パートナーマーケターとは ──定義・役割から成功事例、必要スキル、キャリアパスまで完全解説│PartnerMarkeLab|パートナーマーケティングラボ
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パートナーマーケターとは ──定義・役割から成功事例、必要スキル、キャリアパスまで完全解説

目次

パートナーマーケターとは、「パートナーマーケティング」を専門に担うマーケターのことです。近年、特にBtoB業界でパートナー企業との協業戦略が注目されており、それを推進するパートナーマーケターの役割も重要性を増しています。本記事では、パートナーマーケターの定義と役割、具体的な仕事内容、国内外の成功事例、求められるスキルや知識、典型的なキャリア背景、さらに将来のキャリアパスまで、すべて解説していきます。

パートナーマーケターの定義と役割


パートナーマーケティングとは、パートナー企業と協力して自社製品・サービスの販売や宣伝を行って行く中で、「関係性に頼らずに、パートナーが売りたくなる仕組みを作る手法」です。

従来のパートナービジネスでは、関係性以外にパートナーが売る動機がなく、「あの人があれだけ言うから扱ってあげよう」という現場も多い状態でした。「パートナーセールスがパートナー企業との関係を構築することによって案件が創出される」というのも間違いなく事実であり、このような活動も大切です。一方で、一対一の属人的な関係に頼ってパートナービジネスを拡大していく手法では、必ずどこかで限界が訪れます。「パートナーが自ら売りたくなる仕組み」を会社全体で整備するためには、パートナー向けのコンテンツや情報発信、フォロー活動を通じて、「この商品を扱うことが自社のメリットになる」という認識(パーセプション)を広めることが必要不可欠となってきます。

こうしたパートナーマーケティングを推進するのがパートナーマーケターです。その役割は自社の戦略目標に沿って適切なパートナーと関係を構築し、パートナー企業が自社商材を「売りやすい」ように支援して双方に成果をもたらすことで、言い換えればパートナーマーケターとは、自社とパートナー企業との架け橋となって互いの強みを生かしたWin-Winの関係をデザインするプロフェッショナルのことです。

パートナーマーケターの主な業務内容


パートナーマーケターの日々の業務は多岐にわたり、マーケティングとアライアンス活動の2つの分野にまたがります。これらの業務は、以下の順に7つのステップに分けられます。

①パートナー候補の調査・新規獲得

自社にとって有望な提携先を調査し、アプローチします。広告運用などを通じて募集を行い、興味を持った企業と交渉してパートナー契約を結ぶまでが最初のステップです。契約締結にあたっては条件調整や契約交渉まで担当し、互いのメリットを擦り合わせます。

②パートナーの育成と関係構築

ここでは提携が決まったパートナー企業に対し自社製品・サービスのトレーニングを行ったり、共同目標を設定してパートナー企業がスムーズに自社商材を扱えるよう支援したりします。製品資料や販売ガイドの提供、担当者同士の定期的なコミュニケーションなどを通じ、「一緒に売っていくチーム」という意識を共有して信頼関係を築いていきます。

③共同マーケティング施策の企画・実行

このフェーズでは、パートナーと共に市場開拓やプロモーションを行います。具体的には、セミナーやウェビナーの共催、パートナー企業の顧客向けに送付するメールマガジンのコンテンツ提供、共同キャンペーン企画の開催などが主な業務です。また、必要に応じてパートナー企業独自の販促活動の支援も行うため、販促物(パンフレットやケーススタディ)の制作やマーケティング施策の提案も業務内容となってきます。パートナー企業側にマーケティング機能やノウハウが不足している場合は、代わりに施策を設計して提供することもあります。

④リード創出・ナーチャリング支援とパートナーの自走化

パートナー経由での案件創出を最大化するためには、パートナー企業に意欲を持たせて、自律的に販売できる状態(自走)へと導く必要があります。具体的には、マーケティング施策の力でパートナーがアプローチできる見込み顧客(リード)を生み出したり、共通の見込み客に対するナーチャリング(育成)施策を実施したりします。パートナー企業の営業担当者に対して自社サービスや市場動向に関する情報提供を継続し、自社製品を提案しやすくする取り組みも重要です。勉強会の開催や成功事例の共有、営業同行による支援など、販売意欲を高める施策を講じてパートナーの活動を促進します。

⑤イベントやコミュニティ活動の運営

パートナー会議、表彰式、交流会などパートナー向けのイベントやウェビナーを企画・運営し、パートナーエコシステム全体のエンゲージメント向上を図ります。これによりパートナー間の情報交換を促したり、自社へのロイヤリティを高めたりする効果があります。

⑥社内調整・部門の垣根を越えた協働

パートナーマーケターは社内の関連部署とも密接に連携します。とくにパートナーセールスチーム(代理店営業担当)との協働は欠かせません。営業サイドからパートナーの要望や現場情報を収集し、マーケティング施策に反映させます。また、製品担当部署とも連絡を取り、パートナーからのフィードバックをプロダクト改善に活かす橋渡し役も担います。社内外の多くのステークホルダーを引き込みながらプロジェクトを進めるため、調整力が求められます。

⑦成果の測定と施策改善

ここでは実施したパートナー施策の成果を計測・分析し、改善を重ねていきます。MA(マーケティングオートメーション)やSFA/CRMツールを活用し、各パートナーのリード数・商談数・売上などのKPIを追跡します。例えば、共催セミナーからの商談化率や提供したコンテンツによる反響などをモニタリングし、うまくいった施策は横展開、成果の出なかった施策は原因分析してブラッシュアップするといったことがこれに当てはまります。この①〜⑦のPDCAサイクルを回し続けることで、パートナープログラム全体の効率を高めていきます。

以上のように、パートナーマーケターは新規パートナーの開拓から成果を出すところまで、非常に幅広い業務を担当します。「パートナーの成功 = 自社の成功」という視点を持つことが求められ、まさにマーケティングを通じてパートナーと共創し売上拡大の仕組みを作っていく役割と言えます。

パートナーセールスとの違い:役割・スキル・成果指標の比較


両者の基本的な役割の違い

パートナーセールスとパートナーマーケターは、いずれもパートナービジネスを成長させることを目的としていますが、担う役割と成果創出のアプローチが異なります。

区分パートナーセールスパートナーマーケター
目的パートナー経由の売上最大化パートナーが商材を「売れる状態」をつくること
働きかける相手営業担当者(パートナー企業のセールス)マーケティング担当者 or 組織としてのパートナー全体
成果指標商談数・受注数・売上高パートナーリード数・ナーチャリング率・エンゲージメント指標など
主な業務パートナーとの関係構築・案件伴走・クロージング支援・営業同行・提案支援共催ウェビナーやキャンペーン設計・販促資料やコンテンツ制作・オンボーディング支援・トレーニング
スキルセット営業力・交渉力・商談推進力企画力・分析力・施策運用力・コミュニケーション力

役割分担の実例


例として、SaaSベンダーが代理店ネットワークを通じて製品を販売しているケースを考えてみましょう。ここでは、パートナーセールスは主要パートナーを定期訪問し、提案先や商談進捗、見積支援などで案件単位の支援をします。必要があればパートナーの営業に同行して受注に向けたクロージングも担当します。

一方、パートナーマーケターは製品の強みや売れる理由を営業資料や共催ウェビナーを通して伝え、パートナーが案件を創出できる仕組みを作ります。主な業務は、未商談層への認知拡大、教育支援、リードの生成などで仕組みを整える「種まき」であり、その種を自走し始めたパートナーとパートナーセールスが育て、収穫するという構図であるため、両者の連携は必要不可欠となってきます。

両者の連携が成果を左右する


パートナーセールスとパートナーマーケティングの役割は異なれど、最終的なパートナー経由の売上拡大という目標は共通しており、両者の連携が密であるほど成果は上げやすくなってきます。ここではそのための連携システムをいくつかご紹介します。

まず1つ目は、共通ダッシュボードを使った成果の可視化です。パートナーごとのリード創出数や商談化率のデータを共有することで、連携がしやすくなるだけでなく、同じ目標に向かっているという意識が生まれます。

2つ目は、定例ミーティングでの課題の共有です。「このパートナーは商談率が低いため、育成が必要である」等の現状の問題・課題を擦り合わせておくことで、両者がバラバラな方向に向かっていき組織が瓦解するおそれを未然に防ぐことができます。3つ目は、施策のフィードバックループの構築です。例えば、セミナー参加者が商談化したか否かをセールスに報告することで、そのセミナーの良かった点と悪かった点を明確にし、その完成度や効果を共有することができます。

これらの連携システムを利用して、協働によるエコシステムの成長を達成できるかが成功指標となります。

パートナーマーケターに求められる知識とスキル


パートナーマーケターの業務を遂行するためには、マーケティング分野の専門知識に加え、プロジェクトの組み立てや交渉・調整業務などで高い能力が求められます。この章では、具体的にどのような能力が必要なのかをリストアップしながら解説していきます。

コミュニケーション能力と関係構築力

パートナー企業の担当者や自社内の関連部門との調整・協働を日常的に行うため、高いコミュニケーションスキルは必要不可欠です。ただ対話が得意なだけでなく、自社製品の価値やマーケティング戦略をわかりやすく説明できるプレゼンテーション能力や、相手のニーズに耳を傾けて信頼を獲得する力など、様々なものがこれに含まれます。特にパートナーマーケティングでは立場の異なる2つの企業の協働となるため、両者にとってWin-Winとなる落とし所を探り合う折衝力や、継続的な関係を育むホスピタリティ精神も求められます。

マーケティングの専門知識

パートナーマーケターもマーケターである以上、デジタルマーケティング、コンテンツマーケティング、イベント企画、リードジェネレーション、ブランディングなど幅広いマーケティング知識が活躍の土台となってきます。とりわけBtoBマーケティングの知識・経験は重要で、上位ファネルからの育成・営業への引き渡しまで一連のプロセスを理解していることが望まれます。また、パートナー向け施策は多岐にわたるため、知識に加えて広告・SEO・セミナー運営・コンテンツ制作など様々なマーケティング手法を状況に応じて使いこなす柔軟な対応力が求められます。

分析力とデータドリブン思考

施策の効果測定やパートナーのパフォーマンス分析を行い、マーケティングKPIの設計やダッシュボード管理などの戦略に活かす分析力も求められます。それに加えて、パートナーごとの案件創出数やコンバージョン率をモニタリングし、どのパートナーに追加支援が必要か、どの施策がROIに優れるかを見極めるといった判断力も必要です。また、数値に基づいて論理的に提案・交渉できる素養はパートナーからの信頼獲得にもつながります。

契約とアライアンスの知識

パートナー契約の内容やチャネルビジネスの収益構造に関する理解も重要です。具体的には、契約条件の交渉やリセラー手数料の設定、紹介プログラムの報酬体系設計など、ビジネス面の知識が重宝されます。自社とパートナー双方にメリットのあるスキームを設計するためには、基本的な契約法務やアライアンス戦略の知見を蓄えておくとよいでしょう。

プロジェクトマネジメント能力

複数の施策や関係者を並行して動かすため、タスク管理や進行調整といったプロジェクトマネジメントスキルも必須となってきます。特にパートナー施策は企画から実行までに社内外の多数の関係者が関わり、イレギュラーも発生しがちです。期限に向けて段取りを組み、役割分担を明確にし、問題発生時に迅速に対処する推進力が求められます。全体を見渡し「段取り八分」で進める能力は、パートナーとの協働を円滑にし信頼を損なわないためにも重要です。

業界・製品知識

扱うプロダクトや属する業界について深い知識を持っていることも強みになります。パートナーから頼られる存在になる上で、パートナー企業の営業担当から製品仕様や導入メリットや業界動向について的確な説明ができることは非常に大切です。また、ITソリューションであればクラウドやセキュリティの知識、医療機器であれば医療業界の規制知識など、ドメインの理解はパートナーへの説得力に直結します。

以上のように、パートナーマーケターはコミュニケーション力・分析力・企画実行力と、マーケティングの専門知識、ビジネスアライアンスの素養を兼ね備えたハイブリッドな人材が適任と言えます。また、実際の求人要件でも「BtoBマーケティング経験3年以上」「社内外ステークホルダーとの折衝経験」などを求められることが多く、これらの経験を積むためには自社・パートナー双方から物事を見ることに加え上記の能力が必要となってくるでしょう。

どのような人物がパートナーマーケターに向いているか


①マーケティング経験者(パートナー向け以外も含む)

マーケティング職出身のパートナーマーケターは、先述の専門知識と培った企画力・分析力をフルに活かすことができます。例えば、デマンドジェネレーションやデジタルマーケティングの経験があれば、パートナー向けキャンペーンの設計やリードナーチャリング施策の立案に強みを発揮できます。また、コンテンツ制作やコミュニケーション設計のスキルも、パートナーへのトレーニング資料作成やイベント企画、定期的な情報発信に役立ちます。実際にパートナーマーケティング担当の求人要件では「BtoBマーケティング経験◯年以上」が必ずと言ってよいほど含まれており、マーケティング経験がいかに求められているかが見て取れます。また、マーケティング経験者は、パートナー施策の戦略立案から効果測定までを一貫して担い「売れる仕組み」を構築する役割を期待される傾向があります。例えば、さくらインターネットでは若手メンバーを牽引しながらパートナー施策全般を推進できる即戦力マーケターを募集しており、まさにこのような人材が求められています。

具体的なマーケティング経験者の強みとして、最初にデータ分析とKPI設計ができる点が挙げられます。ここでは、データドリブンなアプローチによりパートナープログラムの成果指標(新規リード数、商談創出数など)を設計し、改善する場面での活躍が見込まれます。次にコンテンツマーケティング力です。パートナー向けの提案資料・成功事例・FAQなどコンテンツ整備を主導し、パートナーセールスが自信を持って提案できる環境を作る能力がこれに当てはまります。また、MAやSFAツールを駆使してパートナーの育成・活動状況を見える化し効率的なフォローアップも行うマーケティングオートメーション活用も得意分野となるでしょう。

これらにより、マーケティング出身のパートナーマーケターはパートナー施策を戦略的・体系的に運用し、社内外のステークホルダーを巻き込みながら成果を最大化する役割を担うことができます。

②営業経験者

フィールドセールスやインサイドセールス出身のパートナーマーケターは、現場で培ったリレーション構築力顧客視点が強みとなります。営業経験者は日頃から顧客や代理店と直接向き合ってきたため、パートナー企業の営業担当者が何を求め、どこで課題につまずくかを肌感覚で理解しています。これはパートナーとの信頼関係構築や、パートナー施策の現場適合性を高める上で大きな武器となるでしょう。また、営業経験者は数字にコミットし粘り強く案件を育成する意識が強いため、パートナープログラムの推進役に適しています。

また、営業出身者は自社製品を売るための営業目線も持っているため、パートナーがその製品を扱うことによって受けられるメリットや、売るためのコツを踏まえた上でインセンティブ設計や販売支援策を考案することができます。さらに、自社製品の強み・価値提案を的確に伝えるプレゼンテーションスキルも備えているため、パートナー向けの勉強会や説明会で営業トークを伝授することもできます。企業からは「豊富な人脈を持つ即戦力」として期待されることも多いですが、それ以上に優れた営業スキルそのものがパートナーマーケターとしての技量につながるため重要です。実際に海外のパートナーシップ分野の専門家も、自社製品を深く理解し適切に提案するセールスとしての資質がパートナーマーケターにとって必要であると指摘しています。

具体的な営業経験者の強みとして、パートナー企業のキーパーソンと関係を築く関係構築とエンゲージメント能力、代理店を自社の延長の営業チームと捉えて自社製品の魅力を余すことなく伝えさせるクロージング支援能力(同行営業や提案資料カスタマイズ等)、パートナーの顧客が求めるものを想像しフィードバックとともにプロモーション施策に反映する顧客視点での課題発見能力などが挙げられます。

このように、マーケター出身者は戦略設計・施策運用力で、営業出身者は人間力・現場推進力で、それぞれパートナーマーケティング業務に貢献できます。実際の現場では両方のスキルが求められるため、「マーケ×セールス」のハイブリッドなキャリアを持つ人材が活躍するケースも増えています。

パートナーマーケターのキャリアパスとキャリアアップ


パートナーマーケターとしての経験を積むと、キャリアの選択肢は大きく広がります。ここでは代表的なキャリアパスと、その具体例を解説していきます。

まず王道パターンと言えるのは、パートナーマーケティング部門での昇進です。パートナーマーケティングチームのマネージャーとなり、複数のジュニアメンバーを統括しながら戦略立案から実行までを主導するシニアポジションがこれに当てはまります。この方向でさらに経験を重ねていくと、パートナー事業を統括する責任者に昇進し、企業全体のパートナー戦略を策定・管理する立場になることも可能でしょう。ディレクタークラスでは8〜10年以上の関連経験が求められ、戦略的思考力やリーダーシップが一層重要になります。日本企業でも、「パートナーエコシステム構築の中核を担うポジション」として将来の幹部候補となるケースが出てきています。

次に、事業開発・アライアンスに転身するパターンがあります。パートナー企業との協業を推進したパートナーマーケターの経験は、ビジネスデベロップメント(事業開発)やアライアンスマネージャーといった職種にも通じています。パートナーマーケターとして成果を出した後に事業開発部門へ異動し、パートナーとの新規事業の共同立ち上げなど提携戦略全般を担当するというケースも考えられます。マーケティング経験のある事業開発担当者であれば、自社プロダクトと市場の橋渡し役として重宝される可能性が高いです。反対に、元営業のパートナーマーケターが営業部門のマネージャー職に戻り、パートナーセールスチームを率いるケースもあります。いずれにせよ、社外パートナーと価値を生み出すスキルは他部署でも高く評価されるため、選択肢は広がります。

また、マーケティングの専門性を深め、同分野内で幅を広げるパターンもあります。これは先述の事業開発・アライアンス等の別部門ではなく、マーケティング部門内でパートナーマーケティング以外の専門領域にチャレンジするというものです。例えば、プロダクトマーケティングマネージャー(PMM)やデマンドジェネレーションのリーダーに転身し、自社のマーケティング全体を牽引する役割を目指すといったことがこのパターンにあたります。ここでは、パートナーマーケターとしての経験で得た外部視点を、マーケティング戦略立案全般に取り入れることができます。将来的にマーケティングディレクターやCMO(最高マーケティング責任者)を目指す上で、パートナー分野の知見は他のライバルと差別化する重要な要素となるでしょう。広告・広報・営業企画など周辺分野とのコラボ経験も豊富になるため、ゼネラリスト型マーケターへの成長にもつながります。

それに加えて、パートナーマーケティングはグローバル共通のビジネス手法であるため、語学力や異文化対応力があれば海外で活躍するチャンスにもつながります。外資系企業の日本法人でパートナーマーケティング担当として働いたり、逆に日本企業の海外拠点に赴任して現地パートナー網の構築に携わったりといったパターンがこれに当てはまります。

実際、大手クラウドベンダーやSaaS企業では各国にパートナーマーケティングマネージャー職が設置されており、グローバルチームの一員となる機会も豊富に存在します。海外市場での経験は貴重で、視野の広い人材として帰国後にさらなる活躍につながるケースもあるでしょう。国際的なキャリアを志向する人にとっても、パートナーマーケティングのスキルは切り札になり得ます。

このように、パートナーマーケターとしての経験はキャリアアップの選択肢を多面的に広げてくれるものです。まずは与えられたKPIにコミットして信頼関係を構築し、その後は適性や志向に応じてより戦略的なポジションや関連領域にステップアップしていくことができます。「マーケティング×アライアンス」を極めた人材は希少価値が高く、企業からの需要も増えつづけています。

パートナーマーケターのキャリアアップ:チーフアライアンスオフィサー(CAO)


CAOとは何か?設置の意図と役割

チーフアライアンスオフィサー(CAO)は、CEOやCOOなどと同じCxOの一種であり、企業内でアライアンス(提携・協業)戦略を統括する経営幹部ポジションです。主な業務は自社とパートナーの強みを組み合わせたジョイントGTM(Go-To-Market)戦略の立案、主要アライアンスの交渉と締結、パートナーとの関係の維持強化などであり、パートナーマーケティングの要素を多く含みます。

また、CAOは複数の部門の調整役としての側面も強いです。パートナーシップを成功させるためには、営業・マーケティング・プロダクト・カスタマーサクセスなど各部署の協力が必要不可欠となるため、CAOは経営層の権限で社内体制を整え、組織全体でパートナー戦略を推進します。海外ではCAOをはじめとするアライアンス部門の責任者 (Head of Partnerships)が経営陣に加わる例が増えており、パートナーエコシステム構築が企業戦略の柱となりつつあることを示しています。

CAOの海外における具体事例


グローバルではChief Alliance Officerやこれに類するタイトルを持つ幹部が活躍する例が多くあります。例えば、環境ベンチャーのPlastic Bankではテイラー・カニッツァロ氏がChief Alliance Officerを務めており、企業ミッション達成のため多方面の協力を推進しています。彼女はスピーカーやメンターとして人々のリーダーシップと目的意識を引き出す活動も行っており、パートナーとの共創を通じて社会的インパクトを最大化を目指す人物と言えます。

また、クラウドサービス企業のIntuitive.Cloudでは、2023年にナタリア・ベリアコワ氏をCAOに迎え入れたと発表しており、彼女のミッションは「ビジネスのさらなる成長とエンゲージメントをパートナー戦略で牽引すること」とされています。

このように海外企業では、CAOが自社とテクノロジーパートナー(例えばAWSなど)のアライアンスを強化し、新規顧客獲得や市場拡大を達成するケースも見られます。

それに加えて、非営利組織や業界団体でもCAOが組織間連携やステークホルダーエンゲージメントを統括するケースが存在します。米国の医療系組織ではCAOが複数企業・団体の枠を超えたコラボレーションを調整しているとの記述も見られ、境界を超えた協働を推進する役割として定着しつつあるようです。

総じて、CAOはパートナーマーケターのキャリアパスの一つのゴールと言えるでしょう。パートナー分野で成果を上げた人材が、アライアンス全体を統括するポジションに就くことで、企業の成長戦略に直結する大きなインパクトを与えることができます。国内ではまだ珍しい役職ですが、今後パートナーエコシステム戦略が重要度を増せばCAOの設置も一般化する可能性があり、パートナーマーケターにとっては将来的なキャリアアップの選択肢として注目されるでしょう。

【まとめ】パートナーマーケターは、企業成長を“共創”で牽引するプロフェッショナルである


パートナーマーケティングは今や単なる施策ではなく、事業の拡張性・再現性・収益性を支える中核戦略となりつつあります。その分野の最前線に立つパートナーマーケターは、マーケティングとセールス、現場と戦略を立てる会議室、社内と社外の境界を横断しながら、パートナー共創の仕組みをつくり上げていく必要不可欠な存在です。

その業務は難易度が高い一方で、自社だけでは成し得ないスケールとインパクトを実現できる醍醐味があります。分野と会社の垣根を越えて、事業全体を牽引する立場に立つことができます。キャリアとしても、チーフアライアンスオフィサー(CAO)をはじめとした経営層への道も開拓されつつあり、今後ますます注目されるポジションとなるでしょう。

他社と共に勝つという考え方ができる人にとって、パートナーマーケティングは最もエキサイティングな挑戦の舞台です。パートナーと共に企業の成長に可能性をもたらす。そんな未来志向の仕事に、ぜひ新たな一歩を踏み出してみてください。

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