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PRM-庭山氏

「B2Bマーケターの巨匠-庭山氏が語る。日本が今すぐ取り組むべきPRMとは?

  • 2024年8月28日
  • 2024年8月28日
  • 代理店
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日本のB2Bマーケティングの領域で革新を続ける庭山氏に、今国内企業が直面しているパートナービジネスの課題に焦点を当てた独占インタビューを行った。

長年にわたる経験から、特にパートナーリレーションシップマネジメント(PRM)の重要性について語る庭山氏。

海外ではすでに一般的なこのアプローチが、なぜ日本での普及が遅れているのか、そしてこれからの展望について深掘りする。

一流企業のパートナーエコシステムを構築し、持続可能な成長を実現するためのキーとは何か。庭山氏がその全貌を明らかにする。

日本のパートナービジネスの現在地

ー海外と比較した日本のB2Bビジネスの現状について教えてください

日本のB2Bビジネスは、主に二つの極に分かれています。一つはスタートアップ、もう一つは伝統的な中堅以上のエンタープライズ企業です。海外との比較では、日本が遅れているとよく言われますが、実際には日本のスタートアップはそれほど遅れていないのです。

例えば、日本のスタートアップはタクシー広告やテレビコマーシャルを通じてオーガニックな訪問者をウェブサイトに引き寄せ、そこからホワイトペーパーや動画を介してサブスクライブを促し、最終的にはインサイドセールスを通じて購入につなげるというマーケティング手法が定着しています。この手法は、特にB2Bのアプリケーション市場で広く採用されています。これは海外と比較してもそれほどは遅れていないと言ってもいいでしょう。

B2B市場の商材は、日本でも世界でも基本的に同じですが、その70%以上がチャネル経由で販売されています。日本のエンタープライズのマーケティングは、欧米に比べて大体15年程度遅れていると感じられます。特に、通常のデマンドジェネレーションの遅れが顕著で、PRMでは20年以上の遅れが見られるため、マーケティング全般とともに、PRMの強化が急務です。

「お願いします営業」の日本。制度化された海外のパートナープログラム

ー海外と比較して日本のパートナービジネスは、どのように違うのでしょうか?

海外では、パートナープログラムがしっかりと制度化されており、販売目標を事前に設定し、それに基づいたランキングで供給先を決定します。達成度に応じてランクが変動し、不十分な場合はランクが下がる仕組みです。

この体系的アプローチは、ベンダー企業主導によって設計〜実行されています。この制度では認定レベル(シルバー、ゴールドなど)も設けられ、インセンティブの金額や取り扱いに違いが出ます。これによってパートナー企業が注力したくなる動機付けを行っている訳です。

一方、日本ではパートナープログラムが制度化されておらず、営業本部長が直接「お願いします」と依頼するのみの非公式なアプローチが取られています。また、表彰状の交付などの形式的な行事は行われていますが、実際には組織的な支援や動機づけの体系が確立されていないため、多くのパートナー企業にとって表彰状は十分な動機付けにはなっていません。

ーなぜ日本のパートナービジネスでそのような問題が起こるのでしょうか?

そうですね。

日本の会社は、パートナーに販売活動をになってもらうと顧客-ターゲットのことを途端に忘れてしまいます。

アメリカのパートナーシップ戦略が成功している理由は、ターゲット設定を徹底的に行っているからです。業種、規模、所在地、部門、そして最も会いたい担当者を明確に特定する議論を行います。このプロセスにより、最も適切なパートナーを明確に選べるようになります。

一方で、日本の企業の場合、製品を誰が使用するかについての認識が不足していることがしばしばあります。

実際、メーカーにそのことを問うと、「わかりません、販売しているのは代理店なので代理店に聞いてください」という回答が返ってくることがありました。

販売活動について代理店に依存しているため、最終的な顧客のニーズや具体的な使用状況が把握できていないのです。

最先端のパートナーマネジメント手法「PRM」

ーパートナービジネスの課題に対して、解決策はあるのでしょうか?

新しく出版した書籍「儲けの科学」にも記載したのですが、日本は大至急「PRM」に取り組むべきです。

PRMとは「パートナーリレーションシップマネジメント」の略で、「チャネルマネジメント」とも呼ばれ る販売代理店活用のノウハウです。

世界のB2B商材の70%は販売代理店を通して売られています。その理由でマーケティング先進国ではこのPRMの研究がと ても盛んで、PRM専門のアナリストやコンサルティ ングファームも存在し、PRM専用のソリューション も100ブランドを超えます。
しかし、日本にはこうした情報もツールも入ってきていません。先進国から大きく遅れた日本のB2Bマーケティングの中でも最も大きく遅れている分野が、このPRMかもしれません(笑)

その概要を次の図を使って解説します。

すべては”学び”から始まる

ー今後、日本企業が海外を追い越すためにはどのようにすればいいでしょうか。

まずは、”学ぶ”しかないですねーー。

toC向けマーケティングでは、洗剤やブラウス、ジュエリー、腕時計などの教育資料が豊富にありますが、パートナーチャネルを含むtoBマーケティングについては情報がほとんどありません。実際、大学のカリキュラムではtoCのマーケティングは広範囲にわたり教えられていますが、toBに関しては教育する教授自身が実務経験がないため、ほとんど学ぶことができないのです。

「では、toBマーケティングを学びたい時、どこで学べばいいのか?」という質問に対しては、答えがありませんでした。

確かに、社会人大学院やその他の研修サービスでマーケティングのコースは存在します。しかしながら、これらの場では実際にtoBマーケティングを教えることができる専門家が不足しており、実務に即した教育を提供することが難しいのです。たとえば、大学院では座学が中心であり、実際の業務を経験したことのない教授が教えることに対して不安を感じています。そのため、学生が具体的な質問をした場合に適切に答えることができない状況が生じてしまいます。このような環境では、toBマーケティングの深い理解や実務に即したスキルを身につけることは困難です。

私自身、この国の教育が10年、15年遅れていると言い続けていますから、解決策を提案できないのは無責任だと思います。なので今回の書籍を執筆するに至ったわけです。

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『儲けの科学 The B2B Marketing(ザ・B2Bマーケティング)』
庭山氏が新たに出版したB2Bマーケティングについて記した書籍。書籍の中ではパートナービジネスにも触れている。

>パートナービジネスを支援するDXツール「PartnerProp」

パートナービジネスを支援するDXツール「PartnerProp」

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