パートナーサクセスという概念自体が最近ようやく浸透してきた日本では、パートナーサクセスマネージャーという職種もまだ主流ではないかもしれません。しかし、パートナー事業を成功に導くためには、専門の担当者としてパートナーサクセスマネージャーを設置することが重要になります。
今回はパートナーサクセスマネージャーについて、次のポイントで解説していきます。
- パートナーサクセスマネージャーとは
- パートナーサクセスにおける職種
- パートナーサクセスマネージャーの仕事内容
- 求められるスキル
- パートナーサクセスマネージャーの求人例
パートナーサクセスマネージャーとは
提供:Pixabay
パートナーサクセスマネージャーとは、パートナービジネスにおいて中心的に活動する管理職のことです。パートナービジネスがさかんな企業では、パートナービジネスの企画やパートナー企業との関係構築・対応などを行うパートナー事業部の管理職とされている場合もあり、パートナーサクセスを達成するために重要な役割を果たします。
パートナーサクセスについてはこちらの記事で解説しています!↓
パートナーサクセス(Partner Success)とは、企業が取引先や協力企業と共に成長を目指す戦略のことです。単に売上を上げるだけではなく、相互の信頼と協力に基づいて、共同で価値を創造し、収益を最大化するプロセスを意味します。 […]
パートナーサクセスにおけるその他の職種
提供:Pixabay
上ではまずパートナーサクセスマネージャーについて紹介しましたが、パートナーサクセスを達成するために置かれる役職には、パートナーサクセスマネージャーの他にも様々なものがあります。
例えば、以下のようなものがよくあるパートナーサクセス関連の職種です。
- パートナーサクセス
- パートナーセールス
パートナーサクセス
パートナーサクセスマネージャーのもとで、パートナー事業に携わる職種です。具体的な業務内容には次のようなものがあります。
- パートナープログラムの作成
- 新規パートナーの獲得
- 既存パートナーの育成・支援
パートナーセールス(代理店営業)
パートナーサクセスがパートナープログラムの作成などを含む、幅広い業務を行う職種を指すのに対し、パートナーセールス(代理店営業)は中でも特に営業活動に特化した職種です。業務内容はパートナーサクセスの仕事のうち、新規パートナーの獲得や既存パートナーの育成・支援など、パートナーに対する営業活動・営業支援となります。
パートナーセールスについては、こちらの記事で詳しく解説しています↓
代理店営業は、多くの企業が利用する販売戦略の一つで、製造業者と消費者の間に立つ代理店を通じて製品やサービスを販売する方法です。この戦略には、市場の拡大、リソースの効率化、リスクの分散など多岐にわたるメリットがあります。本記事では、代理店営[…]
代理店を積極的に活用することで、自社商品やサービスを拡販し、販売力を強化することができます。しかし、代理店を通した販売には、代理店選定や育成、情報共有、トラブル解決など、多くの課題があり、営業の役割が非常に重要になります。 この記事[…]
パートナーサクセスマネージャーの仕事内容
提供:Pixabay
それでは、ここからはパートナーサクセスマネージャーの仕事内容を見ていきましょう。具体的な業務には以下のようなものがあります。
- パートナービジネスにおける事業計画立案
- パートナープログラムの作成・運営
- 新規パートナーの選定・契約・関係構築
- パートナーの育成・サポート
- パートナーとのコミュニケーション・関係維持
これらすべての仕事をパートナーサクセスマネージャーが一人で行うのではなく、多くの場合複数人のパートナーサクセスやパートナーセールスで分担することになります。次に、それぞれの内容を詳しく紹介していきます。
①パートナーサクセスにおける事業計画立案
成功する事業計画を立てるためには、自社や市場の状況を深く理解することが大切です。まずは次のことを調査・分析しましょう。
- 会社全体の目標
- 自社製品の強みや特徴
- 人材・資本などのリソース状況
- 自社の抱える課題
- 市場のトレンドやニーズ
- 市場全体の課題
パートナー事業関連の部門だけでなく、社内の商品開発部門、マーケティング部門など、他部門と連携・相談しながら進めていくことが必要です。
パートナーサクセスにおける成功とは、単に金銭面での利益を得ることや、自社だけが成功することではなく、パートナー企業と良好な関係を築きながら、お互いに金銭面を超えた様々な価値を獲得し、ビジネスを成長させることを意味します。自社だけでなく、パートナー企業も同程度のメリットが得られるような事業計画を心がけましょう。
また、既存のパートナー企業と相談しながら進めることも大切です。
②パートナープログラムの作成・運営
パートナー企業を獲得するために有効な方法の一つは、パートナープログラムを作成することです。実際、日本でパートナー事業を成功させている企業の多くがパートナープログラムを実施しています。
パートナープログラムには、例えば自社製品の販売を行う企業とパートナー契約を結ぶことで、パートナーサクセスを目指すものがあります。他の事業計画と同様に、自社や市場を深く理解し、社内の他の様々な部門と連携しながら進めていきましょう。
パートナープログラムの作成では、次のことを定める必要があります。
- パートナー企業との契約形態
- パートナー企業への報酬制度
- パートナー企業の採用基準
- 新規パートナーの育成プログラム
- パートナーへの支援体制
- パートナー企業の優遇制度
募集の際には、パートナー企業側のメリットを具体的に提示することも大切です。
パートナープログラムについて、詳しくはこちらの記事で解説しています↓
企業にとって、パートナープログラムは、売上向上のために、販売やマーケティングの観点から非常に重要な役割を果たします。 この記事ではパートナープログラムの内容や事例を踏まえて解説していきます。 [sitecard subtitle[…]
パートナープログラムの作成は、ビジネスの拡大や新たなマーケットへの進出を促進するための強力な戦略となります。それは、自社製品やサービスのリセラーや提携企業を通じた販売を可能にし、ビジネスのリーチを拡大させる役割を果たします。しかし、その実[…]
③新規パートナーの選定・契約・関係構築
新規パートナー企業の開拓には、パートナー企業に自社の方からアプローチをかける方法と、パートナープログラムなどを介して相手企業からアプローチがある場合の二種類があります。
前者の場合は、まず自社に合うパートナー企業の条件を定め、それを満たす企業を候補として選定し、相手企業に提案することになります。後者の場合は、アプローチがあった企業が自社の基準を満たしているかどうかを確認することで選定します。
パートナー企業と契約が成立したら、お互いがメリットを得られるよう、ミーティングなどを通してすり合わせを行い、契約条件や目標を明確化することが大切です。契約直後に綿密なコミュニケーションを取ることで、良好な関係を構築することができます。
④新規パートナーの育成・サポート
パートナー契約を結んだ直後は、パートナー企業に対する育成やサポートを十分に行う必要があります。具体的には、次のような施策が有効です。
- セミナー・勉強会
- 定期ミーティング
- 営業同行
新規パートナー企業に早い段階で、自社製品や事業内容を理解し、営業スキルなどを身につけてもらうことで、より良い成果成果を上げることができます。
⑤パートナーとのコミュニケーション・関係維持
パートナー企業と良好な関係を保つためには、新規パートナー企業の育成プログラムが一通り終わった後も、継続的な支援が必要です。定期的なミーティングを行って成果や目標達成状況や、パートナー企業の抱える問題や課題を把握することが大切です。必要に応じて追加の教育や問題解決のサポートを行いましょう。
また、自社企業や共同事業の状況を共有することも必要です。特に自社企業の新製品・新サービスが登場した際や、事業計画に変更が生じた際は、セミナーや勉強会を開催するなど、十分な情報共有を行いましょう。パートナー企業が多い場合は、オンラインでセミナーや勉強会を実施することで、効率化することができます。
パートナーサクセスマネージャーに求められるスキル
提供:Pixabay
パートナーサクセスマネージャーはパートナー事業を成功に導くために非常に重要な役割を果たします。その役割を全うするためには、次のようなスキルが求められます。
- 分析能力
- マネジメント力
- コミュニケーション能力
- コンサル力
①分析能力
パートナーサクセスのためには自社や市場のニーズにあった事業計画やパートナープログラムを作成し、自社にあったパートナー企業を選定することが必要です。そのためには、自社や市場、パートナー企業を正しく理解するための分析能力が求められます。
②マネジメント力
パートナー事業やパートナープログラムを計画通りに実行するためにはマネジメント力も必要です。部下やパートナー企業に合った目標を設定し、その進捗や達成状況を管理することで、パートナー事業全体における目標を達成することができます。
③コミュニケーション能力
パートナー企業と長期的に良好な関係を築くためには、コミュニケーションを通してパートナーの信頼を得ることが大切です。また、パートナーサクセスの管理者として、部下が相談しやすい環境を作るという意味でも、この能力が重要になります。
ここでのコミュニケーション能力とは、自己をアピールして相手と仲良くなる能力ではなく、次のようなものを指します。
- パートナー企業や部下の抱える問題を把握するための傾聴力
- プロジェクトの進行に必要な情報を正しく伝達する能力
④コンサル能力
特にパートナープログラムでは、パートナー企業に長期的な支援を提供することが必要になります。パートナー企業の抱える問題を解決するため、またはより高い成果を上げてもらうために、コンサル能力も重要になります。
パートナーサクセスマネージャーの求人例
提供:Pixabay
最後に、パートナーサクセスマネージャーの求人例を3つ紹介します。求人情報は記事作成時点(2024年7月)の情報であるため、変更されている可能性がありますのでご注意ください。
①OLTA株式会社
クラウドファクタリング事業、与信モデルの企画/開発を行うOLTA株式会社が、パートナーサクセスマネージャー候補として、パートナーサクセスを募集している求人です。
【業務内容】
- アライアンス全体の戦略設計、アライアンスチームのマネジメント
- パートナーの各ステークホルダーとの関係構築や強化
- パートナーの事業状況に沿った拡販戦略の立案・提案・交渉
- パートナーの行動最大化のための具体的な施策実行支援
【歓迎経験・スキル】
- 経営戦略の企画・推進経験
- 金融機関向けのアカウントマネジメントやコンサルティングの経験
- 金融機関とのアライアンス経験
- 新規アライアンスの開拓〜グロース経験
- 既存アライアンスの関係強化のための戦略策定・推進経験
【条件】
- 雇用形態:正社員
- 年収・給与:700-900万円
②株式会社バイウィル
サステナビリティ戦略コンサルティング会社の株式会社バイウィルが、将来のパートナーサクセスマネージャーの候補として、パートナーサクセスを募集している求人です。
【業務内容】
- 営業グループの営業戦略の立案・実行
- パートナーである地方銀行とのクレジット事業拡大に向けた協力体制の確立
- パートナーに対する勉強会・セミナーの開催
- クレジット創出可能企業への提案、クロージング
- クレジット創出企業のプロジェクト参加獲得
【必須スキル】
- パートナーや自治体と良好な関係を構築するためのコミュニケーション力
- 明瞭端的な資料作成のためのロジカルシンキング・ドキュメンテーション力
- 営業計画立案のための戦略性
- 計画実行ができる徹底力
- 営業顧客管理・提案書作成のための実務リテラシー
- 顧客理解のために情報を適切に収集できる情報リテラシー
【優遇スキル】
- 法人営業経験3年以上
- マネジメント経験3年以上
- 無形商材、ソリューション型営業経験
【条件】
- 年収:800-1200万円
- 賞与・成果に応じたインセンティブ支給あり
- 昇給年2回
③株式会社Legalscape
リーガルリサーチツール「Legalscape」の開発などを行う株式会社Legalscapeが、パートナーサクセス(マネージャー)を募集している求人です。
【業務内容】
- パートナーの各ステークホルダーとの関係構築・強化
- パートナーの事業状況に沿った拡販戦術の立案・提案・交渉
- パートナー営業実績の分析・コンサルティング
- チャーン見込み顧客の分析とチャーン阻止施策の立案・実行
- 新規導入クライアントへのオンボーディングの実施・利用促進支援
【条件】
- 雇用形態:正社員
- 給与:500-1000万円
まとめ
パートナーサクセスマネージャーはパートナー事業を成功に導くための重要な役職です。
その業務はパートナー事業の計画やプログラムの作成、新規パートナーの獲得や、パートナーとの関係構築・維持など、多岐にわたります。パートナーサクセスマネージャーの設置においては、そのための十分なスキルをもつ人材を選ぶことが大切です。