アライアンス・代理店運営に携わる人のためのメディア-PartnerLab。最先端の情報をお届け。
代理店KPI設計

代理店ビジネスにおけるKPI設定方法とは?

  • 2022年6月22日
  • 2024年8月18日
  • 代理店

ビジネスにおいてKPIの設定が非常に重要なことは言うまでもありません。

しかし、KPIが営業やマーケティング分野ではベストプラクティスが設計・浸透してきておりますが、代理店・アライアンスにおいてのKPI設定のスタンダードとなるものは存在していないことが現状です。

当記事では、大手企業にて代理店・アライアンス戦略選定の経験がある著者が代理店ビジネスにおけるKPIの例を提唱し、自社でのKPI設定の参考にしていただければと思います。

また代理店ビジネスとはについてはこちらの記事で解説しています。

関連記事

「いい商材があるから全国展開したいが、社内のリソースが足りない。」 「取引先を拡大したいが、現在のチャネルのみでは限界」 商材の販路拡大を行おうとしても、現在のチャネルのみでは成長が限界を迎えていたり、新規施策はコストが読めな[…]

代理店の仕組み

代理店ビジネス(アライアンス)でKPI戦略を設定する目的

KPIを設定する前に、そもそもなぜKPIを設定する必要があるのか?目的を明確にする必要があります。

代理店ビジネスにおいてKPIを設定する目的は、大きく分けて3つあると考えています。

KGIを達成するために必要なキーが何か?が明確になる

販促組織において、KGIは基本的に売上に設定されることが多いかと思います。

ただし、売上自体を目標においても、それはあくまで結果指標であり、何が起因して売上が上がったのか?下がったのか?がわかりません。

KPIを設定することで、KGIに対して「何の指標(KPI)が一番影響するのか?」「その指標を変化させるためには何をすれば良いのか?」のような結果より前の要因に対して、仮説検証・打ち手の実行ができるようになります。

共通の目的を持つ

ビジネスの現場においては、課題やタスクが多々あり、何を優先度高く対応していくべきかを設定する必要があります。

この優先度が担当者ごとにバラバラであったら、大きな成果を生むことはもちろんできませんね。

そこで、KPIを一番インパクトが高いことに設定し、社内の営業担当の目標とすることで、全体の行動や意思決定に一貫性を持たせることが可能です。

振り返り・評価ができる

KPIはKGIに対して、最も影響を与える要因であるのに加えて、施策を実行した際の振り返り・評価をするための基軸ともなります。

とある施策を実行した際に、「この施策は上手く行ったのか?いかなかったのか?」をフィードバックしなければ、施策の有効性が分からないままになります。

そこでKPIを設定しておくことで、施策ごとの良し悪しが判断できPDCAを好サイクルで循環することが可能です。

またこちらの記事でアライアンス戦略の全体像について解説していますので参考にしてみてください。

関連記事

海外企業においてアライアンススキームは、すでに一般的で多くの企業が採用しノウハウが流通していますが、日本国内ではアライアンスのスタンダードは確立されていないのが現状です。 そこで今回は、大手企業でアライアンス戦略策定の実務経験のある[…]

アライアンス代理店戦略の画像

代理店ビジネス(アライアンス)において何を戦略的注力KPIとするか

さて、ここまではKPIを立てることの目的について述べてきました。では、代理店ビジネスにおいては何をKPIとすれば良いでしょうか。

注力すべきKPIを検討するために、まずどのように考えるか?のポイントを2点解説したいと思います。

取得できる情報は何か?

アライアンスや代理店ビジネスにおいては、社内のリソースでなく社外のリソースを使用するため、社内でKPIを設定するときと比較して、取得できる情報の幅や深さが異なります。

そのためまずは、「①現状取得できている情報は何か?」「②追加で情報を取得できる方法はないか?」を考え、現在・将来において取得できる情報の整理を行う必要があります。

リソース投下によって変えられる変数は何か?

取得できる情報の整理が完了したら次に、リソースを投下することによって、変えることができる変数は何か?を考える必要があります。

こちらも一つ目と同じく社外のリソースを活用しているため、自社でコントロールできる指標が少ないことが理由になります。

仮にとある変数がKGIに一番貢献していることがわかったとしても、自社でコントロールできる指標でなければ意味はありません。そのため、KPIとしたい指標は本当にコントロール余地があるのかを整理する必要があります。

KGIに最も起因する指標は何か?

最後に上記2点を整理したら、KGIに最も影響する指標は何か?を考えましょう。

例えば、「その数値が+10pt向上したらKGIが+1%向上する」のようにデジタルな計算でわかる範囲まで落とし込み、設定することが重要です。

ポイントとしては、KPIを多く設定しないことが重要です。基本的には1つ、多くても2つ程度にとどめ、チーム全体が何のKPIを向上させることに注力するのか?を共通認識を持てるようにしましょう。

代理店戦略を検討する上でのKPIツリー

上記では、代理店ビジネスにおけるKPIを設定する目的と設定する際のポイントを見てきました。

ここでは実際にどのようにKPIを設定すれば良いのかを具体例を交えながら考えていきましょう。

※もちろん商品やサービス体系によってKPIは変化するためあくまで、一例として参考にしてみてください。

KPIツリーの例-一般的な営業KPIから算出ver

一般的な営業部のKPIと同様に、売上をKGIにおき「売上=販売件数×単価」とすることには変更ないと思います。

代理店ビジネスのKPI設定において難しいのが、その後のKPIを通常の営業部と同様に設定してしまうと、主語が代理店になってしまいます。

代理店の担当者がKPIを設定するのであれば上記でも問題ないですが、メーカー側の担当者が設定するKPIとしては、コントロールのできる指標ではなくなってしまうため不適切です。

これでは、社内用のKPI設定として意味をなしません。

KPIツリーの例-代理店組織見本ver

代理店ビジネスにおけるKPIツリーの例

前段で一般的な営業部のKPIを設定してしまうとコントロールできる指標が消失することがわかりました。ではどのようにすれば良いのでしょう。

一案として、「稼働代理店(1件以上販売している代理店)」という概念を導入することで上記の課題を解決することができます。

「販売件数=稼働代理店数×稼働代理店あたりの平均販売数」

ここから図のように分解していくことで、「販売件数」を変化させるために自社でもコントロールできるKPIを設定していくことが可能です。

以降のKPIを分解していった際に、下記定義で色付けしております。

  • 青色:自社でコントロールが難しい要因
  • 赤色:自社でコントロールが可能な要因

このように「稼働代理店」という概念を導入することで、以降のKPIの分解を被りを最小化し、コントロールの有無を明確化することができると考えています。

※ここで算出した指標が実際に取得できるのか?という問題は、各社によって商品内容・契約内容に依存するため対象外としたいと思います。

代理店・アライアンスにおいて注力KPIの例

ここまで、代理店ビジネスにおいてどうKPIを分解すればいいのか?について例を出して述べてきました。

それでは実際に社内のKPIとして設定するにあたり、どの指標を注力するKPIとして設定するのかについて考えたいと思います。ここではいくつか例をあげてみましょう。

契約交渉率・契約締結率

「稼働代理店」を増加させるために、新規契約する代理店の存在は欠かせません。

そこで世の中に数多く存在する代理店のリストに対して、月に何件アライアンス契約の交渉を行い、その内何件を契約締結するのか?をKPIとして設定します。

こちらの指標は共に社内でコントロール可能な指標であり、契約代理店数という分かりやすい結果にも結びつくので、特にアライアンス組織立ち上げ期の際には、設定することをおすすめします。

代理店稼働率

代理店ビジネスにおいて最大の課題と言ってもいいのが、この代理店稼働率です。

よくあるパターンとして、「代理店契約を結んだものの、実際稼働しない」ことは多々あります。

各代理店は、基本的には様々な企業の商材を抱えており、その中から代理店のリソースを投下する商材を決定しています。そのため、代理店に自社商材を販売(稼働)してもらうためには、下記のような条件を満たす必要があります。

  • 商品の品質が他社商品に比べて高い
  • 手数料の条件が他社に比べて好条件である
  • 代理店との関係性
  • パートナープログラムが魅力的に設計されている

これらは、社内の渉外担当のみで解決できる課題でなく、アライアンス企画・プロダクト企画と共同して設計していくことが求められます。その分、達成した際のインパクトも大きいため、組織全体のKPIとして設定することは有効と考えられれます。

代理店営業担当の稼働率

とある代理店の全体の営業人数をコントロールすることは、その代理店に対して新規の採用を促すことのためもちろん難しいです。

しかし、「代理店の営業担当の人数において、自社商材へ配置する割合を増やす」こちらには交渉次第で余地があると考えています。

もちろん営業人数が増えればそれだけ商談数も増加し、直接的に販売数・売上の向上につながります。

例えば、100人の営業担当がいる代理店に対して打ち手を投じた結果、構成比が下記のように変更した場合。

  • 今まで:他社商材=90% 自社商材=10%
  • 施策:他社商材=80% 自社商材=20%

仮に、営業人数が倍になると売上が倍になると仮定すると、構成比率を+10%変更するだけで売上を倍に引き上げることができるわけです。(そのまま倍になることは稀ですが)

そのために社内の渉外・企画担当が、インセン条件の変更やパートナープログラムを設計することで、「いかに代理店の営業構成比を変更するか?」という思考で施策を検討することが重要になります。

KPIモニタリングを作成するためにデータを可視化する方法

ここまでで、代理店ビジネスにおけるKPIの設定方法について具体例を見ながら解説してきました。

しかしKPIを設定したものの、上記で説明した通り、社外リソースの中情報を取得・蓄積していく必要があります。

実際にどのようにデータを取得し、モニタリングすればいいかについて解説したいと思います。

代理店からヒアリング

一番シンプルな方法が代理店からのヒアリングです。

取得したいKPI情報を、代理店からのヒアリングもしくは、週次・月次でExcelファイルで提出してもらう方法です。

情報を提出すること自体に、代理店にとってはメリットがないため、いかに情報を出してもらうのか?契約や交渉を上手に行う必要があります。

PRMを使用する

上記のような課題に対して、PRM(Partner Relationship Management)ツールを活用する手段があります。

マーケティングであればMA(マーケティングオートメーション)、セールスであればSFA(Sales Force Automation)のように支援ツールが存在する中、代理店といったパートナービジネスに特化した支援ツールがPRMツールになります。

PRM自体に代理店が使用するメリットが機能として追加されていたり、取得したいKPI情報を自動的に取得もしくは今まで取得できていなかったデータを取得することもできるようになります。

そもそもPRMとは何かについてはこちらの記事で解説しています。

関連記事

PRM(Partner Relationship Management:パートナーリレーションシップマネージメント)をご存じでしょうか? ビジネス用語のひとつで、企業が、代理店や小売店などと長期的に良好な関係性を築くための手[…]

PRMとはの画像

>パートナービジネスを科学し仕組みにするPRMツール「PartnerProp」

パートナービジネスを科学し仕組みにするPRMツール「PartnerProp」

CTR IMG