「ザ・モデル」だけでは届かない顧客へ。互いの事業を成長させる「共創ベネフィット」というパートナーシップ - PartnerLab|パートナーラボ

「ザ・モデル」だけでは届かない顧客へ。互いの事業を成長させる「共創ベネフィット」というパートナーシップ

業界
IT/SaaS
スパイダープラス株式会社
小野寺 祥太 氏 陶山 功陽 氏

概要

パートナーサクセス部2課 課長
小野寺 祥太 氏
秋田大学卒業後、自動車系商社での金属トレーディング営業、人材紹介業を経てスパイダープラスに入社。札幌・仙台営業所の立ち上げに携わり、フィールドセールスとして未導入顧客の新規開拓と既存顧客への深耕営業を担当。現在はパートナーサクセス部に異動し、全国のパートナー企業とともにスパイダープラス拡販を進めるモデルづくりに取り組む。営業現場での経験を生かしながら、パートナー企業との協業によって新規開拓と既存深耕を加速させるためのエコシステムの構築を目指すチームのマネジメントを担う。

パートナーサクセス部3課 課長
陶山功陽 氏
(インタビュー当時。現在は事業企画本部事業推進部へ異動。)

東京大学卒業後、不動産デベロッパーで事業用不動産の仕入れ営業を経験。2025年にスパイダープラス株式会社へ入社。販売パートナーの新規開拓営業を担当し、大手ディストリビューターを含む3社と提携。販売パートナー取引におけるオペレーション構築や販売促進支援の企画推進を担当している。

目次

【プロダクトの原点】現場を知り尽くした職人の実体験から生まれた施工管理サービス『SPIDER+』

参照:https://spider-plus.com/

——まず、SPIDER+のサービス概要と、開発の背景を教えてください。

陶山氏: 当社は建設業界向けのDXサービス「SPIDER+」を展開しております。SPIDER+は、図面・写真・検査記録などの現場情報をタブレットで一元管理し、帳票作成まで行える施工管理アプリです。

当社の原点は、現場経験にあります。創業者の伊藤は工事の現場から出発し、当社を断熱工事を手がける工事会社として立ち上げました。ある日積算(工事の見積もり)作業に取り組んでいた時のことです。積算は、規模の大きな工事になれば何日もかかりますが受注しなければその労力は報われません。ちょうどその頃、世の中にはスマートフォンやタブレットが登場し始めていました。デジタルの力で、この作業をもっとラクにできないか。そう感じたことが、すべての始まりでした。

社内には開発の体制がなかったため、たまたま上京していた小学校の同級生に相談し、2010年、積算をラクにするアプリが生まれました。作業時間は従来の10分の1に短縮。図面に引いた沢山の線がクモの巣のように見えたことから、「Spider」と名付けました。

翌2011年、カメラ付きのiPad 2が登場します。工事を通じて懇意にしていた取引先の声をきっかけに、積算だけでなく現場でも使えるサービスへと発展させました。これが、現在の「SPIDER+」です。

それまでの工事現場では、情報のやりとりの多くが紙を介して行われていました。現場監督は日中に現場を回り、事務所に戻ってから写真の整理や書類づくりに追われ、長時間の残業を余儀なくされることも少なくありませんでした。SPIDER+なら、現場で記録した写真や検査記録が図面データに直接紐づき、整理された状態で残ります。事務所での作業や紙のやりとりから解放され、現場監督は本来注力すべき施工管理の仕事に時間を使えるようになります。


【建設業界の特性】現場主義の業界だからこそ、従来の電話アプローチ(ザ・モデル)が通用しない背景

——建設業界向けの営業では、一般的なSaaS営業の進め方と、どのような違いがありますか。

小野寺氏: 一番違うのは、誰に会えばよいのか、そして、その人にどう会うのかという点です。以前の営業では、例えば「人事部長の方はいらっしゃいますか」と、部署や役職から会うべき相手にアプローチできました。しかし、建設業界で私たちが会いたい現場監督は、そもそも会社にいることは少なく、現場にいます。

営業のノウハウ以前に、営業する相手に会えない。ここが一番大変でした。

実際、当社にも以前はインサイドセールスがありましたが、現在は置いていません。会社に電話をすると、まず総務などの窓口の方にご対応いただきますが、私たちが直接お話ししたい施工管理の担当者へつながることは簡単ではありません。

いわゆる「ザ・モデル」の進め方を、そのまま当てはめるのは難しいと感じました。

——そこで、パートナーの持つ顧客接点が重要になるのですね。

小野寺氏: そうですね。ただ、建設会社と取引があるパートナー様なら、どこでもよいわけではありません。私たちのサービスが、誰の、どの業務に役立つものなのか。その人に届く接点を、どのパートナー様が持っているのか。そこを地道に見極める必要があります。

ホリゾンタルSaaSでうまくいったやり方だから、建設業界でもできるはずだと思って入っていくと、つまずきます。営業手法を持ち込む前に、「誰に届ける商材なのか」「その人にどうすれば会えるのか」を考えることが大切だと思います。


企業への窓口があるだけでは不十分。現場のキーパーソンに響く業界知識の必要性

——パートナーを通じて提案する場合も、顧客企業との接点があるだけでは十分ではないのでしょうか。

陶山氏: そうですね。私たちが本来お会いしたいのは、現場監督や工事部長、経営層など、実際の業務や導入に関わる方々です。ただ、最初に総務や情報システム部門の方にご対応いただいても、そこから担当の方へつないでいただくことが難しいケースもあります。会社と接点を持つことと、サービスについて具体的にお話ししたい方に会えることは、また別なのです。

もう一つは、提案に業界知識が必要なことです。「便利なツールですよ」という説明だけでは、なかなか商談が進みません。建設業界の、この業務の、この場面で、どのように仕事が変わるのか。そこまで具体的にお伝えする必要があります。

小野寺氏: 「建設業界向け」と言っても、その中には土木、設備、戸建てなど、さまざまな領域があります。私たちは、その中でも非住宅を建てる現場の施工管理者が主な対象です。業界の中でも、さらに営業対象が絞られています。

幅広い商材を扱う大手の販売会社さんは、私たちがお会いしたい企業と取引されていることも多いです。ただ、既存のお取引では総務や経理の方が窓口となっていることもあり、私たちがお話ししたい施工管理の担当者とは、まだ接点をお持ちでないケースもあります。

また、建設会社の中では、現場の意向が強い場合もあります。総務の方が良いと思って案内してくださっても、実際に使う現場が動かなければ導入は進みません。そもそも施工管理の実務で使うツールなので、機能の良し悪しを判断するには、実際に現場で使う方の視点が欠かせないという事情もあります。

——パートナー側には、商材を理解して提案する難しさもあるということですね。

小野寺氏: そうですね。「図面に写真が紐づいて、検査記録を管理できて」と説明されても、現場の仕事を経験していない方には、なかなかイメージが湧きません。

例えば、建設現場の課題が五つあって、SPIDER+ならその多くをカバーできるとします。一方で、お客様は、そのうち二つを解決するツールをすでに導入している場合、パートナー様が十分に商材を理解しないまま提案すると、すでに解決できている二つの話しかできず、「それはもうやっています」と断られてしまいます。本当は、まだ解決できていない課題があるのに、その価値を伝えられない。これはパートナー様だけでなく、直販でも同じです。私たち自身も、最初の頃は苦労しました。


販売からカスタマーサクセスまでを分担し、全国の顧客をきめ細やかにフォローする体制へ

——そうした営業の難しさがあるなかで、直販とパートナービジネスをどのように位置づけているのでしょうか。

陶山氏: 当社では、パートナー様を単なる販売チャネルとは捉えていません。パートナー様と一緒だからこそ、サービスをお届けできているお客様がいる、という認識です。

建設業界には、長く付き合いのある取引先からの紹介であれば、まず話を聞いてみようという商習慣があります。

パートナー様は、資材やOA機器などの取引を通じて、お客様と日頃から深い関係を築いています。現場の予算やスケジュールといった事情も、よくご存じです。そうしたパートナー様が当社を信頼して紹介してくださることで、私たちだけではつながれなかったお客様に届いています。

契約上は「商談の取り次ぎと請求」という役割分担で整理できるかもしれませんが、実際には、それだけの関係ではないと感じています。

——販売後の顧客支援についても、パートナーとの役割分担を進めていると伺いました。

小野寺氏: そうですね。当社は全国に拠点を展開していますが、それでも、すべての地域のお客様を自社だけで継続的にフォローすることには難しさがあります。

建設業界では、契約して終わりではなく、実際に現場で使っていただけるように支援し続けることが重要です。新しく契約をいただいても、拠点から離れた地域のお客様をどうフォローするのか、という課題が出てきます。

そこで、自社だけでは十分に対応しきれないエリアについては、販売に加えて、カスタマーサクセスまでパートナー様にお任せしていくことに挑戦しています。

私は札幌営業所の立ち上げから、インサイドセールス、カスタマーサクセスまで経験しましたが、一番大変だと感じたのはカスタマーサクセスでした。そこを担っていただくので、簡単な取り組みではありません。

——すでに実現しているケースもあるのでしょうか。

小野寺氏: 一部のパートナー様には、販売からカスタマーサクセスまでお任せしています。

ただ、今の課題は再現性です。現時点では、そのパートナー様にCSまで行える担当者がいるから成り立っている面もあります。特定の方の力量だけに頼るのではなく、どうすれば育成プログラムとして仕組み化できるのか。そこに、まさに取り組んでいるところです。


【共創ベネフィットの設計】単なる紹介料にとどまらず、パートナーの本業に利益が還元される仕組みと『成功体験』の重要性

——専門知識が求められる一方、販売手数料だけでは大きな収益になりにくい商材を、積極的に提案してもらうために何を重視していますか。

陶山氏: バーティカルSaaSは専門的な知識や現場に合わせた丁寧な提案が求められるからこそ、私たちは「SPIDER+を扱うことで、パートナー様自身の本業にどのようなシナジー(共創ベネフィット)を生み出せるか」を徹底的に突き詰めることを大切にしています。

パートナー様の経営層や責任者の方とは、当社の事業とパートナー様の事業にどのような共同メリットがあるかを話し込むことを大切にしていますね。

例えば、多く販売してくださっている会社さんには、「売り切りの物販が中心で、売上が積み上がりにくい」という経営課題がありました。

その課題に対して、SPIDER+であれば、建設業のお客様から継続的な売上をつくれる。さらに、商談やデモは当社が担うので、最初から専門知識を身につけなくても、取り次ぎから始められる。その点が、経営課題とマッチすることからパートナーとして活動を始めていただくというケースもあります。

——共同のメリットについて詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。

陶山氏: 例えば、SPIDER+の導入に伴って、iPadのレンタルにつながるケースがあります。iPadのような機材を扱っているパートナー様には、その収益にもつながります。

SPIDER+をきっかけにお客様との接点をつくることで、パートナー様の本業にも影響するという事例が出てくることが双方にとって非常にメリットがあると思います。

顧客との関係をつくる入り口として価値を感じてくださる会社さんは、私たちからお願いしなくても、自発的に提案してくださいます。

——一方で、最初から中長期の価値を理解して動いてもらうのは、難しい面もありそうです。

小野寺氏: パートナー様によって得意な領域やリソースは様々ですので、最初からすべての役割をお願いするわけではありません。まずは弊社が商談やデモ、アフターフォローまでを全面的にサポートし、パートナー様の負担を最小限に抑える形からスタートします。

何よりも大切にしているのは、パートナー様に最初の成功体験を感じていただくことです。一つの成功事例が生まれると、「このお客様にも役立つのでは」と次の提案へのアイデアが自然と生まれていきます。パートナー様自身にビジネスとしてのメリットを実感していただきながら、徐々に役割を分担し、最終的にはカスタマーサクセスまで共に担えるような伴走型のステップを描いています。


【共創事例】SPIDER+の導入支援が顧客との信頼を生み、パートナーの本業の受注へ発展

——パートナーの本業への貢献という点で、印象に残っている事例はありますか。

小野寺氏: カスタマーサクセス(CS)まで共に担うパートナー様との定例ミーティングで、「SPIDER+の取り組みを通じて、御社にとってどのようなメリットがありましたか?」と尋ねたことがあります。その際、大変嬉しいことに「本業のビジネスにしっかりと繋がっている」というお返事をいただきました。

例えば、オフィス内装を本業とするパートナー様の事例があります。SPIDER+導入後も、きめ細かなフォローを通じてお客様との接点を持ち続けていたところ、「実は近々、本社を移転する計画がある」とご相談をいただいたそうです。その相談をきっかけに、オフィス全体のレイアウト工事を一括で受注できる見込みが立ったと伺っています。

最初はソフトウェアの操作や活用に関するサポートから始まっても、継続的に寄り添い課題を解決していくことで、「この人に相談すれば何でも解決してくれる」という強固な信頼関係が築かれます。その信頼が呼び水となり、「実はオフィスの移転もお願いできますか?」と、パートナー様の本業に直結する大きな相談へと発展した素晴らしい事例です。

——ソフトウェアの販売手数料だけでは見えにくい価値ですね。

小野寺氏:加えて、パートナー企業の営業担当者にとって、SPIDER+は「これまで会えなかった方とつながれる」という価値もあります。

ソフトウェアの導入には、現場の担当者だけでなく、複数の関係者の合意が必要です。そのため、普段やり取りしている窓口の方よりも一つ上の役職の方と話す機会が自然と生まれます。

これまで担当者としか話せていなかった関係から、決裁に関わる方とのつながりができる。それは、その後の本業における提案の幅を広げる貴重な接点になります。

陶山氏: 正直に申し上げますと、以前は私たちにも「そこから本業に結びつけるかどうかは、パートナー様の努力次第ではないか」という意識がどこかにありました。

しかし、実際にSPIDER+を通じてできた接点が、パートナー様の本業の相談につながったという話を聞き、考えが変わりました。これからは、私たち自身がその成功を一緒に目指していきたいと、心から思うようになったのです。

自社の商品を売っていただくだけの関係ではなく、その先でパートナー様の事業も発展していく。そんな共創の関係をつくることこそが、最も大切だと感じています。


「提案のパッケージ化」から「CSノウハウの共有」まで、パートナーの役割に合わせた伴走サポート

——パートナーが提案しやすくなるように、どのような支援をしていますか。

陶山氏: パートナー様の役割や企業のタイプに合わせて、最適な支援体制を提供しています。

例えば、紹介や販売が中心のパートナー様に対しては、彼らがすでに展開している建設業向けのソリューションパッケージに「SPIDER+」を組み込み、提案のハードルを下げる取り組みを行っています。

大手販売パートナー様との取り組みでは、「お客様のどのような課題に対して、SPIDER+をどう提案すればいいのかわからない」という課題がありました。そこで、お客様の実際の業務フローを一緒に分解し、「課題に沿った(合った/適した)機能を提案」というシンプルな形に整理しました。

ツールの機能をすべて覚えていただく前に、提案の「きっかけ」をわかりやすく提供するアプローチです。大きな営業組織全体に浸透させるにはまだ時間がかかりますが、提案の難易度を下げる支援として確実な手応えを感じています。

——カスタマーサクセス(CS)まで担うパートナーには、どのような支援を行っていますか。

陶山氏: 単に提案資料をお渡しするだけでは不十分です。既存のお客様リストを週次で更新・共有する仕組みを整え、当社のカスタマーサクセスが培ってきたノウハウを勉強会を通じて直接お伝えしています。

具体的には、顧客フォローの際に「どのポイントを確認すべきか」「どのタイミングで、どのような働きかけを行うのが効果的か」といった実践的なアプローチ方法を共有しています。これを実現するために、システム連携や、必要な顧客データの一部開示も進めているところです。

また、同じ方向性を目指すパートナー様とは、共同で「商談獲得キャンペーン」や「テレアポ会」を企画・実施することもあります。パートナー様が持つ顧客リストに対して、当社のノウハウを活かして一緒にアプローチする取り組みです。新人の営業担当者様に「最初の切り出し方」をお伝えするなど、単に「電話をかけてください」とお願いするのではなく、実際の商談化につながるようアプローチのプロセスそのものから徹底的に伴走しています。


「売ってもらう」から「お互いの事業を成長させる」へ。対等な関係を築くためのリスペクト

——さまざまな支援を行う上で、特に大切にしている考え方を教えてください。

小野寺氏: パートナー様の強み、取り扱っている商材、あるいはビジネスモデルをどこまで深く理解できるかだと思っています。パートナー様に「これは本当にお客様に価値がある売れる商品だ」「スパイダープラスは、自分たちのビジネスの成功のために、これほど真摯に一緒に動いてくれる」と感じていただければ、単なる手数料の多寡だけではない、強い信頼関係のもとで自発的に動いていただけるはずです。

実は、私自身にも苦い失敗談があります。以前はパートナー様に依存してしまい、自社都合の販売ばかりを期待してしまっていた時期がありました。当然、それではお互いにとって良い関係を築くことはできませんでした。

パートナー様は、他にも数多くの商材を扱い、本業で多忙な日々を送られています。その中で、あえて私たちと手を組んでくださっている。だからこそ、「SPIDER+を扱うことで、パートナー様のビジネスがどう成長するのか」を主語にして考え、提案の仕組みを設計するようになってから、初めてパートナーシップが好循環で回り始めました。

陶山氏: 当社では、パートナー様との間に「発注側・受注側」といった線を引くのではなく、対等な立場で一緒に取り組むことを大切にしています。お互いの事業を共に成長させる対等なビジネスパートナーとして、リスペクトを持って向き合うことが大前提だと思っています。

——その対等な共創の考え方を、現場の営業担当者まで浸透させる難しさはありますか。

小野寺氏: 正直に申し上げると、そこはまだ発展途上であり、私たちの課題でもあります。

営業活動では、まず目の前の商談を受注につなげ、短期的な目標を達成することが求められます。そのため、パートナー様との中長期的な関係づくりを、日々の営業活動のなかにどう組み込んでいくかが重要だと考えています。

パートナー様との関係は、次の商談を生み出し、お互いの将来の成長につながる資産でもあります。その価値を社内で共有しながら、足元の成果と将来に向けた関係づくりをどう両立していくか。営業担当者やマネジメント層と一緒に、それぞれの役割や目標を踏まえながら、現在も試行錯誤を重ねています。


【今後の展望】地域密着のパートナーとの連携を広げ、建設業界全体の課題を解決するインフラへ

——今後は、どのようなパートナーシップを広げていきたいですか。

陶山氏: 一つは、特定のエリアにおける「販売からアフターフォローまでの一連のサイクル」を、まるごとお任せできる地域密着型のパートナー様との協業です。

現在も一部のエリアでは、自社で直接開拓するのではなく、その地域に深く根ざしたパートナー様に、販売から導入後のカスタマーサクセスまでを全面的にお任せする取り組みを行っています。こうしたモデルを、さらに全国の他のエリアにも展開していきたいと考えています。「この地域のゼネコン様のフォローは、私たちが責任を持って支えます」と仰っていただくような、強固な信頼で結ばれた関係性を各地で構築していくのが理想です。

当社の拠点や人員リソースが限られる中で、全国に広がるお客様をきめ細やかにサポートするためには、地域に根ざしたパートナー様の存在が必要不可欠です。

もう一つは、金融機関様との取り組みです。現場の工事部長様だけでなく、より経営に近い層の方々との接点を広げていきたいと考えています。現在は、企業全体での導入を推進・支援するプランも整備しています。地域で大きな影響力を持つ建設会社様の中で、まだ当社が直接アプローチできていない企業様に対して、信頼のおけるパートナー様と手を取り合って価値ある提案を届けていきたいです。

——協業するパートナーを選ぶ際に、特に重視している点はありますか。

小野寺氏: 会社の規模や知名度には、それほどこだわりはありません。建設業界のお客様との接点を持っていることは前提ですが、それ以上に「商材の提供価値を深く理解し、お客様の課題を本気で解決しようとしてくださるか」というマインドを大切にしています。

「SPIDER+」は、お客様の本業である施工管理業務の根幹を支えるサービスです。だからこそ、お客様に深く入り込み、長期的な信頼関係を築く強力なきっかけになります。

単に「売りやすいから」「安いから」という理由だけで商材を扱う関係ではなく、現場の課題解決に一緒に真剣向き合い、その共創をパートナー様ご自身の本業の成長にも還元していただける、そんな企業様とぜひご一緒したいですね。

——プロダクトとして、SPIDER+は今後どのような姿を目指していくのでしょうか。

陶山氏: 私たちのプロダクトビジョンは、「建設業界のインフラになる」ことです。

建設業界が抱える課題は、施工管理だけでなく、人材、資材、勤怠、経理など、多岐にわたります。私たちは「SPIDER+」を入り口として、他社サービスとのアライアンスやシステム連携を積極的に進め、業界全体のあらゆる課題を包括的に解決できるエコシステムを構築していきたいと考えています。

しかし、こうした連携ソリューションを全国のすべてのお客様へ迅速かつ丁寧にお届けしていくには、当社単独の力では限界があります。だからこそ、各地域で抜群の信頼とネットワークを持つパートナー様と、お互いの本業で最大の価値を提供し合えるような、本当の意味での共創関係を広げていきたいです。

小野寺氏: 一社だけでは到底成し遂げられない大きな挑戦だからこそ、パートナー様との共創が必要不可欠なのだと確信しています。単に「SPIDER+を販売していただく」という枠組みを超えて、建設業界のDXや、目の前のお客様の課題解決に共に本気で向き合う。そうした想いを共にするパートナー様と手を取り合い、建設業界で働くすべての方々の時間を、より価値あるものへ変えていきたいですね。


——最後に、バーティカルSaaSの営業やパートナービジネスに日々取り組まれている方々へ、メッセージをお願いします。

陶山氏: 私たちは「建設現場の監督向け」という、非常に特化された領域で事業を展開していますが、周辺のバーティカル領域でDXに挑む企業様も、きっと同じような悩みを抱えられているのではないでしょうか。

一社で解決できる課題の範囲には限界があります。だからこそ、お互いの強みを掛け合わせることで、大きな相乗効果を生み出せる余地が無限にあると感じています。

パートナービジネスは、短期的な視点で見ると、仕組みや運用を整える手間がかかりますし、時には期待値のズレから葛藤を感じる場面もあるかもしれません。それでも、パートナー様がいたからこそ届けることができたお客様、長年培った関係性、そして共に生み出せた価値が確実に存在します。目先の短期的な成果だけで判断せず、社内に対してもパートナービジネスが持つ中長期的な重要性を根気強く伝え、理解の輪を広げていくことが大切ではないでしょうか。

小野寺氏: 実を言うと、私自身が以前カスタマーサクセスを担当していた頃は、「わざわざパートナー様を介さず、直販だけで進めた方が早いのではないか」と考えてしまっていた一人です(笑)。今ではその考えを深く反省しています。

「パートナー様が思うように動いてくれない」と悩まれている方も多いかと思います。自分たちだけで進めた方が、一時的には早く進む場面があるのは事実です。しかし、それでは到達できるビジネスの規模に限界があります。より高く、大きな山を越えようとするならば、絶対に一人の力ではやり切れません。

今、もし課題があっても、パートナー様と同じ目線で真摯に向き合い、泥臭く対話を続けること。その先にこそ、本当の意味での「共創」が待っているのだと信じています。

——本日は貴重なお話をありがとうございました。

建設業界のDXを共に進めるパートナー企業を募集

スパイダープラス株式会社では、建設業界のお客様との接点を持ち、現場の課題解決に共に取り組むパートナー企業を募集しています。

販売・紹介に加え、地域のお客様への継続的な支援など、それぞれの強みを生かした協業を目指しています。SPIDER+を通じて顧客との関係を深め、自社の事業にもつながる取り組みを検討されている企業様は、以下よりお問い合わせください。

https://spider-plus.com/sales-partners


編集部の視点|顧客に届く接点と、パートナーが取り組む理由をつくる

今回の取材から見えてきたのは、パートナービジネスを「自社の代わりに売ってもらう仕組み」として考えるだけでは、十分ではないということです。

スパイダープラスが求めているのは、自社だけでは届かない顧客との接点です。一方、パートナーにとって必要なのは、専門知識が求められる商材でも提案を始められる支援と、自社の事業に取り組みの価値が返ってくること。両者の強みや求めるものを結びつけることで、販売から導入後の支援まで、協業の範囲が広がっています。

もちろん、取り組みは完成形ではありません。成功事例をほかのパートナーにも広げること、カスタマーサクセスを担う人材を育てること、社内に中長期の視点を浸透させることなど、課題も率直に語られました。

「ザ・モデル」から別の型へ単純に置き換えるのではなく、自社の顧客に届く方法を考え、その実現を共に担う相手の成長にも向き合う。 スパイダープラスの実践には、ELGの視点からパートナー戦略を考えるうえでの示唆があります。

「どうすれば、もっと売ってもらえるか」の前に、「自社との取り組みで、パートナーの事業はどう良くなるか」を問う。その問いが、共創を進める出発点になるのではないでしょうか。


著者
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神永 皓真
株式会社パートナープロップにて、パートナービジネス専門メディア「パートナーラボ」の編集長を務める。Sansan社、Box Japan社をはじめとする大手SaaS企業などのパートナービジネス執行役員・責任者クラスへ直接取材し、トップだからこそ語れるアライアンス戦略を記事化。パートナーマーケティング・代理店戦略の領域で、一次情報にもとづく実践的なナレッジを発信している。
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