みなさんは代理店・商社・卸の違いをご存知でしょうか。
ビジネスにおいてよく耳にする代理店・商社・卸。しかし、それぞれの違いについて説明できる人は少ないのではないでしょうか。
そこでこの記事では、代理店・商社・卸について、違いや事例を踏まえながら徹底解説していきます。
代理店・商社・卸の違いとは?
代理店・商社・卸は、他社の製品やサービスなどを販売する点では同じです。3つの違いは、商材、販売先、販売方法などのビジネス形態になります。
間違えやすく、ややこしいビジネス形態も含めて、以下で違いについて詳しく見ていきましょう。
代理店とは
代理店とは、特定の企業や団体から業務を委託し、顧客に直接取引を行う実店舗やECサイトのことです。広告代理店や旅行代理店などが代理店にあたります。
メーカーなどから商品・サービスの販売許可を得て、代わりに顧客への営業や契約サポートを行うイメージです。具体的には、「旅行に行きたい人に向けて、旅行代理店が旅行会社のプランを提案する」などになります。
代理店が在庫を抱えることはありません。顧客とのサービス契約自体は企業が行うので、利益は企業本部に入りますが、代理店には手数料が報酬として入る仕組みです。
販売についての契約内容はさまざまありますが、代理店は販売契約をした一企業以外の商品も、店舗やECサイトで取り扱うことができます。あくまで代理で販売し、企業や団体と顧客の仲介をする形です。
代理店は、商品・サービス自体の責任を負う必要がないことと、ブランド料金の支払いがないというメリットがあります。
代理店と似たビジネス形態のものには、【フランチャイズ・取次店・販売店・特約店】などがあり、契約内容が異なるため注意が必要です。
代理店営業は、多くの企業が利用する販売戦略の一つで、製造業者と消費者の間に立つ代理店を通じて製品やサービスを販売する方法です。この戦略には、市場の拡大、リソースの効率化、リスクの分散など多岐にわたるメリットがあります。本記事では、代理店営[…]
商社とは
商社とは、さまざまな企業から購入した商品をメーカーや店舗に販売する会社のことです。商品は、食品やアパレルのような既製品から布や金属のような素材など、さまざまな商品を扱っています。
代理店と同じく、商品自体を社内で開発することはありません。商社は購入した商品の流通を担い、メーカーや店舗など販売・開発企業同士のパイプ役としてビジネスを行います。具体的には「車を作っているA社に、B社のタイヤ部品を売る」「アイスを作っているC社に、D社の牛乳を売る」というものです。
商社のメリットは、さまざまなメーカーの商品から顧客にあった商品を提案できるところでしょう。自社製品を持たず客観的な提案ができるため、顧客満足も得られやすく、流通に適しているといえます。
しかし、在庫を抱えることや取り扱う商品数が多いデメリットも。一つの商品に対しての知識量はそれほどなくても大丈夫ですが、網羅的な知識や視点を持ち、さまざまな商品を売る技術が必要です。
また、商社には総合商社と専門商社の2種類があります。総合商社はあらゆる商品を取り扱うのに対して、専門商社は分野に特化した商品を販売するのが特徴です。
卸とは
卸は、あらゆる企業から仕入れた商品を、小売店にまとめて提供するというビジネス形態です。基本的に、仕入れる商品は食品やアパレルなどの既製品であり、卸の仲介は食品業界、ファッション業界、日用品の販売会社などでは比較的多く見受けられます。
具体的には、「乳製品メーカー・野菜を販売する農家・菓子メーカーなどから商品を仕入れ、スーパーへまとめて提供する」のが卸です。
食品、アパレル、日用品業界は、全国各地に店舗が存在するため、メーカーなどから直接店舗へ届けるには費用やコストが膨大になりすぎてしまいます。
卸が仲介するメリットは、小売店が必要な商品を、ある程度まとめて仕入れることができるようになるところです。
ECサイトやアプリの流通に伴い、メーカーから直接提供を受け販売するビジネス形態も増えてきましたが、実店舗が存在する現在では、まだまだ卸の需要は高いといえます。
代理店と商社の違い
代理店と商社の違いは、大きく分けて2つあります。
まずは、エンドユーザーとの距離でしょう。エンドユーザーとは、私たち消費者のことです。
代理店が、企業・団体から商品の販売許可を得て、直接エンドユーザーに対して契約サポートを行うのに対し、商社は「企業からメーカー」などBtoBでのビジネスが主になるため、エンドユーザーに直接販売することはあまりありません。
また、商品を抱えているか否かという点も大きいです。
代理店は、あくまで企業・団体の代理で販売するビジネス形態なので、商品を購入せずにエンドユーザーへ提案します。提案が通り契約に進めば、その報酬に、利益の一部がもらえたり、手数料で儲けたりというのが一連の流れです。
商社は、メーカーから商品を買い取り、手持ちの商品の中から別のメーカーや企業の求める商品を提供します。商品を購入した金額と販売額の差額で利益を得るという寸法です。
この「購入せず所有権を預けたままにする」か、「商品を購入し所有権を得る」かの、2つのビジネス方法について、海外では名前がつけられています。
代理店のように、商品を購入せず代理で販売をするビジネスを「セールスレップ」、商社のように、商品を購入し所有権を得た状態で行うビジネスを「ディストリビューター」と言い、海外の方が日本よりも明確な違いを示していると言えるでしょう。「ディストリビューター」は、所有権を得ているため、商品価格を自由に決めることができますが、在庫を抱える分リスクが上がるというのが特徴です。
代理店と商社は、一見同じように見えてもエンドユーザーとの距離や「セールスレップ」であるか「ディストリビューター」であるかという点では異なっています。
代表的な企業事例
では、代理店、商社、卸の代表的な企業はどのようなところがあるでしょうか?
違いがわかると会社でも区別したくなりますね。以下では代表的な企業について解説します。
代理店の代表的な企業
代理店の代表的な企業には「光通信」や「ティーガイア」があり、主に携帯電話などの通信機器や複合機の販売などの展開を代理店事業で行っています。以下で詳しく見ていきましょう。
光通信
光通信は、通信回線サービスの会社として広く知られていますが、創立時はホームテレフォンの通信販売を行っていました。創立から半年後には現KDDIと販売契約を結び、販売代理店としての事業をスタートしています。
携帯電話の価格下落により携帯電話販売代理店である「HIT SHOP」を全国展開し、「ストックコミッション」という携帯会社からの手数料を受け取るビジネス形態を採用しました。携帯電話1台につき毎月300円の手数料が入るため、携帯電話の販売台数が増えるほど売上が右肩上がりになる仕組みです。
その後、一部社員による架空契約(寝かせ)の発覚により、バブルの崩壊を誘発。携帯電話販売代理店としてのインセンティブ契約の期間終了に伴い、携帯販売代理店の大幅縮小を行いました。代わりにシャープの複合機販売を展開し、黒字転換に成功しています。
現在では、保険会社、メーカーなどの各種商品について取次販売事業を行っています。
ティーガイア
ティーガイアは、携帯電話販売事業における国内有数のリーディングカンパニーで、株式会社テレパークと株式会社エム・エス・コミュニケーションズの対等合併によりできた会社です。通信キャリアの代理店として、スマートフォンやタブレット端末を販売する事業を展開してきました。
現在は、住友商事が親会社であり、その他光通信もティーガイアの大株主として関係会社となっています。おなじみのドコモ・ソフトバンク・auを販売拠点とし、同時に通信機器以外のスマートフォン向けアクセサリーの販売も行っている国内最大手代理店企業です。
また、スマートデバイスの急速な普及増加に伴い、ソリューション事業も展開しています。通信キャリアサービスの販売契約を法人顧客へ取り次いだり、代理店を通すことで提供したりする方法も取っています。
商社の代表的な企業
商社の代表的な企業といえば、「三菱商事(総合商社)」「三菱食品(専門商社)」でしょう。ともに三菱グループの商社ですが、事業展開の方法や過程に異なる点があります。以下で詳しく見ていきましょう。
三菱商事(総合商社)
三菱商事は、さまざまな商品サービスの提供を行う国内最大手商社です。三菱商事の創設者はかの有名な岩崎弥太郎で、当時の「九十九商事」を引き継ぐ形で始まりました。
海運業から始まった事業は、のちに石炭、金属鉱山、造船、銀行業へと移行し、1899年に営業部が誕生したことで三菱商事としての事業展開が始まります。1918年には営業部の一部を「株式会社三菱商事」として独立させ、海外生産品・資源の輸入や、最新工業技術を日本へ導入させるなどを行いましたが、戦後GHQの財閥解体によって解散を余儀なくされました。その後、1954年に再興し、現在の三菱商社の事業展開が始まりました。
現在は、世界で約90ヵ所の国や地域を拠点とし、日本と海外との仲介役として大きな役割を担っています。天然ガス、総合素材、石油・化学ソリューション、金属資源、産業インフラ、自動車・モビリティ、食品産業、コンシューマ―産業、電力ソリューション、複合都市開発の10グループ事業と産業DX部門も展開する大企業へと成長しました。
また約1700の連結会社とともに、世界各地で生産・開発を行うなど、幅広い事業展開を担っていることも特徴です。
三菱食品(専門商社)
三菱食品は、食品大手三強の一つ。三菱グループの一員であり、三菱財閥の出資によって缶詰の国内販売会社として事業をスタートしました。明治屋商事、サンエス、フードサービスネットワークという三菱の4つの子会社が吸収合併され、現在の三菱商事に落ち着いた背景もあります。
主に食品の卸売り事業を展開し、ハリボーなど有名な海外製品の取り扱いを行う食品専門商社です。事業展開に定評があり、特に酒類の取り扱いでは、Amazon、ローソン、イオンなどの大手企業への取次を行うなど他社を寄せ付けない実力を発揮しています。
卸の代表的な企業
卸の代表的な企業には「きくや美粧堂(美容卸)」、「PALTAC(化粧品・日用品卸)」があります。美容品や日用品は私たちの生活に欠かせないものの一つであり、エンドユーザーが不自由なく商品を手にするには卸業を行う会社が不可欠です。
以下では、日本で活躍する「きくや美粧堂」「PALTAC」について解説します。
きくや美粧堂(美容卸)
きくや美粧堂は、70年前お客様の声を聞く「聞く屋」として美容商材販売が始まり、全国の事業所を設置することで、美容商材の供給を行っている会社です。現在では、地域に根ざしたトータルサポートとして、美容室経営のコンサルティング、スタジオ運営、セミナーなどさまざまな事業展開に成功しています。
美容商材の供給の拠点となるロジスティクスセンターを東日本、西日本の2カ所に展開し、多くの美容商材の迅速な供給を実現してきました。
また、美容室事業では商材の発注業務などをサポートする「アルタイル」の導入、美容商材の購入を促すアプリ「ライフカルテ」の開発、動画コンテンツの活用など、より卸を効率よく行うためのデジタルサポート事業も展開する、時代に伴った業務展開のある会社です。
PALTAC(化粧品・日用品卸)
PALTACは、小売店に対して化粧品や日用品の卸販売を行い、サプライチェーン全般の効率化を図る会社です。
PALTACはBtoB企業であるため、普段私たちの生活の中で耳にすることはほとんどありませんが、日常で使用する石鹸や洗剤、化粧品やヘアトリートメントなどさまざまな商品を店舗へ供給する、日本には欠かせない企業の一つです。メーカーと小売店の仲介役として120年もの間卸売業を営んできました。
そして、流通に関するサプライチェーンの効率化を目指し、ローコストでの流通を実現することで今私たちは、低価格での化粧品・日用品の購入が可能となっています。
現在は、非常に膨大な商品の取り扱いを行っており、コンビニエンスストア、スーパー、ドラックストアなどに並ぶほとんどの商品をPALTAC1社で揃えることが可能です。