街中で「広告代理店」や「保険代理店」など「代理店」という言葉が利用されている店舗を見かけたことはありませんか?
代理店は、ショッピングモールや駅前など、さまざまな場所で営業しています。似たような会社に「販売店」などがあります。代理店と販売店の違いが分からない方も少なくないでしょう。
この記事では、販売店との違いから始まり、代理店の種類やメリット/デメリットなどについて解説していきます。
最後まで読んでいただくと、代理店についてより深く理解できるようになります。
代理店とは
代理店とは、メーカーや事業者から委託を受け、製品やサービスを販売・宣伝している企業のことです。販売力や営業力など自社に不足している部分を補ったり、主力業務に専念できるようにしたりする時に利用されます。
代理店に業務を委託するメーカーや事業者のことを「代理店本部」といいます。以下の記事では、代理店ビジネスの仕組みを紹介しているので、併せてご覧ください。
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代理店の役割
代理店は、メーカーや事業者から受託した幅広い業務をこなしています。ここからは、代理店の主な役割を3つ紹介します。
販売促進
代理店は、代理店本部が開拓できなかった独自の販売ルートを確保し、販売促進を実現します。また、消費者に対して製品やサービスを魅力的に紹介することで、売上向上に貢献します。
以下の記事では、代理店が売上を伸ばす方法について解説しています。以下の記事を通じて効果的に販売を促進させる方法を把握しましょう。
代理店ビジネスとは、商品やサービスを取り扱う企業と、その商品やサービスを販売する代理店との関係を指します。 代理店は、クライアント企業から商品やサービスを仕入れ、自社の販売網を活用して販売することで収益を得ます。代理店ビジネスは、ク[…]
市場の動向や業界トレンドの調査
代理店は、市場の動向や業界のトレンドを把握し、適切な手法で顧客にアプローチします。代理店が得た情報は、新規事業の立ち上げや事業拡大に貢献します。
代理店を活用したマーケティング戦略について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
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カスタマーサポート
代理店は、消費者からの問い合わせにも対応しています。消費者とのコミュニケーションを通じて得た情報を代理店本部へエスカレーションすることで、製品やサービスの改善につなげます。
また、エスカレーションした消費者の意見を基にマーケティング戦略を策定することで、各地域の特性に合わせたキャンペーンや販促活動を実施できます。
販売店との違い
販売店とは、メーカーや事業者が消費者へ直接製品やサービスを提供するために設置した小売店舗のことです。コンビニエンスストアや専門店、ECサイトなどがあります。
販売店は代理店同様、契約しているメーカーや事業者の製品やサービスを消費者へ販売したり、マーケティング戦略に必要な情報を収集したりしています。代理店と販売店を差別化するポイントは、「契約方法」です。
代理店は、代理店本部が所有・管理している製品やサービスを代理店本部の代わりに販売する「エージェント方式」という契約を結んでいます。一方で販売店は、メーカーや事業者から製品やサービスを買い切り、消費者へと販売する「ディストリビューター方式」という契約を結んでいます。
製品やサービスを完全に買い切ることで、メーカーや事業者との間に発生する突発的なトラブルが発生しても余裕を持って対応できるようになりますが、棚卸業務や管理コストが発生します。
代理店の具体例
代理店は、さまざまな業界で利用されています。ここからは、主な代理店を5つ紹介します。
保険代理店
保険代理店とは、保険会社から委託を受け、消費者へ保険を紹介したり、保険契約の締結を媒介したりする代理店です。生命保険と損害保険の両方を扱うこともあれば片方のみ扱う場合もあります。
保険代理店は、あくまで保険会社と加入希望者の媒介であるため、加入希望者が保険代理店にて申し込み手続きを完了しても保険会社が承諾しなければ保険へ加入したことになりません。
広告代理店
広告代理店とは、広告を出稿したいメーカーや事業者から委託を受け、広告を出稿したり、媒体メディアとの仲介を担ったりする代理店です。広告の運用だけでなく、マーケティングや選定なども担当します。
一般的に医療業界やIT業界、人材業界など、業界を問わず委託を受けています。
旅行代理店
旅行代理店とは、旅行業者から委託を受けてが企画した団体旅行やパッケージツアーなどを販売する代理店です。旅行保険の加入手続きのサポートや観光地に関する情報の提供など、幅広い業務を担っています。
自社で企画・手配した旅行商品を販売することもあります。
不動産代理店
不動産代理店は、地主から委託を受けて物件の販売や賃貸の契約を仲介する代理店です。不動産は、複数の物件を扱っており、消費者のニーズに適した物件を紹介しています。
また、地主や消費者から代理権を付与された場合は、代理で不動産契約の手続きをしています。
銀行代理店
銀行代理店とは、銀行から委託を受けて銀行の業務をおこなう代理店です。銀行代理店の業務は、銀行法第2条第14項で定められています。
個人や法人だけでなく、金融機関が銀行代理店としての業務を勤めることもあります。
代理店の種類
代理店では、各企業の意向に沿ったさまざまな代理店制度を採用しています。ここからは、主な代理店の種類を5つ紹介します。
販売代理店
販売代理店とは、自社の販売経路を活用し、代理店本部の製品やサービスを販売する代理店のことです。代表例として、自動車販売代理店や食品販売代理店、家電製品販売代理店などが挙げられます。
製品やサービスを販売することで、販売価格と仕入れ価格の差額を利益として受け取れます。
総代理店
総代理店とは、代理店本部から複数の製品やサービスの販売委託を受け、総合的に販売する代理店です。代表例として、通信キャリアや自動車販売総代理店などが挙げられます。幅広い製品やサービスを取り扱うことで、消費者のニーズに合わせた提案を実現しています。
総代理店では、商品やサービスの販売だけでなくメーカーや事業者と代理店の間で調整が必要な業務をまとめて受けられます。
取次店
取次店とは、卸売業者と小売業者の仲介者として、商品の仕入れや流通を担う企業のことです。中小企業が中心となって営業しており、食料品や日用品、家電製品などの有形商材を扱っています。
取次店は、卸売業者から商品を買い切り、小売業者へ販売します。一方で代理店は、代理店本部から委託された製品やサービスを消費者へと提供します。
また、取次店は販売店のようにディストリビューター方式を採用していることも代理店との違いです。
以下の記事では、取次店の役割や活用事例などを紹介しています。
ビジネスの世界において、効率的な流通が重要な要素となっています。その中で、取次店という存在があります。取次店は、製造業者や出版社からの商品を小売店や消費者に届ける役割を果たします。本記事では、取次店の役割や重要性、ビジネスへの影響について[…]
特約店
特定のメーカーや事業者の製品やサービスのみを取り扱うという前提で、特別な条件を付けて製品やサービスを販売する契約を結ぶことを「特約店契約」といいます。
特約店とは、メーカーや事業者と特約店契約を結んだ卸売業者のことです。特約店契約を結ぶことで、メーカーや事業者は安定した販売経路を確保でき、卸売業者は、メーカーや事業者のサポートを受けられます。
特約店は代理店同様、メーカーや事業者が扱っている製品やサービスを販売します。代理店と特約店を差別化するポイントは、「委託側と受託側の関係性」です。
代理店は、複数のメーカーや事業者の製品やサービスを扱え、販売価格も自由に設定できます。一方で特約店は特約店契約を結んだメーカーや事業者の製品やサービスしか扱えず、販売価格も自由に設定できません。
特約店は、販売方法について制限がありますが、製品やサービスを販売した時に得られるマージンが代理店よりも高くなる傾向があります。
紹介店
紹介店とは、顧客を代理店本部や別の販売代理店に紹介し、マージンを得る代理店です。代表例として、旅行代理店や保険代理店などが挙げられます。
製品やサービスに関する知識を基に顧客のニーズに合わせた製品やサービスを紹介することで、顧客満足度を高めています。
代理店の活用のメリット/デメリット
代理店ビジネスで成功するためには、代理店の特性を理解する必要があります。ここからは、代理店本部における代理店を活用するメリットとデメリットを紹介します。
代理店のメリット
代理店本部における代理店のメリットは、3つあります。
販売経路を拡大できる
代理店は、特定の地域や市場において独自の販売経路を確保しています。そのため、代理店本部が開拓できなかった新しい市場へ販売経路を拡大させられます。代理店を通じて販売経路を拡大することで、マーケティング戦略の幅が広がり、企業の成長に繋がります。
主要業務に集中できる
代理店に業務を委託すると、自社でこなさなければならない業務が減るため、企画や開発など、力を入れたい業務へ人材や資産を投入できます。主力業務に集中することで、
また、代理店は特定の分野において専門的な知識と経験を持っているため、高い費用対効果を期待できます。
地域の顧客ニーズに合わせた製品やサービスを提供できる
代理店は、各地域の文化や需要に合わせて代理店本部の製品やサービスを独自の方法で消費者へ提供できます。地域ごとに適したマーケティング戦略を策定することで、効果的に売上を向上させられます。
代理店のデメリット
代理店本部における代理店のデメリットは、3つあります。
管理が難しい
代理店本部は、製品やサービスの販売数や販売価格の設定を代理店に一任しています。そのため、複数の代理店と契約を結んでいると管理が難しくなります。
各代理店の独自性が高いと、最悪の場合、ブランドの統一性が失われるでしょう。
ノウハウや経験が蓄積しない
代理店本部は、代理店と協業することで代理店独自の販売経路やノウハウを利用します。そのため、代理店との契約が切れると委託していた業務に関するノウハウや経験がなくなるため、大きな損失となります。
また、消費者との直接的なやり取りも代理店が担当するため、マーケティング戦略に必要な顧客の意見を得ようとしても、消費者から直接意見を聞きだせません。
製品やサービスによっては代理店募集が難しくなる
代理店は、代理店本部と契約を結ぶだけで収益になるわけではありません。代理店本部の製品やサービスを販売し、マージンを獲得することではじめて収益となります。
そのため、消費者から必要とされていなかったり、手数料や契約内容が悪かったりすると代理店との契約が難航します。
代理店の開拓方法
代理店を活用するためには、自社と契約を結んでくれる代理店を見つけなければなりません。代理店の開拓方法は、「WebサイトやWeb広告」、「プレスリリース」、「テレアポ」、「DM」というように多種多様です。必要な代理店数や予算、オンラインかオフラインかなど企業のニーズに合わせて開拓方法を選ばなければなりません。
ターゲットの選定方法
代理店ターゲット選定は、代理店開拓の初期ステップで、どのターゲットにアプローチするかを明確にすることが重要です。営業代理店を活用するか、自社サービスにマッチした企業と提携するかを決定します。営業代理店は手数料で収益を得るため、契約条件が良ければスムーズに展開できます。一方、自社製品に合った企業と提携する場合、本業の生産性向上を訴求しなければなりません。
ターゲット選定では、代理店の製品特性、エリア、規模、営業手法を確認し、自社に適した代理店を特定しましょう。
代理店開拓の代表的な手法
代理店開拓における効果的な方法として、代理店募集サイトへの出稿とテレアポによるパートナー開拓が挙げられます。
代理店募集サイトへの出稿は、既存のユーザー数が多いプラットフォームを利用することで、新たな商材を求めている代理店に迅速にリーチできます。特に固定費用がかからない達成型の媒体を利用すれば、コストを抑えながら始めることが可能です。
一方、テレアポによるパートナー開拓は、自社が契約したいターゲットに直接アプローチする方法です。リスト作成、アプローチ、担当者接続、商談、契約内容調整、契約締結の6つのステップを踏むことで、ターゲットとなる企業に効果的にリーチし契約を結ぶことができます。特に商談においては、金銭的メリットと金銭以外のメリットを訴求することが重要です。また、契約内容の調整には細かい文言の修正や法務との相談が必要となります。
これらの方法を組み合わせることで、代理店開拓を効果的に進めることができます。
代理店の開拓方法を知りたい方には、代理店・パートナー開拓の教科書
今回は、代理店の開拓方法を紹介しましたが、「代理店・パートナー開拓の教科書」では、開拓方法だけでなく、代理店開拓を進める際に発生する課題と打ち手などについても紹介しています。
気になる方は、サービス資料をダウンロードしてみてください。
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代理店協業までのフロー
代理店協業の流れは、以下の6つのステップに分かれています。
1.計画策定 | 2.設計 | 3.パートナー開拓 | 4.契約締結 | 5.営業稼働 | 6.リスク対策 |
---|---|---|---|---|---|
・目標の設定 ・KPIの設定 | ・契約内容設計 ・成果地点設計 ・手数料金額設定 ・運用フロー整備 | ・ターゲット設定 ・アプローチ設計 ・ 渉外管理 | ・パートナー交渉 ・契約締結 ・契約書管理 ・申請フロー設計 | ・稼働率向上 ・モニタリング ・パートナー育成 | ・リスク対策 ・解約率改善 ・パートナー育成 |
自社の従業員を上手く育成できていても、パートナーチャネルでは通用しない場合があります。そのため、代理店協業のフローに従い、入念な準備が求められます。
ここからは、各ステップの詳細を紹介します。
「パートナービジネスの教科書」では、代理店協業までのフローを詳細に明記しています。代理店ビジネスを検討している方はご覧ください。
計画策定
アライアンスの戦略策定の第一歩は計画の策定です。この計画策定では、主にチャネル計画目標の作成とKPIの設定の2点を検討します。
まず、アライアンスチャネルでどれだけ事業を伸ばしたいかを明確にし、全体の事業計画を基に目標を設定します。これにより、ターゲットの範囲やインセンティブ条件が決めやすくなります。
次に、設定したチャネル計画目標をKGIとして、KPIを設定します。アライアンスのKPI設定はまだ確立されたベストプラクティスがないため、具体的な設定方法に基づいて設定する必要があります。
パートナービジネスの教科書では、KPIの設定方法などについても紹介しています。
設計
アライアンスビジネスの成功には契約内容の設計が必要です。契約の成否や良好な関係の構築に大きく影響します。
主な検討ポイントは「手数料条件の設定」と「不正防止と対応の設定」です。手数料条件では、「何を手数料発生のトリガーとするか」「トリガーに対していくら払うか」「報酬はフローかストックか」の三点を決定します。
パートナービジネスの教科書では、詳細な手数料設定のロジックなどを紹介しています。不正防止と対応については、「何が禁止行為か」「禁止行為が発覚した場合の対応」を契約で明記し、事前に両社で設定することで、認識の齟齬を防ぎ、トラブルを回避しましょう。
パートナー開拓
新規パートナー開拓には3つの主要な検討ポイントがあります。
まず、ターゲットの選定です。協業したいパートナーを定義する際には、販売代理店か副商材としての協業か、法人向けか個人向けか、そして業種を決めることが推奨されます。販売代理店は他社の商材と比較されやすく、営業リソースが多く投入されますが、副商材としての協業は手数料条件が比較されにくく、低い手数料で契約できる反面、手数料以外のメリットを提示する必要があります。
次に、インバウンド設計です。自社のHPに「パートナー募集ページ」を追加したり、代理店募集サイトへ掲載する方法があります。特に自社サービスのブランド価値が高い場合、HPのパートナー募集ページが効果的です。また、リスティング広告を運用することでターゲットにアプローチすることが可能です。代理店募集サイトへの掲載は、営業代理店を開拓する際に有効ですが、競合サービスと比較されやすいため、契約条件やパートナープログラムを差別化する必要があります。
最後に、アウトバウンド設計です。知人や取引先からの紹介やテレアポを利用する方法があります。紹介は契約締結に至りやすく、テレアポは商品販売の営業活動とは異なるため、アポイント率が高くなります。しかし、契約だけでなく、稼働まで可能なパートナーと契約するためには、高い渉外スキルが求められます。
以上のポイントを踏まえ、新規パートナー開拓を効果的に進めることが重要です。
契約締結
代理店契約において、パートナー交渉は重要なステップです。契約締結時は、協力する企業と詳細な条件を話し合います。交渉がまとまったら契約締結に進み、両社が正式に合意して契約書に署名します。契約締結後は、契約書管理が重要で、内容を適切に保存し、必要な時に迅速に参照できるようにします。
また、契約の更新や変更に対応するために、申請フロー設計も欠かせません。これにより、効率的かつ円滑に契約関連の手続きを進めることができます。
営業稼働
営業稼働において、営業チームやパートナーが最大限の効率で働くことは、代理店ビジネスの成功に必要です。
稼働効率を向上させるためには、モニタリングが欠かせません。モニタリングは、営業活動の進捗や成果を常にチェックし、問題が発生した場合に迅速に対処できるようにします。
また、パートナーが適切にトレーニングされ、スキルを向上させることで、全体の稼働率が向上し、より効果的な営業活動が可能になります。
リスク対策
代理店協業におけるリスク対策は、ビジネスの安定性を確保するために不可欠です。
リスク対策には、解約率改善が重要です。解約率を低く保つために、パートナーが直面する問題を早期に発見し、解決策を提供することが求められます。
また、パートナー育成もリスク対策の一環として有効です。パートナーに対する継続的なトレーニングやサポートを通じて、スキルや知識を向上させることで、協業の質を高め、リスクを最小限に抑えることができます。
まとめ
今回は、販売店との違いから始まり、代理店の種類やメリット/デメリットなどについて解説しました。
メーカーや事業者にとって代理店の活用は、販売経路の拡大やマーケティング戦略に役立ちます。
代理店の特徴を適切に理解し、効果的に活用できるようになりましょう。