“売りやすい環境”はどう作る?フェーズ別に支援が変わるTier設計と緻密な支援に迫る - PartnerLab|パートナーラボ

“売りやすい環境”はどう作る?フェーズ別に支援が変わるTier設計と緻密な支援に迫る

業界
IT/SaaS
株式会社スマートドライブ
高田 亮介 氏

概要

2019年にインサイドセールスの立ち上げメンバーとして入社。その後サービス拡大に伴いCSへ異動。CS配属時に大手パートナー企業の中のCS組織立ち上げ支援やパートナー企業における大型顧客の導入・運用支援などで、パートナー事業への関与をスタート。その後パートナーグループに異動し、現在に至る。

目次

パートナー契約を結んだからといって、すぐに案件が生まれるわけではない。

スマートドライブが見ているのは、その前後にある「どうすればパートナーが動きやすくなるか」という設計です。実際、同社ではパートナーごとの成熟度に応じて支援のあり方を整理する社内向けのTier制度を運用し、相手の現在地に合わせて向き合い方を変えています。

背景にあるのは、パートナービジネスを単なる販売チャネルではなく、モビリティ産業全体で価値を生み出すための協業戦略として捉える考え方です。

勉強会、商談支援、導入後の活用支援、そして現場への深い理解。スマートドライブは、そうした一つひとつの支援を通じて、パートナーが“売りやすい環境”そのものを整えてきました。

本記事では、表には見えにくいTier設計の意図と、その裏側にあるパートナーマーケティングの実践を伺いました。

見据えるのは、拡販だけではなく、モビリティ産業全体との協業


ーまず最初に、スマートドライブさんのサービスについてお伺いしてもよろしいでしょうか?

高田 スマートドライブは、「移動の進化を後押しする」というビジョンを掲げています。現在は法人向けの車両管理サービス(車載IoT機器やアプリ等の法人向け車両管理サービス)を中心に展開しています。車両や人の移動に関するデータを収集・分析・活用することで、企業の業務効率化や安全性向上、コスト最適化に貢献する。それが今の事業のベースです。

ただ、その先には、自動車産業全体の進化があります。

車の生産、デリバリー、日々の車両管理、その後の整備や保険まで、モビリティ領域には多くのプレイヤーがいます。そこにスマートドライブがデータ基盤として関わることで、産業全体の動きをより良くしていきたい。そうした長期的なビジョンも掲げています。

ーありがとうございます。車両管理という1プロダクトだけではなく、最初からかなり広い産業視点で見られているんですね。

販路開拓のためのパートナー戦略から、共に価値を生み出す共創戦略へ


ースマートドライブさんはパートナービジネスをどのように位置付けていますでしょうか。

高田 短期と中長期、両方の観点があります。

短期的には、新しい顧客層との接点を増やすことです。特にパートナービジネスを始めた当初は、タクシーや物流企業などの運送事業者だけではなく、白ナンバーと呼ばれる社用車管理の市場が今ほど盛り上がっていなかった時期でもありました。そのような中で、まずはニーズを持つエンドユーザーとの接点を増やす必要がありました。また、弊社のサービスは、車両に設置するIoT機器とクラウド管理をセットで提供する性質上、一般的なソフトウェアだけのSaaSよりも、お客様からの信頼がより重要になります。その意味でも、既に顧客基盤や信用を持つ企業と連携する価値は大きかったです。

一方で、中長期ではもっと広い意味があります。パートナー様などとのサービス拡販以外の事業開発等の協業も視野に入れております。モビリティ領域は、自動車そのものの生産からデリバリー、車両管理、保険、整備、物流、駐車場、ETC関連まで、多くのプレイヤーが関わるエコシステム型の市場です。そうした中で、自社単独で顧客接点を増やすより、既に顧客基盤や専門性を持つ企業と連携することで、もっと本質的な価値提供ができると考えています。

ーなるほど。単に売上を増やすためのチャネルというより、モビリティ産業全体で価値を出していくための共創相手なんですね。

高田 そうですね。その意味合いがかなり大きいです。

パートナーに対する支援を最大化するためのTier制度


ースマートドライブさんのパートナーグループはTier制度というもので整理をされているのを高田さんのnoteで拝見しましたが、このTire制度についてお聞きしても良いでしょうか。

高田 これは一般的なランク制度とは少し違い、パートナー様ごとの成熟度に応じて、私たちの支援の仕方を整理するために社内だけで運用している仕組みです。

例えば、すでに協業が進んでおり、さらに大きく伸ばしていく段階のパートナー様はTier1とさせていただいております。

一方で、まだ探索段階だったり、そもそもどういうパートナー様とご一緒すべきかを見極めているような業界はTier3と位置させていただいています。このように、関係性や進捗の度合いに応じて分けています。

ーパートナー様に見せるためのランクではなくて、御社側がパートナー様に対しての支援を最大化するためのものなんですね。

高田 そうですね。実際、このTierはパートナー様に伝えているものではありません。あくまで社内で、「今このパートナーに対してどういう支援が必要で適切であるか」「どういう体制で向き合うべきか」を判断するためのものです。

売上のみで機械的に分けているのではなく、案件紹介の数や、複数の担当者の方が稼働していただいているかなど複数のKPI指標を見ながら、どのくらいアクティブに関わっていただけているかを判断しています。

つまり、単純な実績評価というより、“次にどう伸ばすか”を見るための整理です。私たちがパートナー様に最大限のサポートをするためにTier制度は非常に重要だと思っております。

ーこのTier制度はいつ頃から始まったのでしょうか。

高田 約2年前からです。Tier制度ができた当初から長期的な制度設計をしていたというより、実務上の必要性から生まれました。

「次にどのパートナーに支援のリソースを注力するべきか」「そもそも、どんなパートナーと協業するべきか」 が整理しきれていなかった。そこを考え始めたのが、このTier設計の出発点でした。

立ち上がりの頃は、最初に協業が進んだ一部の有力なパートナー様に、数字を頼っていた時期がありました。しかし、会社が成長していく中で、この状態ではさらなる成長はできないという危機感があり、それを打破するために作ったのがTier制度です。

ーなるほど。既に動いているパートナーをさらに伸ばす話だけではなく、どのように支援していくのか意識したということですね。

高田 まさにそうです。
私たちとしては、Tier1・2・3をつくること自体が目的ではなくて、パートナー様ごとの現在地を見極めたうえで、支援の濃さや向き合い方を変えられる状態をつくることが大事でした。そのため、これは固定された制度ではなく、今後見直す可能性もあります。
ただ、立ち上げ当初の私たちにとっては、「誰に、どう向き合うべきか」を整理するうえで、非常に意味のある考え方でした。

Tier3にはパートナーマーケティング、Tier1にはパートナーカスタマーサクセス


ーTier制度について詳しくお聞きしてもさらに詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。

高田 例えば、Tier1のパートナー様に対しては、パートナー様が売りやすい環境を整える「パートナーマーケティング」、評価制度や状況を踏まえた商談支援を行う「パートナーセールス」、導入後の活用を支援する「パートナーカスタマーサクセス」までを一貫してご支援しています。パートナー様としての成熟度が上がるほど、パートナーカスタマーサクセスのようにより後工程までの広範囲な対応が必要になると考えています。

逆にTier3のようなそもそもの選定や立ち上げ時期のパートナー様については、当然ながらターゲティングからパートナーシップ締結直後の立ち上げとしてのマーケティングなど、前工程へのご支援の比重が高くなると考えています。

ーフェーズごとに役割が整理されていて、とても分かりやすいですね。パートナー様にとっても、売りやすい環境づくりから導入後の活用支援まで一貫して伴走してもらえる点は、非常に心強いサポートだと感じているのではないでしょうか。

高田 そうですね。結局のところ、パートナー契約を締結したからといって、そのまま自然に動いていただけるわけではありません。特にTier3のような、これから関係性を構築する段階や、締結直後のフェーズでは、受注に向けた後工程よりも前工程の設計が重要です。

たとえば、最初の1件の紹介をいただくには何が必要か。紹介が2〜3件来たあと、1件目の受注までつなげるには何をするべきか。1件決まったあと、複数案件の成約につなげるには何が必要か。このようなプロセスを細かく分けないと、パートナー様側の現場に不満が蓄積していきます。結果として、気づいたら案件が来ない、動いていただけない状態になります。

私たちのパートナーマーケティングは、単に施策を打つことではなく、“売りやすい環境”を設計し、改善し続けることです。

ーかなり細分化されていますね。この“売りやすい環境”について具体的にお聞きしてもよろしいでしょうか。

高田 はい。私たちは、属人的にせず、組織として再現できる形で進めることが大事だと考えています。

“売りやすい環境”は広い概念です。営業資料や提案ストーリーはもちろん、勉強会の設計、案件の進め方、問い合わせのしやすさ、現場の負荷感まで含め、全てが対象になります。

また、私たちは勉強会の実施で終わりにしません。実施後に、パートナー様の営業担当者へ電話で確認することもあります。「前回の内容はどうでしたか」「今お持ちの案件に活かせそうですか」といった会話をしながら、現場の反応を拾います。

案件の確認も行いますが、どこで引っかかったのか、何が役立ったのかも見ています。そこで得た気づきは全体ミーティングで共有し、次の打ち手に反映しますし、商談同行の中で得られた学びも、同様に扱っています。

ーそこまで行うと、カスタマーサクセスに近い動きですね。単なる案件管理に留まらず、パートナー様の現場の解像度を高めている印象です。

高田 そうですね。営業だけで完結する話ではないと思います。たとえば、再販のスキームでは、パートナー企業様側で負担が大きくなる場面もあります。その点を営業がヒアリングし、必要に応じてCSをアサインすることで、エンドユーザー側の成功まで支援できます。そして、エンドユーザーのサクセスが、結果的にパートナーの成功にもつながっていきます。

ーお話を伺っていると、こうした座組は再現性が高い印象がありますが、実際に業務を行う中での課題はありましたでしょうか?

高田 一番大きな課題は、メーカー/ベンダー側のパートナー企業の解像度が低いまま進めてしまうことで生じる問題です。相手の営業スタイルの違い、文化の違い、そしてその企業にとっての本業は何か。そこをきちんと理解しないまま、「早く受注したい」という方向に寄ると、ズレが生じます。

パートナービジネスを始めた当初は、自動車産業の企業様、とくに大手の車両リース会社様との協業が多くありました。彼らの本業は車を売ることです。私たちのサービスは車載器込みで親和性が高いとはいえ、それだけで優先度が上がるわけではありません。

ただ、車両データが取得できるようになると、例えばリース会社様にとっては、自社で提供している車両だけではなく、他社リース分も含めた全体の動きが見えるようになります。そうすると、次のリース提案やEV提案など、本業につながる提案がしやすくなります。そこまで理解できると、単に「お願いします」の営業ではなくなります。

ーたしかにそうですね。相手の本業にどうつながるかまで腹落ちしないと、やはり優先順位は上がらないと思います。高田さんのお話を聞いている中で非常に顧客の解像度が高いと感じたのですが、この解像度の高さはどのように高めたのでしょうか。

高田 解像度を高めるために泥臭く業務を行っていました。最初から全てを理解していたわけではありません。自分たちで勉強し、分からないことがあれば先方の現場に入ることもありました。

たとえば、協業の一環として出向に近い形を取ったり、週1回常駐したりしました。自動車メーカー様との協業で地方出張を重ねたこともありますし、リース会社様の現場で長く一緒に動いたメンバーもいました。

足を使って、相手企業の中で何が起きているのか、どのような文脈で営業しているのかを見に行くことで、理解できたと思います。

ーパートナー様の事業を理解するためには非常に重要なことですよね。

高田 そうですね。パートナー様を理解しない限り、こちらの支援設計も成り立ちません。

ーお話を伺っていて印象的なのが、スマートドライブさんは、”関係構築”と”売りやすい環境づくり”を、別々のものではなく一体で進めている点です。これは意図されているのでしょうか?

高田 そうですね。私たちも悩みながら進めている前提ですが、1回の営業接点だけでパートナー様に継続的に満足していただけることは、ほとんどないと考えています。

営業責任者からすると「こういう研修を実施してほしい」というニーズがあるかもしれません。一方で現場では、「導入後のフォローに困っている」という課題があるかもしれません。そうした多様なニーズに応えようとすると、セールスの枠を超えた支援が必要になります。

だからこそ、関係構築と売れる仕組みづくりは、片方ではなく両方必要だと考えています。

ー売って終わりではない商材だからこそより重要ですよね。特にIT系,SaaSは、導入後の支援まで含めて価値があると思います。

今後の展望:エンドユーザーの価値とパートナーのモチベーションが一致する“サービス連携”へ


ー今後の展望について教えてください。スマートドライブさんとして、これからパートナービジネスをどのように進化させていきたいでしょうか。

高田 大きく1つあるのは、エンドユーザーにとってのメリットと、パートナー様のモチベーションが一致するようなサービス連携をつくっていくことです。

車両管理という領域はかなりニッチです。したがって、連携して自然に売れるほど単純ではありません。だからこそ、どのパートナーと、どのような形で組めば、相手の事業にもプラスになり、エンドユーザーにとっても意味があるのかを丁寧に設計する必要があります。

たとえば今後、SIerのようなパートナー様と組む場合でも、我々は商材の提供をしつつ、各E/Uから求められるカスタマイズ性にはあえて弊社が手を出しすぎないようにしたいです。パートナーであるSIer側に開発を対応いただくことで、追加の収益ポイントが発生しパートナー様にとっても「これを提案する理由」が強くなります。単に取り扱う商材が一つ増えるのではなく、自社の提案価値や事業価値が高まる形にできれば、パートナー様の動き方も大きく変わるはずです。

そうした意味で、今後は“誰にとっても意味がある共創の形”を前提にしたサービス連携を、増やしていきたいと考えています。

パートナー募集サイト:https://smartdrive.co.jp/fleet/partner/

ーなるほど。販路拡大というより、“共創”を増やしていくイメージですね。

高田 そうですね。もちろん売上の観点でも、パートナー経由の比率は中長期的に非常に大きなものにしていきたい感覚はあります。ただ、それだけを至上命題にしたいわけではありません。

私たちとしては、売上比率だけを見るのではなく、パートナー様との関係性がどれだけ深まっているか、事業開発の幅がどこまで広がっているかといった点も含めて見ています。数字だけを追うのではなく、その先にある共創の深さまで含めてパートナービジネスを育てていきたいというのが現在の考えに近いです。

パートナーマーケティングを意識する仲間たちへ


ースマートドライブさんでは、現在パートナーサクセス担当者、パートナーカスタマーサクセス担当者を募集されているとお聞きしましたが、このポジションには、どのような魅力がありますでしょうか。

高田 スマートドライブでは、主に「パートナーサクセス」と「パートナーカスタマーサクセス」を募集しています。

私たちは、“パートナーセールス”という呼び方をしていません。理由は単に案件を追いかけるのではなく、どうすればパートナー様が動きやすくなるか、エンドユーザーにもどう価値を返せるかまで考える役割だからです。

パートナーサクセスは、パートナーマーケティングを意識しながら案件創出を設計し、パートナーカスタマーサクセスとも連携して、パートナー様にもエンドユーザーにも価値を返していきます。単に「案件ないですか」と聞き続けるのではなく、どう支援を設計し、どう価値を返し、その結果として案件を生み出すかを考える。そこに大きな面白さがあります。

ーたしかに、営業とマーケティングそしてCSを全て組み合わせたような、難しくも面白い仕事ですね。パートナーカスタマーサクセスにはどういう魅力がありますか?

高田 パートナーカスタマーサクセスにも戦略性があります。たとえば、アップセル余地のあるエンドユーザーをデータから抽出してセールスメンバーやパートナー様を後押ししたり、活用方法に関する勉強会を企画してパートナー様向けに展開したりしています。

単なる導入支援ではなく、「どう使えば成果が出るか」「そのデータをどう先方の本業に生かせるか」まで考えるため、ブレーンのような役割を担うことも多いです。そこは非常にやりがいのある部分だと思います。

スマートドライブ様の採用募集はこちら

ー「パートナーサクセス」「パートナーカスタマーサクセス」のどちらの役職もスキル面で非常にいい経験ができそうですね。

ー本日はありがとうございました。

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