請けのような単純なものではありません。こちらから一方的に提案するのではなく、相手企業と契約条件や目的・事業計画のすり合わせを行い、お互いが納得した形で契約を結ぶことが大切です。
また、契約時に定めたこれらの条件、目的、事業計画などは、今後齟齬が生じないよう明確にしておきましょう。
②パートナー企業を理解する
パートナー企業と良好な関係を築き、今後魅力的な共同事業を立案していくためには、パートナー企業をよく理解していることが大切です。パートナー契約を結んだ企業の強みや、不足している点、目標や計画中の事業、商品やサービスの特徴などについて、改めて理解を深めていきましょう。
逆に自社のことを知ってもらうために、初期の段階でミーティングや勉強会などを十分に実施することも大切です。
③パートナーサクセスマネージャーなどの担当者を設置する
パートナー企業との良好な関係を維持するためには、こまめなコミュニケーションが大切です。そのために、パートナーサクセスマネージャーなどの専門の担当者を早めに設置しましょう。
担当者がいれば、パートナー企業や契約に関して正確に把握し、こまめな連絡や確認をすることができます。逆に担当者が不在の状態が長く続いてしまうと、伝達ミスや確認漏れなどのトラブルが起こりやすくなってしまいます。
また、パートナー企業や契約についての理解という意味でも、担当者を設置することには大きなメリットがあるのです。
パートナーサクセスマネージャーについては、こちらの記事で詳しく解説しています。↓
パートナーサクセスという概念自体が最近ようやく浸透してきた日本では、パートナーサクセスマネージャーという職種もまだ主流ではないかもしれません。しかし、パートナー事業を成功に導くためには、専門の担当者としてパートナーサクセスマネージャーを設[…]
パートナーサクセスに有効な施策③:パートナーとの関係維持
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パートナーサクセスでは、パートナーと長く良好な関係を築くということも重要な要素です。一度築いた関係を長期的に保つためには、次のような施策が有効です。
- 定期的なコミュニケーションの場を設ける
- パートナー企業に歩み寄り、積極的に価値を提供する
①定期的なコミュニケーションの場を設ける
パートナー企業と自社は、あくまで独立した別々の企業です。最初は同じ目標を見据えることができていても、時間が経つにつれて目指すものが少しずつずれて来るということは、人間関係などでもよくある話ですよね。
パートナー企業と長期的な関係を築くためには、共通の目標を持ち続けられるようにすることが大切です。そのためには、定期的なミーティングを行うなど、こまめにコミュニケーションや情報共有の場を設け、お互いの状況を把握しあい、すりあわせを行うことが大切です。また、これは共同事業を円滑に進めるためにも重要なことになります。
②パートナー企業に歩み寄り、積極的に価値を提供する
長期的なパートナーサクセスを達成している事例では、お互いの企業が相手のメリットになるような施策を行うなど、積極的に価値を提供しようとしています。このような施策として、具体的には以下のようなものが挙げられます。
- パートナー企業と相性の良い自社製品の開発
- パートナー企業の優遇
- セミナーや勉強会の開催
- 営業同行などの営業サポート
こちらから積極的に与えていくことで、お互いに与え合う理想的なパートナー関係を築くことができるでしょう。
パートナーサクセスの施策が成功した事例
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ここからは、上でご紹介したような施策を行っているパートナーサクセスの事例を紹介していきます。事例を紹介する企業は以下の5つです。どれも日本で最も成果を上げているSaaS企業であり、パートナー事業に力を入れているのが特徴です。
- カオナビ
- インフォマート
- プラスアルファ・コンサルティング
- セーフィー
- プレイド
こちらの記事では、パートナーサクセスの他の事例も紹介しています↓
みなさんは、パートナーサクセスと聞いてどのようなイメージが浮かぶでしょうか。パートナーサクセスは海外では重要な概念の一つですが、日本ではまだ浸透していないため、具体的なイメージがわかない方も多いと思います。 この記事では、パートナー[…]
事例①カオナビ
提供:カオナビ
クラウド人材管理システム「カオナビ」を提供しているカオナビは、自社システムの代理販売・紹介を行う企業とパートナー契約を結ぶ、「セールスパートナー制度」を実施しています。
カオナビのパートナー制度では、学習のための資料・動画・勉強会や営業同行などのパートナー企業の人材育成制度が整っていることが特徴です。また、多くのパートナー企業と契約しているカオナビですが、メールマガジンなどを活用しながら、こまめな情報共有も行っています。パートナーとの関係構築、関係維持にともに力を入れていると言えます。
事例②インフォマート
提供:インフォマート
企業間電子商取引プラットフォームを運営するインフォマートは、自社製品の販売・紹介を行う企業とパートナー契約を結ぶ、パートナープログラムを実施しています。
インフォマートのパートナープログラムの特徴は、パートナー企業との初期の関係構築を非常に丁寧に行っていることです。契約から半年ほどかけて、打ち合わせ、勉強会、ヒアリングなどを行い、お互いの企業の理解を深められるよう工夫しています。
事例③プラスアルファ・コンサルティング
提供:プラスアルファ・コンサルティング
人事管理システム「タレントパレット」などを提供しているプラスアルファ・コンサルティングは、その販売・紹介を行う企業とパートナー契約を結ぶ制度を実施しています。
パートナー企業はコンサルティング企業が多く、プラスアルファ・コンサルティングのシステムをパートナー企業がコンサルティングの一環として提案するという形で、互いの長所を活かした価値を提供することに成功しています。自社に合ったパートナーを選定し、お互いに利益を得られる事業を実施していると言えます。
事例④セーフィー
提供:セーフィー
クラウド録画サービス「Safie」を運営しているセーフィーは、自社のカメラとSafieをセットで販売する企業とのパートナー契約を結ぶ形で、サービスの販売を行っています。
セーフィーは「パートナー営業本部」という専門部門を設置しており、新規パートナーへの営業やサポートに力を入れています。パートナー企業とともに、クライアント企業へのカメラ導入のための調整現場に立ち会うこともあるようです。
「Safie」はパートナー経由の売り上げが全体の6割を占めており、パートナー事業の成功が見て取れます。パートナーに積極的に協力していくことで、良好な関係を維持できていると言えるでしょう。
事例⑤プレイド
提供:プレイド
CXプラットフォーム「KARTE」を運営するプレイドは、そのサービスの紹介や運営支援をする企業とパートナー契約を結ぶ「KARTE Partner Accelerate Program」を実施しており、パートナーに対する優遇制度が充実していることが大きな特徴です。優遇制度には例えば以下のようなものがあります。
- プレイドからの案件紹介
- サブライセンス提供などの共同事業の推進
- 製品の最新情報、機能の先行公開
- 共同マーケティング支援
- 専門チームによるサポート
- 学習コンテンツの提供
一方的に自社製品のサポートをしてもらう関係にとどめるのではなく、パートナー企業にも金銭以外の大きなメリットが生じるような工夫が見られます。お互いに利益を得られるようなパートナープログラムを策定できていると言えます。
まとめ
パートナーサクセスにおける成功とは、パートナー企業がお互いに金銭的利益を超えた様々なメリットを享受することを意味します。
そのためには、自社に合ったパートナーを選定し、パートナーとの良好な関係を構築し、それを維持できる施策を適切に実施することが大切です。
今回の記事では、パートナーサクセスを達成するための具体的な施策と、成功事例を紹介しました。
パートナー事業を行う際に参考にしていただけますと幸いです。