パートナー契約とは?メリットや契約内容などについても詳しく解説!│PartnerLab|パートナーラボ
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パートナー契約とは?メリットや契約内容などについても詳しく解説!

目次

1. パートナー契約の基礎

パートナー契約の定義と直販との違い

パートナー契約とは、自社以外の第三者(企業や個人)と協力して製品・サービスの販売や事業展開を行うために結ぶ契約を指します。

双方がリソースやノウハウを共有し、新たな市場機会を創出する手法であり、直販(自社の営業だけで販売するケース)とは明確に区別されます。直販ではメーカーが顧客対応の全てを担いますが、パートナー契約では販売プロセスの一部または全部をパートナーに委ねる点が異なります。これによりメーカーは販路拡大や販売効率化を図れますが、一方でパートナー経由の間接販売となるため自社によるコントロール範囲が限定され、契約内容で役割や条件をしっかり定める必要があります。

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取引スキームの種類(紹介・リセール・OEM)

パートナービジネスには様々な形態があり、代表的な取引スキームとして以下が挙げられます。

  • 紹介パートナー(リファラル): パートナーが見込み顧客をメーカーに紹介し、成約に至れば紹介手数料を受け取るモデルです。契約や請求はメーカーが直接行い、パートナーはあくまで案件の紹介までを担当します。販売ハードルが低く、多くのSaaS企業で採用されています。
  • 販売代理店/リセールパートナー: パートナーがメーカーの商品・サービスを仕入れて顧客に再販するモデルです。形態は大きく二通りあり、メーカー名義で契約を仲介する「取次(エージェント)」方式と、パートナー自身が販売者となる「再販(卸売)」方式があります。後者ではパートナーが顧客と契約・請求を行い、メーカーから割引価格で仕入れてマージンを得る仕組みです。大塚商会などの特約店から地域の販売店まで幅広く、一次パートナー(ディストリビューター)と二次店(リセラー)の多段構造を取る場合もあります。
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  • OEMパートナー: メーカーの商品・サービスをパートナーの自社ブランド製品として提供する形態です。パートナーは製品をカスタマイズしたり独自ブランド名で販売し、エンドユーザーからはメーカー名が見えません。典型例として、地域通信会社が大手の回線サービスをOEM提供したり、ソフトウェアをOEM供給するケースがあります。メリットは双方のブランド力や販売網を融合できる点ですが、個別開発対応や最低販売量の取り決めなど契約条件が重要になります(※OEM契約検討時の論点: カスタマイズ対応や最低仕入目標、契約期間など)。

以上のようにパートナー契約にも様々なスキームがあり、自社商品・サービスや戦略に応じて最適なモデルを選定する必要があります。例えば、製品が複雑であれば紹介契約から始め、販売力を最大化したければ取次や卸契約を採用するといった判断になります。

2. 法人がパートナー契約を結ぶメリット・デメリット

ここでは、企業(メーカー側)がパートナー契約を導入する際のメリットとデメリットを整理します。また、どういったビジネスにパートナーモデルが向いているかについても述べます。

メリット(法人側)

  • 新規チャネル拡大による売上増: パートナー経由で自社ではリーチできない市場や顧客層にアプローチできます。例えば地域に根差した販売会社や業界特化の企業と組むことで、新規顧客獲得のチャンスが広がります。
  • ブランド補完効果: 信頼あるパートナー企業と提携することで、自社ブランドの信頼性向上や不足リソースの補完が期待できます。パートナーの持つ専門知識や顧客関係と自社製品を組み合わせることで、単独では提供できない付加価値を創出できます。
  • 固定費抑制とスケーラビリティ: 自社営業を増やす代わりに成功報酬型のパートナーを活用することで、固定の人件費や販管費を低く抑えつつ販路を拡大できます。受注に至った場合にのみコミッションを支払うモデルであれば、コストは変動費化し、景気変動への柔軟性も高まります。
  • 地域・業界へのアクセス: パートナーのネットワークを使い、地方や特定業界など自社が弱い領域に参入しやすくなります。例えば地方に強い販社や業界老舗企業と組めば、その地縁・業縁を活かして市場開拓が可能です。結果として市場シェア拡大や新規事業の足掛かりとなります。

デメリット(法人側)

  • 品質・ブランド統制の難しさ: パートナー経由の販売では、顧客対応や提案内容の品質がパートナー任せになります。自社と同等のサービス品質を担保することは簡単ではなく、ブランドイメージのばらつきやクレームに繋がるリスクがあります。これを防ぐには教育やガイドライン整備が必要です。
  • チャネルコンフリクトの発生: 直販部隊とパートナー、あるいはパートナー同士で競合・競争が起きる可能性があります。例えば同一案件に複数パートナーが関与したり、パートナーが自社直販の顧客に売り込みをかけるケースです。価格競争による収益悪化やパートナー離反を招かないよう、明確なルール設定(エリア・顧客の棲み分けや案件登録制等)が必要です。
  • 情報漏洩リスク: パートナーには製品技術や営業資料、顧客情報など機密情報も共有します。他社であるパートナーから競合に情報が漏れるリスクや、不適切な情報管理による顧客情報流出のリスクが存在します。NDA締結やアクセス権限管理などセキュリティ対策が不可欠です。
  • 管理負荷: 多数のパートナーを管理・支援するには、担当者のフォロー、トレーニング、販促支援、業績モニタリングなど相応の手間がかかります。パートナープログラムを運営する専任チームやシステム整備が必要になるケースもあり、放置すれば非効率や関係悪化を招くため継続的な運用コストが発生します。現在では、以上のような管理を効率化するシステム「PRM」が国内外問わず、使用されています。PRMを使用することで管理やパートナーへのフォローができるようになったという事例もあります。
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パートナービジネスの向き・不向きの判断軸

どのような商材・ビジネスにパートナーモデルが適しているかを判断する際、いくつかの軸があります。

  • 商材特性: 製品・サービスが汎用的でスケールしやすいものはパートナー展開に向いています(例:クラウドサービス、定型的な商材)。逆に高度にカスタマイズが必要だったり専門知識が不可欠な商材は、パートナーが扱うハードルが高く不向きな場合があります。複雑商材の場合は紹介契約など軽めの関与から始めると良いでしょう。
  • 客単価・収益モデル: 一件あたりの売上が大きい商材ほど直販との住み分けが必要です。高額案件は直販で密に管理し、低〜中単価で量を追う商材はパートナー経由で数を捌くといった戦略が考えられます。またストック型ビジネスでは、継続課金の一部をパートナーにシェアするモデルが有効ですが、自社利益率とのバランスを検討する必要があります。
  • 販売サイクル: 営業サイクルが短く簡易な商材(例:単発のツール販売)は多数のパートナーで広域展開しやすいです。一方、長期のコンサルティング営業が必要な商材や特定顧客毎に提案を練り上げるビジネスでは、下手にパートナー経由にすると失注リスクが高まる可能性も。そうした場合は少数の戦略的パートナーと深く協業(場合によっては共同訪問やコーセル)する形が向いています。

以上を踏まえ、自社の製品・市場特性に応じてパートナーモデル採用の是非を判断し、採用する場合も適切なスキーム選定と管理体制構築が重要です。

3. 個人(フリーランス)とパートナー契約を結ぶメリット・デメリット

次に、企業が個人(フリーランス)とパートナー契約を結ぶ場合の双方の視点からのメリット・デメリットを解説します。フリーランスパートナーの活用は近年増えていますが、良い点だけでなく注意点も把握しておく必要があります。

個人側のメリット

  • 案件機会の拡大: パートナー契約を通じて、フリーランスは単独では得られない案件に参画できるようになります。企業からの案件紹介や共同提案の機会が増えることで、安定した案件パイプラインを得ることができます。
  • 収益源の多角化: 複数の企業とパートナー契約を結び、紹介料や販売コミッションを得ることで、収入源を多角化できます。フリーランスにとって単一クライアント依存のリスクを下げ、歩合報酬による高収入の可能性も開けます。
  • 実績・権威付け: 有名企業や大手サービスの「認定パートナー」となることで肩書きや信用力が向上します。得られた実績を自身の営業にも活用でき、専門家としての権威付けにつながります。例えば「公式パートナー」の称号を得れば、営業時の信頼性が格段に増します。

個人側のデメリット

  • 特定パートナーへの依存リスク: 収入の多くを特定企業とのパートナー収入に頼ると、その企業の都合で契約終了や案件減少が起きた際、大きな影響を受けます。フリーランス側は複数の契約先を持つか、自立的な収入源も並行確保するなど依存度のコントロールが必要です。
  • 歩合設計の難しさ: 完全成果報酬型の場合、短期的に収入が不安定になりがちです。高額コミッションを得られる可能性と裏腹に、成果が出るまで無報酬期間が発生することもあります。自身で営業コストや時間を投下することになるため、どの程度コミットするかの判断が難しい点があります。
  • 支払いサイトや事務面の課題: パートナー報酬の支払いが四半期ごとや契約後60日など遅れがちになるケースもあり、フリーランスのキャッシュフローを圧迫する恐れがあります。また、個人であるがゆえに報酬に対する税務処理や社会保険手続きを自分で行う必要があります。最近では適格請求書等保存方式(インボイス制度)の開始により、フリーランスは適格請求書発行事業者の登録を検討するなど対応が求められます。これら事務負担や制度対応も踏まえて契約に臨む必要があります。

補足: 個人と企業の契約は基本的に委任・請負であり、雇用ではないため労働法上の保護(残業代や社会保険加入義務など)は及びません。その分、契約書で成果物の範囲や報酬条件、秘密保持義務などを明確に定め、公平な関係を築くことが大切です。

4. パートナー契約で注意すべきポイント

パートナー契約を効果的に機能させるには、契約書面上の取り決めだけでなく日々の運用面でのルール設定や管理も欠かせません。以下、実務上特に注意すべきポイントを挙げます。

役割分担の明確化(リード獲得/提案/契約/請求/サポート)

パートナーと自社のどちらが営業プロセスの各フェーズを担当するかを明確に決めておきます。例えば「リード(見込み客)獲得はパートナー、提案・クロージングは自社営業、契約・請求手続きは自社、本番導入後の一次サポートはパートナーが担当」といった具合に、紹介からアフターサポートまでの責任範囲を事前に取り決めておきます。これは契約書にも役割分担条項として記載すべき事項ですが、実務運用上も双方の営業・技術担当者に周知し、抜け漏れなく顧客対応できる体制を敷くことが重要です。役割があいまいだと、「紹介したのにフォローがなく失注」「サポート切り分けが不明瞭で顧客対応が遅れる」といったトラブルにつながります。定期的に役割分担を見直し、顧客満足度を維持できる協業体制を整備しましょう。

KPI設定とレビュー頻度(登録案件数・TTFD・受注率・継続率)

パートナー施策の成果を上げるには、客観的な指標によるモニタリングと定期レビューが欠かせません。具体的には以下のようなKPIを設定します。

  • 登録案件数: パートナーから提供されるリードや案件の数。パイプライン量を計測する基本指標です。
  • TTFD(Time To First Deal): パートナー契約後、初受注までに要する期間。オンボーディングの効果測定として、新規パートナーがどれくらい早く成果を出せたかを把握します。
  • 受注率(成約率): 提供された案件のうち成約に至った割合。パートナーの案件の質や共同営業の効率を示します。低ければ案件目利きや提案プロセスの改善が課題になります。
  • 継続率: パートナー経由で獲得した顧客の継続利用率や、パートナー契約自体の継続率。前者はチャーン防止、後者はパートナー離脱防止の観点で重要です。

これら指標を四半期ごとなど定期的にレビューし、パートナーとの定例会(QBR=Quarterly Business Reviewなど)で状況共有・改善策検討を行います。例えば「この四半期は案件登録10件・受注2件で成約率20%。次四半期は研修強化で成約率向上を目指そう」といった具合に、データに基づき議論します。レビュー頻度は少なくとも半年に1回、可能なら四半期ごとが望ましく、PDCAサイクルを回してパートナーとの協業をブラッシュアップしていきます。

インセンティブ設計(紹介料/マージン/階段式/条件連動)

パートナーのやる気を引き出すには、魅力的で公正なインセンティブ制度が必要です。基本のコミッション体系に加え、以下のような設計要素を検討します。

  • 報酬水準の妥当性: 紹介手数料や販売マージンの率は、自社の収益を圧迫しない範囲で競合他社に見劣りしない水準を提示します。例えば、業界標準が月額料金の20%の場合、自社も20%程度を提示しないと魅力を感じてもらえません。自社の利益計算と他社比較の両面から検証します。
  • 段階(ランク)式のインセンティブ: パートナーの販売実績に応じて報酬率や特典を階段的にアップさせる仕組みです。例えば年間○件達成で翌年のマージン率を5ポイント増やす、3件成約ごとにボーナス支給、など目標達成を促す設計です。ランク制度(後述)とも連動させ、高ランクほど手厚い報酬やMDF支給枠拡大などメリハリをつけます。
  • 条件連動ボーナス: 単純な売上額だけでなく、特定商品を売った場合の追加報酬や、「新規顧客◯社獲得」「高満足度達成」など質的指標に応じたインセンティブも有効です。これにより短期的な件数稼ぎだけでなく戦略的な行動(新市場開拓や顧客満足向上)を促せます。
  • SPIFの活用: 前述したSPIFを期間限定キャンペーンとして導入し、今月だけ成約1件ごとに◯万円のボーナスといった短期施策でパートナー営業にブーストをかけることもあります。乱発は避けつつ、四半期末の追い込みや新製品ローンチ時などに活用すると効果的です。

インセンティブ設計のポイントは、パートナーにとって「頑張ればリターンが大きくなる」明確な動機付けを用意しつつ、自社にとっても利益が確保できるWin-Winのバランスを取ることです。加えて、内容は契約書付属のプログラム規程などに明文化し、変更時の通知方法も決めておきます。

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5. パートナープログラムの整備(仕組み化)

効果的なパートナービジネス運用のためには、個別契約以上に包括的なパートナープログラムの構築が重要です。組織だったパートナー支援とインセンティブ体系を整備することで、パートナーとの協業を持続的なものにできます。以下、その主なポイントです。

ランク設計:ブロンズ/シルバー/ゴールド

多くの企業はパートナーにランク制度(ティア制度)を導入しています。販売実績や貢献度に応じて「ブロンズ」「シルバー」「ゴールド」「プラチナ」等のランクを付与し、それぞれに異なる特典・要件を設定します。 ランク制度の導入により、パートナーに明確な目標とモチベーションを与える効果があります。「年間◯件受注でシルバー昇格」など基準が示されることで、自社が何を期待しているかが伝わり、パートナーも具体的な行動計画を立てやすくなります。評価が客観指標で見える化されることで公平感も生まれ、信頼関係の醸成にも寄与します。 注意点として、ランク制度は導入して終わりではなく「育成」とセットで機能させる必要があります。低ランクにパートナーが停滞しないよう、次項のオンボーディング等を通じてパートナーの実力底上げを図り、「売れる状態」を作ることが大前提です。その上でランク制度がインセンティブとして働き、両輪で成果創出につなげます。

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イネーブルメント:オンボーディング(動画・テスト)営業資料・デモ環境提供

パートナーが自社商材を十分理解し効果的に販売できるよう、体系立てた教育・支援(イネーブルメント)を提供します。まず契約直後のオンボーディング施策が重要です。具体的には以下を実施します。

  • オンライン研修・動画教材: 製品知識や提案トークを学べるコンテンツを用意します。忙しいパートナーでも自主学習できるよう動画やeラーニング形式が有効です。研修受講後、理解度テストを課し一定点数を取れれば「認定パートナー」として資格付与する仕組みにすると、知識習得のモチベーションが上がります。この認定をゴールドランク昇格要件に組み込むなど、ランク制度と連動させます。
  • 営業資料の整備: パートナーが顧客提案に使えるパンフレット、提案書テンプレート、事例集、競合比較表などを充実させ、常に最新版を入手できるようポータルサイトで共有します。デモ環境やデモ機の貸与も有力な支援です。例えばソフトウェアならパートナー向けに無料デモアカウントを発行し、自ら試せるようにします。ハードウェアなら評価機を提供します。
  • 技術サポート・FAQ: プリセールス段階で出てくる技術的質問や詳細要件に答えられるよう、専用の技術支援窓口を設けたりFAQ集を提供します。パートナー技術者向けの認定試験制度を作り、合格者には「技術認定パートナー」としてバッジを与える例もあります。

これらイネーブルメント施策により、パートナー担当者は必要知識とツールを得て自信を持って販売活動ができるようになります。「売れる状態づくり」を支援することで、単にコミッションをぶら下げるだけでは動かなかったパートナーも動機付けされます。

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MDF/共同マーケ

パートナーとの共同マーケティングも売上拡大に有効な施策です。マーケティング開発費(MDF)を設け、パートナー主催のセミナーや広告施策に資金提供したり、共同で展示会出展・ウェビナー開催を行うなど、リード獲得を協力して進めます。MDFは「市場開拓のためにメーカーが提供する資金」であり、使い方はイベント開催、デジタル広告、キャンペーン施策など様々です。効果測定と適切な予算配分を行い、パートナーの集客力強化につなげます。

最終的にはパートナーが主体的にマーケ・営業を回せるよう伴走します。MDF申請・効果測定のプロセスを整え、費用対効果の高い施策にパートナーが集中できるようサポートすることが肝要です。

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ヘルススコアと運用(アクティブ率・合格率・案件化率)

多数のパートナーを抱える場合、各パートナーの健全性(Health)をモニタリングし、適切にフォローアップする必要があります。パートナーヘルススコアとは、パートナーごとの活動状況や成果を定量評価する指標で、以下のような要素から算出します。

  • アクティブ率: 一定期間内に何らかの商談提案や案件登録を行ったパートナーの割合。全パートナー中○%が直近半年で案件送客している、といった数値で把握します。アクティブでないパートナーが増えていれば施策の見直しや休眠パートナーへの働きかけが必要です。
  • トレーニング合格率: 認定試験や研修プログラムの受講・合格状況。低ければ製品理解が進んでいないパートナーが多いことを示し、教育施策の強化が求められます。
  • 案件化率: 提供したリードが実際に商談案件に進展した割合、あるいはリード→受注までの全体コンバージョン率。パートナーの質やリードの質を測る指標となり、低ければマーケ施策や案件フォローの改善領域です。

これら指標を総合してスコアリングし、危険信号の出ているパートナーには個別にテコ入れします。例えばスコアの低いパートナーにはチャネルマネージャーがヒアリングを行い、課題(製品理解不足なのか、ターゲットミスなのか)を探って対策を講じます。逆に好調なパートナーはベストプラクティスとして他パートナーに共有したり、更なる支援(MDF追加付与等)で伸ばします。 パートナー数が増えてくるとExcelや人手での管理に限界があるため、PRM(Partner Relationship Management)ツールの活用も視野に入れると良いでしょう。適切な運用により、700社以上のパートナー情報や案件を一元管理しながら各社への支援に集中できる体制を構築した例もあります。少人数でも効率的にパートナープログラムを回すために、データに基づく運用とツール活用が成功のカギとなります。

6. 事例:パートナービジネス成功の例

実際にパートナービジネスを活用して成功している事例として、ここでは2つのパターンを紹介します。

事例①: 中小企業向けクラウド会計ソフトで有名なfreee株式会社は、会計事務所や士業個人との強力なパートナー網を築き、共同で顧客開拓を行っています。freeeではパートナー一人ひとりに着目したデータドリブンな支援策を取り、僅かなチャネル担当者(実質2名)で2ヶ月間に1,500件超ものパートナー経由商談を創出しました。鍵となったのは、パートナー個々のKPI(案件創出数など)を見える化して適切にフォローしたことと、必要な支援(提案同行や資料提供)を手厚く行ったことです。このように、共同販売と言っても何もかも一緒に動く必要はなく、データ共有と的確な伴走支援によってパートナーの営業力を最大化し、大きな成果につなげた例と言えます。

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事例②: 再生可能エネルギー事業を手掛ける株式会社Looopでは、700社以上もの販売パートナー企業を抱え、自社サービス(新電力・太陽光等)の拡販を図っています。Looop社はPRMを導入してパートナー企業とのやり取りや案件情報を一元管理し、各社への支援を効率化しました。その結果、本来注力すべきパートナー支援業務に時間を割けるようになり、パートナー企業と持続的成長できる関係を構築しています。このようにIT分野のみならず異業種においても、多段階の販売チャネルとITツール活用でパートナービジネスを成功させた例があります。

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7. よくある失敗とリスク管理

パートナービジネスには多くの成功可能性がある一方、準備不足や運用ミスによる失敗も少なくありません。以下によくある失敗パターンと、そのリスク管理策を示します。

  • 十分な制度整備のない「お願い営業」: 明確な契約条件やインセンティブを用意せずに知り合いの企業に「うちの商品、ついでに売ってよ」と頼むだけでは、継続的な成果は望めません。パートナーが自発的に売ってもらうようになるためには制度をパートナーが売りたくなるような制度設計が非常に重要です。
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  • 情報の二重管理・分断による運用破綻: パートナーから来た案件情報を営業担当者個人のメールで管理、契約管理は別Excel…といった状態では全体把握ができずミスが頻発します。問い合わせ対応漏れや支払計算ミスなど運用破綻に陥りがちです。対策として、一元管理システム(PRM)を導入し、パートナー情報・案件進捗・成果を統合管理する。少なくとも共有のスプレッドシート等で最新情報を同期し、属人的な管理を排除する。
  • 安易な値引きとマージン競争による価格破壊: パートナーに高いインセンティブを出しすぎて自社利益が乏しくなったり、複数パートナーが競合して過度な値引きを行い市場価格を崩してしまう事例です。チャネル間の値下げ競争は全体の利益を削ぎ、チャネルコンフリクトも招きます。対策として、価格ポリシーとディスカウント権限を明確に定めます。最終ユーザー価格に下限を設け、パートナーが勝手に値引きできないように契約で拘束します。また、マージン設定は自社コスト構造と利益を踏まえ適正水準に抑えます。必要に応じて二次流通のモニタリングを行い、無秩序な値引きを検知したら是正指導を行います。
  • 早期解約・未回収リスクへの無対策: パートナー経由で契約は取れたが、顧客がすぐ解約してしまいコミッションを払い損、といったケースや、再販モデルでパートナーからの入金が滞るケースがあります。対策として、 チャージバック条項や信用調査でリスクヘッジします。一定期間内の解約にはコミッション返還や次回相殺を認める契約条項を入れておくことで、メーカー側の損失を防げます。また、再販パートナーについては事前に財務信用をチェックし、売掛債権の未回収リスクが低い企業と組む、あるいは与信枠を設定して安全な範囲で取引する、といった対策を講じます。

以上のようなリスクシナリオを予め洗い出し、契約段階の取り決めと運用上の管理策の双方で備えることが、パートナービジネス成功の裏にある縁の下の力持ちです。定期的に失敗事例を振り返り、自社プログラムの改善に活かしましょう。

8. まとめ(はじめ方の最短ロードマップ)

パートナー契約の基礎から実践ポイントまで網羅してきました。最後に、これからパートナービジネスを始める企業向けに最短で進めるための3ステップをまとめます。

  1. 契約スキームの選定: 自社商材や戦略に最適なパートナーモデルを決めましょう。紹介型・販売代理型・OEM・共同販売など本稿第1章で述べたスキームから、自社の場合はどの形態が効果的かを検討します。まずパートナーに何をしてほしいのか整理し、販売力が最大化する契約形態を絞り込みます。その上でパートナー候補(企業 or 個人)のリストアップを行います。
  2. 契約条項と報酬設計: 次に具体的な契約条件を策定します。特に報酬体系はパートナーの魅力度を左右するため、第4章で触れたようなインセンティブ設計も含め検討します。社内関係部署(営業・経理・法務)と連携し、パートナー用標準契約書ひな形とプログラム概要資料を整えます。
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3.パートナーイネーブルメント開始: 契約締結後すぐに、パートナーの教育・支援をスタートします。第5章のように、オンボーディング研修を実施し、資料・ツール類を提供して早期に「売れる状態」に引き上げます。その後も定期的なコミュニケーションやKPIレビューを行い、必要なテコ入れや施策(MDF支援・SPIFキャンペーン等)を講じます。併せて、パートナーランク制度を導入できる場合は初期段階から評価基準を提示し、モチベーション付けを行います。

    以上のステップを踏めば、比較的スムーズにパートナービジネスを立ち上げられるでしょう。大切なのは、単発の契約に終わらせずプログラムとして継続発展させる視点を持つことです。パートナー契約は自社成長と市場拡大の強力な手段ですが、成功には適切な選定・契約内容の整備・継続的な支援と管理が欠かせません。本ガイドを参考に、自社に合ったパートナー戦略を策定・実行し、ビジネスの飛躍につなげてください。

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