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パートナーセールス(代理店販売)とは?

パートナーセールスとは、自社ではなく外部の企業(代理店)が自社の商品・サービスを販売する営業手法です。自社の営業がエンドユーザーに直接売るのではなく、代理店が商談・契約を行い、自社の担当者は「どうすれば代理店が売りやすくなるか」に専念します。製品知識や営業ノウハウの提供、共同セミナーやキャンペーンの企画などを通じて、販売しやすい環境を整えるのが役割です。こうしたスタイルは「パートナー営業」「代理店営業」「アライアンス営業」とも呼ばれ、特にIT・SaaS企業で広く採用されています。
パートナーセールス担当者の主な業務
パートナーセールス担当者の役割は、「代理店が売りやすい状態をつくり続けること」です。主な業務は、例えば次のようなものです。
- パートナー候補の選定・新規開拓
自社と相性の良い代理店をリサーチし、アプローチする。
- 契約条件の設計・交渉
手数料率や取り扱い範囲など、パートナー契約の条件をすり合わせる。
- 販売戦略・目標の設計
どの顧客セグメントをどう攻めるか、売上目標やKPIをパートナーと一緒に決める。 - トレーニング・製品教育
商品説明・デモ・提案方法などをレクチャーし、代理店の「売れる状態」をつくる。
- 営業資料・施策の提供・共催
提案資料やトークスクリプト、ウェビナー・セミナーなどを共同で企画・実行する。 - 関係構築・フォローアップ
定例ミーティングやレポート共有を通じて実績を確認し、課題や改善策を一緒に検討する。
パートナーセールスのメリット

パートナーセールスを導入することで、企業は次のようなメリットを得られます。
- 営業コストを抑えられる
大規模な自社営業組織を持たずに、パートナーの営業力を活用できます。採用・育成コストを抑えつつ、限られたリソースで広い市場をカバーできます。
株式会社ヤプリの湯浅氏はパートナービジネスはコストをかけずに検証ができると仰っています。また、効果検証に時間がかかるため、各企業は早めに取り組むことをお勧めしています。
▼ヤプリ社のインタビュー記事を見る
- 販路・市場を早く広げられる
自社だけでは開拓が難しいエリアや業界にも、パートナーの既存ネットワークを通じてアプローチできます。一から開拓するよりも、短期間で効率的に販路を広げられます。
株式会社レバレジーズの德間氏は直販のみの営業から、販路をさらに拡大するためにパートナービジネスを取り入れたと仰っています。
▼レバレジーズ社のインタビュー記事を見る
このように、パートナーセールスは、自社リソースを増やしすぎずに新規顧客へのリーチや売上拡大を実現できる点が、経営層にとって大きな魅力となっています。
パートナーセールスのデメリット

パートナーセールスには多くのメリットがある一方で、あらかじめ押さえておきたい課題もあります。
- 販売コントロールとブランド管理の難しさ
実際に営業するのはパートナーの担当者のため、自社の意図しない売り方や、不十分な商品理解のまま提案されるリスクがあります。誤った説明や強引な営業は、ブランドイメージや顧客満足度を損なう可能性もあります。 - 成果が出るまで時間がかかる
契約直後のパートナーは、自社プロダクトへの理解も営業ノウハウもこれからです。一定の売上が立つまでには、教育・伴走期間が必要で、短期的には成果が見えにくい点を前提としておく必要があります。
- パートナー数の増加による管理の複雑化
パートナーが増えるほど、一社ごとの状況把握や支援が難しくなります。放置されたパートナーほど、非効率な活動や方針とズレた売り方が起きやすくなるため、業績モニタリングや定例レビュー、情報共有の仕組みが不可欠です。近年ではパートナーや代理店の管理を効率化するためにPRMツールが国内外で導入されているケースが多くあります。
これらのデメリットは、パートナー選定・契約条件の設計、教育・コミュニケーション体制、管理の仕組みづくり次第で、ある程度コントロールできます。あらかじめリスクを織り込み、運用設計をしておくことが重要です
企業成長においてパートナーセールスが重要な理由
パートナーセールスはメリット・デメリットの両面がありますが、成長を目指す企業にとっては、いまや欠かせない戦略になりつつあります。主な理由は次のとおりです。
- リーチできない企業にリーチすることができる
直販ではリーチできない企業、地方の企業や直販では関わりを持てないような企業にパートナーを介してリーチすることできます。
- 限られたリソースで市場を広げられる
自社の営業人員を増やさなくても、パートナーの顧客ネットワークを通じて新しい地域・業界・顧客層にリーチできます。直販は戦略案件や大口顧客に集中し、それ以外をパートナーに委ねることで、「成長の天井」を押し上げやすくなります。 - キャズム(初期市場とメインストリーム市場の壁)を越える鍵になる
多くのテック企業は、イノベーターやアーリーアダプターには売れるものの、「キャズム」を越えてアーリーマジョリティに広げる段階で苦戦します。この層の顧客は、新興ベンダー単体よりも、すでに信頼しているSIer・コンサル・販売店などの「いつものパートナー」の推奨を重視します。
そこで、こうしたプレイヤーをパートナーとして巻き込むことで、
- 「信頼できる第三者の推薦」という形で導入ハードルを下げる
- 既存の顧客基盤やサポート体制とセットで提案できるといった効果が生まれ、キャズムを越えて一気にメインストリーム市場へ広げやすくなります。
- 「信頼できる第三者の推薦」という形で導入ハードルを下げる

このように、パートナーセールスは「スケール」「キャズム突破」の2点で大きな効果を発揮します。急成長や新市場開拓を狙う企業にとっては、直販だけで戦うのではなく、「どのパートナーとキャズムを越えるのか」を設計することが重要だと言えるでしょう。
パートナーセールスを成功させる3つのポイント

パートナーセールスで成果を出すためには、「どのパートナーと組むか」「どう報いるか」「どう改善するか」の3点が重要です。
① 自社に合ったパートナーを選ぶ
やみくもに数を増やすのではなく、「自社のターゲットにリーチできるか」「自社サービスを理解しやすいか」という観点で選定します。
- どんな顧客を多く持っているか
- どんな商材ポートフォリオの中に自社サービスが入るか
- 紹介型・卸売型・代理販売型など、どのスキームがフィットするか
を確認し、互いの期待値をすり合わせたうえで契約することが、後々のトラブル防止にもつながります。
② パートナープログラム(報酬・条件)を設計する
パートナーは、複数の商材の中から「どれを優先して売るか」を日々選んでいます。
その優先順位を上げてもらうには、わかりやすく魅力的なパートナープログラムが必要です。
- 手数料(マージン)率や紹介フィー
- 販売実績に応じた段階的な報酬(例:目標達成でマージンアップ)
- 共同マーケティングや販促支援の有無
などを整理し、「売れば売るほどパートナーにも得がある」設計にすることで、継続的に動いてもらいやすくなります。
③ データをもとにPDCAを回す
複数のパートナーと取り組むと、「伸びているパートナー」と「伸び悩むパートナー」が必ず出てきます。重要なのは、そこで終わらせずに「なぜ差がついているか」をデータと事例から読み解くことです。
- 受注件数・商談数・単価などの指標をパートナー別に可視化
- 成績上位パートナーのトーク・提案資料・進め方をヒアリング
- 勉強会や定例会で、成功事例や失敗事例を全パートナーに共有
といった形でナレッジを循環させると、個社ごとの属人的な成功ではなく、「パートナーエコシステム全体の底上げ」につながります。実際に、データを活用しパートナービジネスを実施している例としてfreee様がPivotで話してくださいました。ぜひチェックしてみてください。
パートナーセールスとパートナーマーケターの違い

近年、パートナービジネスの中でも「パートナーマーケティング」が注目されています。
このパートナーマーケティングを専門に担当する人材がパートナーマーケターです。
パートナーマーケターは、パートナー企業との協業を「仕組み」として設計・推進するマーケティング職であり、個別の案件対応を行うパートナーセールス(代理店営業)とは役割が異なります。
① 役割の違い
パートナーセールス(代理店営業)
- パートナー企業「1社ごと」と向き合う営業寄りの役割
- 主な業務
- パートナー企業の開拓・関係構築
- 案件支援(同行訪問・提案サポート)
- 契約交渉・条件調整
- 販売トレーニングや営業フォロー
- パートナー企業の開拓・関係構築
- 「目の前のパートナーと一緒に案件をつくり、受注まで伴走する」イメージ
パートナーマーケター
- 複数のパートナーに「横串」で効く仕組みをつくるマーケ寄りの役割
- 主な業務
- パートナー向けコンテンツ・資料の企画・制作
- 共同ウェビナー/イベント/キャンペーンの企画・運営
- パートナー向けリード創出・ナーチャリングの設計
- ポータルサイトやニュースレターなどの情報発信設計
- パートナー向けコンテンツ・資料の企画・制作
- 「パートナーが自ら進んで売りたくなる状態をつくる」イメージ
② どう補完し合うのか
- パートナーセールス
→ 個々のパートナーに寄り添い、インセンティブ設計や案件支援・トレーニングで現場を動かす役割 - パートナーマーケター
→ コンテンツ・キャンペーン・プログラム設計などで、パートナー全体の活動を底上げする役割
両者はまさに「車の両輪」の関係です。
パートナーセールスから上がってくる現場の声・ニーズを、パートナーマーケターが施策に落とし込み、再び全パートナーに展開していく—この循環ができると、パートナービジネス全体の成果が大きく伸びていきます。直販営業とは異なる専門性が求められるため、パートナーセールスとパートナーマーケターの両方をきちんと役割設計し、連携させることが、パートナービジネス成功の重要なポイントと言えるでしょう。
まとめ
パートナーセールスは、自社ではなくパートナー経由で販売することで、市場拡大とコスト効率を同時にねらえる成長戦略です。本記事では、その定義、メリット・デメリット、キャズムを越えるうえでの重要性、成功させるためのポイント、そしてパートナーマーケターとの役割の違いを整理してきました。
あらためて押さえておきたいのは、パートナーセールスには
- 販路拡大・リソース最適化という大きなメリットがある一方で、
- 管理の複雑化や立ち上がりの遅さといった課題もある、ということです。
ただし、パートナー選定・インセンティブ設計・情報共有といった仕組みを整えれば、これらのリスクは十分コントロール可能であり、実際に多くの成長企業がパートナーチャネルを第二の成長エンジンとして活用しています。
成功の鍵は、
- 自社に合うパートナーを選ぶこと
- 売れば売るほどパートナーも報われるプログラムを設計すること
- データをもとにPDCAを回し続けること
の3点です。さらに、個別のパートナーを支援する「パートナーセールス」と、仕組みで全体を底上げする「パートナーマーケター」が連携することで、パートナービジネスの成果は大きく伸びていきます。
自社の成長を加速させたい経営層・パートナー担当の方は、「なんとなく代理店を増やす」のではなく、本記事で触れた視点をもとに、自社のパートナーセールス戦略を一度棚卸ししてみてください。適切なパートナーとWin-Winの関係を築ければ、パートナーセールスは単なる販売チャネルではなく、「共に市場を切り拓くための協創モデル」として、大きなリターンをもたらしてくれます。